第17話 決戦前の激闘ッ!俺は奮い立つッ!!
大気を焼き尽くす紅蓮の炎が、猛り狂う渦となって一筋に伸び、凄まじい勢いで万雷の主宰ザビグロニアと眷属64柱を呑み込み、一瞬で爆炎が上がり、灼熱の衝撃波が放たれた。
凄まじい灼熱の衝撃波が大地を震わす。
白き聖闘神鎧の神用障壁で衝撃波を受け流した琉人は、腕の痛みで視界がぼやけ、脂汗を流しながら、荒い息をついていた。
「はぁはぁうぐっ、この技は…冥府の王アルベルススッ!お前ッ何故ッ助けるッ!!」
猛烈な熱風が大気を歪ませ、爆ぜた炎の煙が渦巻く視界の向こうに、技を繰り出した腕を突き出す冥府の王アルベルススの姿があった。そう冥府の王アルベルススは、煉獄の断罪ディン・シェル・ゲヘノムを万雷の主宰ザビグロニアとその眷属64柱へ放ったのだ。
「琉人ッ!!貴様に賭けてみる気になっただけじゃッ!!」
「賭けてみるってどういう意味だッ!!」
「我が話そう、琉人」
背後から答えたリファールは、そっと琉人を抱き締め、激痛に苛まれる折れた左腕へ温かい治癒魔法を施した。
次第に痛みが消えていき、脂汗が引き、呼吸が静かになっていく心地よさで心が静まった。
「手短に話そう。アルベルススはな、四天王より殺されかけたのじゃ。この短剣、天界の光指す刃でな。我も同じく、この短剣、破壊神の刃で殺されるとこじゃった。それに気付いたミフラシュラはその眷属神を取り逃がしてしまったが、アルベルススはその眷属神は四天王の眷属神であると気付いてな、万雷の主宰ザビグロニアを遣わした理由が合点したのじゃ。差し詰めザビグロニアに暴れさせ、我とアルベルスス諸共、琉人を葬り去る魂胆だったのじゃろ。四天王の目的は、魔神アビゼビュートを再び、最高神アビゼビュートとして復活させる事が目的なのじゃ。我と冥府の王アルベルススは邪魔な存在なのだ。後で詳しく話すが、天界が無くなった今、最高神アビゼビュートにより天上界を再び開き、四天王が統べる世界にするためにな。琉人、おぬしはその目的の為にこの異世界に転生させられたのだろう。じゃがな、四天王の誤算は、おぬしの神のみぞ知らない願望のための筋書通りの展開が誤算だったようじゃ。我と冥府の王アルベルススは、そのおぬしの、神のみぞ知らない願望のための筋書通りの展開に賭けてみる気になったという訳じゃ」
「万雷の主宰ザビグロニアはその目的を知っているのか?」
「いいや、あやつは知らんじゃろ。何せ自分の眷属神の中に四天王の眷属神が紛れ込んでいた事も気付いておらん奴じゃからな。いいように利用されているに過ぎん。でも厄介な相手を送り込んできよったわ四天王めッ!」
立ち込めていた灼熱の黒煙が次第に晴れていき、煉獄の断罪ディン・シェル・ゲヘノムを直に喰らった万雷の主宰ザビグロニアとその眷属64柱の姿が露わになってきた。
「そんじゃあ俺は、神のみぞ知らない願望のための筋書通りの異世界攻略と行きますかッ!!」
よろめきながらも立ち上がった琉人は、再び白き聖闘神鎧を装備し直し、顔面を覆う兜を被った。
「大丈夫?琉人…無理せんでも…」
「ああ、大丈夫。リファール。お陰で体が軽くなったよ」
琉人とリファールは見つめ合い、リファールが琉人にひしっと抱きつくと、琉人はその頭を優しく撫でた。
「行ってくる」
「気を付けて…」
琉人はリファールから見送られ、白き影と成り忽然とその場から消えた。
焦げ付く臭いが充満してそうな体から煙を立ち昇らせ、身構えの姿勢で深く息を吐く万雷の主宰ザビグロニアが、烈火の如く眼光を鋭く光らせ憤怒の形相で睨んでいた。
「アルベルススッ!!何の真似だッ!!我とて死にかけたぞッ!!!」
睨む先にいる万雷の主宰ザビグロニアに大技を喰らわした冥府の王アルベルススは、高笑いを響かせて憐れむ眼差しで冷たく言い放った。
「何の真似だ?それはこっちの台詞じゃザビグロニアッ!!四天王へ伝えよ。冥府の王アルベルススは反旗を翻したとなッ!!」
「冥府の王を降りるって事かッアルベルススッ!!」
「ああそうじゃッ!創造神メヨーテセシュルが居ない天界なんぞ、何の未練もないわッ!!」
「冥府に王が居なければ、地上に死人が溢れる事になるぞッ!分かっているのかアルベルススッ!!」
「そんな事なんぞ分かっておるわッ!!」
「ならばよしッ!そうしてあげようぞッ!このザビグロニアが、この地上を死人で溢れ返らせてやるわッ!!まずはアルベルススお前からだッ!!!」
焼け焦げたマントをかなぐり捨て、ザビグロニアは大剣を構えアルベルススに向かって突進した。
駆ける力をそのまま振り下ろす大剣へ乗せ、アルベルススの首元を狙うザビグロニアの一閃がアルベルススの大剣ケロベロニロニクスで打ち払われ、態勢を崩したザビグロニアの脇腹を大剣ケロベロニロニクスは捉えた。
「疾風凌斬ッ!!」
そう叫ぶと態勢を崩した態勢からザビグロニアは、右回旋からの疾風を纏った刃をアルベルススへ向けて放った。
放たれた凄まじい風圧の一陣が、鋭い刃と成りアルベルススの体を刻み切り裂いた。
猛烈な一陣の刃が去った後のアルベルススは、切り刻まれたぼろきれのようなマントを肩から垂らし、全身傷だらけで膝をついた。
「止めだアルベルススッ!零下雹絶斬破ッ!!」
渾身の力を込めたザビグロニアの大剣が、一瞬にして氷結し、氷結した大剣が膝をつくアルベルスス目掛けて振り払われた。氷結した大剣から振り払われた衝撃波が無数の雹を生み、それらは鋭利な石礫と化して、アルベルススの息の根を止めるべく「凍てつく死の奔流」となって彼を飲み込んだ。
死を呼ぶ凍てつく風の虎落笛が轟き、一瞬にして白く凍てつく大地が広がった。
「終わったなッ!アルベルススッ!!」
「誰が終わったって?万雷の主宰ザビグロニア神」
「その声は、百瀬琉人ッ!!」
白い凍てつく大地が一瞬にして乾いた大地に広がり、溶けて蒸発した氷雪が一気に濃い霧となってザビグロニアの視界を遮った。
濃い霧の向こうの人影をザビグロニアが捉えた。
「そこかッ!!真空絶破ッ!!」
そう叫ぶか否やザビグロニアは、ありったけの力を振り絞り、両手を構え足を踏ん張って全身から周囲へ波動を一気に放った。一気に放たれた波動は視界を遮る濃い霧を瞬時に払い、ザビグロニアの視界に大空広がる乾いた大地が飛び込んできた。
その乾いた大地の向こうには、腕を組み仁王立ちする白き聖闘神鎧を纏った琉人と、深手を負って気を失ったアルベルススを肩に担ぐ美少女ゴーレムのハスウールとミフラシュラ、その後方には、ザビグロニアと交戦したユナシナ、眷属神を翻弄するモモカとユキノヒメが、万雷の主宰ザビグロニア神との決戦の機を待っていた。
「決着を付けようぜ。万雷の主宰ザビグロニア神」
肩で息をしているザビグロニアは、無理やり深く息を吸い込んで呼吸を整え、まっすぐ琉人らを見据えた。
「望むところだ琉人ッ!!」
第17話を読んでくださり、ありがとうございます。
感謝申し上げます。
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