第15話 筋書通りの山場を迎えました
欲張って、第1話から第7まで大幅にリニューアルいたしました。
ご興味ある方は、ぜひ、第1話から最新話まで読んでくださると嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
琉人の生産系魔術によって容易く建てられた近代的な白壁の兵站病院は、全面ガラス張りの三階建てで病室は20室あり、全ての病室は全面ガラス張りに面していた。
リファーダとラルシルの治療を終えた琉人はふと外を眺めていた。
全面ガラス張りの窓が激しく震え、軋む振動音が激しく鳴った。
天空から幾筋の光の筋が伸び、次第に光の帯となり、辺りが急に光に包み込まれたかのように明るくなった。
「奴さん、来ましたか。一斉に病室を奥の隔壁へ移動開始」
琉人の声に反応し窓側にあった病室が一斉に奥の隔壁へと後退し格納され、全面ガラス張りに面しているのは何もない空間だけとなった。
天空と大地が激しく震え、眩しい清冽な光が辺り一面を白く照らす。
何百もの聖歌隊が声を重ねたよう調べが天上の頂から降り注ぎ、空の割れ目から溢れ出て雨のように降り注ぐ。
神々の調べと共に雷鳴を轟かせ、稲妻を帯びる黄金色の鎧を身に纏う一柱の神が眷属64柱を率いて降臨した。
その降臨した容姿を見た女神ことリファールは、険しい表情になり焦燥の色を滲ませた。
「万雷の主宰ザビグロニアが降臨したじゃと…どういうつもりじゃ四天王ども…」
彼女らしくない狼狽えるリファールに気が付いた琉人は、一抹の不安より好奇心が勝り筋書通りの山場が到来した期待感に胸膨らんでいた。
「リファール、その万雷の主宰ザビグロニアって、冥府の王アルベルススよりやばそうな奴なのか」
「やばいなんて生易しい神ではない。万雷の主宰ザビグロニアは天変地異の天を司る神にして、神羅万象を操る術を持つ、神の中でも凶暴の面がある神として畏怖されておるのじゃ」
「なるほどねぇ神羅万象で凶暴性の神かぁ。そんでリファール、四天王うんぬんって?」
「それはな、我と冥府の王アルベルススを奪還する方策なら万雷の主宰ザビグロニアではなく、深淵の智将チャトゥラカトゥラを遣わせた方が得策だというのに、天変地異の神を遣わせるとは、この世を終わらすつもりか。四天王め何を考えておるのじゃ。これじゃまるで戦を…、まさかあの大戦を起こそうというのかッ!この世が再び地獄と化すぞッ!!」
「別にいいじゃん。強敵現れるってな事で、筋書通り俺が万雷の主宰ザビグロニアを倒すから」
「そう筋書通りうまくいくといいのじゃが…来たようじゃ、名にある通り雷撃系を得意とする心得してかかれッ!」
「分かっているってッ!来いや万雷の主宰ザビグロニアッ!!」
万雷の主宰ザビグロニアから放たれたのか、雷撃の閃光の光で辺り一面が真っ白に染め上がり、一瞬にして兵站病院の全面ガラスが一斉に砕け、耳を聾する破砕音と、地面に崩れ落ちる音が重なって響いた。
稲妻を帯びる黄金色の鎧を身に纏う万雷の主宰ザビグロニアが砕けたガラスの向こう側で腕を組み仁王立ちし、その背後には眷属64柱が並び立っていた。
「俺の神用障壁を打ち破って、この対神用防御結界が施したガラスを粉砕するとは、流石は狂犬の神の名に恥じないね。万雷の主宰ザビグロニア神」
「誰が狂犬だッ!貴様が百瀬琉人かッ!!」
「如何にも、俺が百瀬琉人だ。この身なりはセト・アスベルくんだけどね。それより万雷の主宰ザビグロニア神、ガラスを割っちゃ危ないよ。ここは病院だよ。静かにしてよ、患者さんが4人もいるんだから」
「貴様が百瀬琉人なら話が早いッ!我の剣を身に受け、神罰によりこの世から滅せよッ!!」
「また死ぬのは御免だね。この異世界に転生してまだ2日しか経っていないんだから。万雷の主宰ザビグロニア神、あんたが死ね」
琉人が言い終わるのを見計らってか、琉人の背後から猛然と駆け抜ける白き影が、万雷の主宰ザビグロニアの懐へ飛び込んでいった。龍涎香の温かく甘い官能的な残り香が、後を追うように漂った。
「ジャストタイミングだッ!ヌロニハールッ!」
「はいッ!マスターッ!行きますッ!!」
「行っけぇーッ!!」
琉人の危機を察知し、間一髪、間に合ったヌロニハールは、踏み込みの一歩で距離をゼロにし、爆ぜるような一撃が鎧ごと揺さぶり、万雷の主宰ザビグロニアに反撃の隙すら与えない、黒き拳の連打が雨のように降り注いだ。
「神に仇なすというのだなッ!」
「ご名答。まだ俺の筋書通りの展開が始まったばかりなのでね。どこまでヌロニハールの攻撃に耐えられるかな万雷の主宰ザビグロニア神ッ!」
攻撃の手を緩めないヌロニハールの踏み込んだ一歩が床を砕く。その勢いを全て拳ではなく、右足の回し蹴りへと変換し、万雷の主宰ザビグロニアの脇腹を深く抉った。
「なんのこれしきの攻撃で倒れる我ではないはッ!ここからは我の番であるなッ!いざッ!我の刃を受けよッ!進撃雷神波ッ!!」
万雷の主宰ザビグロニアが振るった大剣から雷鳴を轟かせ、稲妻を帯びた刃と化した衝撃波が、ヌロニハールと琉人を捉えた。
「マスターッ!止めますッ!!」
「頼むッ!ヌロニハールッ!!」
「はいッ!!」
猛然と繰り出された稲妻を帯びた衝撃波の刃を、寸前のところでヌロニハールは腕で受け止め、重い一撃で骨が軋む音が脳裏に響いた。
「一振りだけじゃないぞッ!ほらッ! ほらッ! ほらッ!まだまだ止み無く放つぞッ!!」
万雷の主宰ザビグロニアの大剣から轟く雷鳴とともに、稲妻を帯びた刃と化した衝撃波が、幾重にも重なり合って絶え間なく襲い掛かり、反撃の隙すら与えられずヌロニハールは、腕で受け止めただ耐え凌ぐことしかできなかった。それも限界が近づきつつあった。
琉人の頭の中に直接的にヌロニハールから発せられた音声が届いた。
(ヌロニハールは、稼働限界に達し、スリープ回復モードへ10秒後に移行します。カウント、10、9、8、)
「ごめんなさい…マスター…限界みたい」
「悪い、ヌロニハール、使い過ぎた」
衝撃波を放つ事を止めた万雷の主宰ザビグロニアは、渾身の力を込めた止めの一撃をヌロニハールの防ぐ腕へと薙ぎ払った。稼働限界に達したのであろう、ヌロニハールは容易く吹き飛ばされ、背中から壁に激突した爆裂音が響き建物が激しく揺らいだ。
「ヌロニハールッ!!」
琉人は壁にめり込んだヌロニハールへ駆け寄り、ヌロニハールの容態をすぐさま確認した。
(スリープ回復モード解除まで、あと1時間30分です)
彼女の瞳からは戦意の炎が消え、琉人の確認操作で出現したヌロニハールのステータスウィンドのメッセージが、既にスリープ回復モードに入った事を告げ、回復するまで深い眠りについていた。
「リファール、悪い。ヌロニハールを奥の病室で休ませてやってくれ」
「あい分かった。おぬしはどうするつもりじゃ。あやつに仇なす術はあるのじゃな」
「もちろんさ。俺を誰だと思っている。女神を攫ってものにした俺だぞ」
「心配無用じゃったな。なにぶん気を付けるのじゃぞ」
「分かっているって」
琉人を一人残してリファールは、ヌロニハールを担ぎ奥の病室へと連れて行った。
一人残された琉人は優勢を誇っている万雷の主宰ザビグロニア神を睨み返していた。
「残念だったな百瀬琉人。人形の嬢ちゃんでは力不足だったという事よ」
高笑いする万雷の主宰ザビグロニアは、追い打ちを掛けるかのように眷属64柱へ進撃の号令を出した。
「我の眷属神よ。百瀬琉人を討伐せよッ!」
「御意ッ!」
後ろで待機していた眷属神64柱が一斉に抜刀し、剣を構え一斉に琉人目掛けて押し寄せてきた。
百瀬琉人には人知を遥かに超えたチート生産系魔術はあるが、自身の攻撃と防御は無いに等しく、眷属神といえどもまともに戦闘すれば即死につながる。
一斉に押し寄せ刃を振るう眷属神をどう対処するかと思考した結果、琉人はヌロニハールの攻撃要素と防御要素を兼ね備えたパワードスーツを生産系魔術で生成する事にした。
「今度こそ成功しろよパワードスーツ」
琉人は意識を一点に絞り生産系魔術を発動させた。真空の揺らぎから素粒子を生成し対神用の素材としての物質形成を成しえ、ヌロニハールから抽出した戦闘要素を攻撃特性と防御特性に振り分けしパワードスーツの生成に成功、瞬時に自らの身体に纏い、出来栄えを直に感触で確認するため、一斉に押し寄せる眷属神の刃をこの身一つで受け止めた。
琉人の全身に激痛が走り、骨が軋む音が脳裏に響いた。
「くっ!…痛いが、パワードスーツ”聖闘神鎧”の完成だッ!!」
第15話を読んでいただきありがとうございます。
感謝を申し上げます。
続きが気になる方は、ぜひブックマークや評価と感想で応援いただけると励みになります!
よろしくです!!




