第14話 筋書通り、神々との激闘です
5月4日に第2話と第3話を大幅にリニューアルして公開いたします。
ぜひチェックしてみてください!
「なんか、増えていないっ!?」
黒髪三つ編みおさげのロニハは、赤縁眼鏡をくいっと押し上げると、際限なく押し寄せる神々との死闘に身を投じていた。
「えっ、そういえば増えている気がするッ!」
金髪セミロングのハスウールが血だらけの顔で、ボロボロになった黒革の手袋を握り直し、彼女は最後の一歩を力強く踏み出していた。
「リファーダはどうしたのッ!?セルシルとラルシルはッ!?」
三人の気配が消え、前線を離脱した事に気が付いた緑色髪ポニーテールのミルラシュラは、慌てることなく落ち着きを払って、前方で神々を打倒すロニハとハスウールの後方で神々の猛攻を防ぎ守っていた。
「噓でしょッ!?あの三人がやられる訳ないでしょッ!!」
ロニハとハスウールは同時に声を揃えて答え、ミルラシュラと同じく、三人の気配が消えた事実を受け入れられずにいた。
少しの動揺がロニハの黒き拳から繰り出される筋にほんの隙が空き、その隙を見逃さなかった神々の刃が、ロニハ自慢の赤縁眼鏡を吹き飛ばし、その片目を抉った。
仰け反るロニハの体が刃を受けた衝撃で宙に浮いた。
「ロニハっ!!」
それに気付いたハスウールが、宙に浮くロニハに止めを刺そうとする刃を、強靭な脚で受け止める。防御した足首に鈍い痛みが走った。
「ハスウールっ!私に任せてッ!!」
後方支援していたミルラシュラが被弾したロニハに気づき、片目を失い気を失ったロニハを救い抱き締めた。
「しっかりッ!ロニハッ!!」
抱き締める後ろ姿のミルラシュラへ、背後ががら空きになった隙を突く神々の刃が振り下ろされた。
「ミルラシュラッ後ろッ!」
神々の猛攻を一人で防いでいるハスウールは、ただミルラシュラの名を成す術もなく叫ぶ事しかできなかった。
「えっ?」
ハスウールの目の前からミルラシュラとロニハが忽然と消えた。
振り下ろされた神々の刃が虚しく空を斬る。その反動で神々の陣営が崩れ落ち、地上へ落ちていく神々を幾多の光の矢が狙い撃ち、神々は消し飛ばされていった。
風上から、温かみのある甘く官能的な龍涎香の香りが優しく漂ってきた。
漂ってくる香りの元へ、血だらけの顔を上げたハスウールの瞳に、涙が溢れてくる。
涙で霞む視線の向こうに、乳白色のツインテールを戦いの中で靡かせ、凛とした眼差しで神々を殲滅していく、頼もしい黒き拳を振るうヌロニハールの姿がそこにあった。
「姉さまっ!」
「よく頑張りましたハスウール。そんなに血だらけの顔になっちゃて」
優しい眼差しを向けるヌロニハールにハスウールは抱き付き、ヌロニハールから優しく頭を撫でてもらった。
「もう大丈夫です姉さまッ!」
ハスウールは破顔一笑の顔を見上げはにかんだ。
「ハスウール、ミルラシュラ。私には時間がないのです。ロニハ連れてマスターの元へ」
「はいッ!」
二人は揃って返事を返し、気を失ったロニハを連れてマスター琉人の元へ向った。
二人の後ろ姿を見送ったヌロニハールは、後方で激闘を繰り広げている残る三人の元へと急いだ。
「僕たち以外のみんなの気配が無いよッ!ユナシアッ!」
桃色髪のお団子ヘアがよく似合うモモカが、探知スキルで常に仲間の位置情報を把握していた。
「えっうっそぉッ!そんなことないでしょッ!ふざけないでモモカッ!!」
茶髪ナチュラルボブのユナシアが、止めどなく押し寄せる神々を相手に防戦一方。鉄の味を噛み締めながら、彼女は逆転の機を伺っていた。
「ふざけてなんかいないよッ!」
ふくれっ面で頬を膨らませて黒き拳を振るうモモカは、呼吸が荒れ、視界が滲む。それでも彼女は、折れそうな心に鞭を打って立ち上がっていた。
「俺様に任せろッ!俺様一人で片付けてやるッ!!」
紫色髪のハーフアップが印象的なユキノヒメが大立ち回りを演じる鬼神の如く、四方八方から打ち込まれる神々の光の矢を、繊細な足さばきで翻弄しながら蹴り落としていた。
気丈に振る舞っているユキノヒメの顔色は蒼白に近く、繰り返される激闘に、あれほど軽快だった足首が鉛のように重くなっていく。
「これしきの戦で俺様がやられてたまるかッ…!」
歯を食いしばり、神が振り下ろす大太刀の重い一撃を腕で受け止める。骨が軋む音が脳裏に響き体の軸が少し傾いた。その隙を見逃さなかった神々の光の槍が、ユキノヒメの脇腹を捉え放たれた。
それに気付いたユナシアの蹴りが、放たれた光の槍を寸前のところで叩き落とす。その反動で足が痺れ、感覚が遠のいた。
「もう、限界…」
思わず弱音を吐くユナシアにモモカは元気よく励ます。
「モモカがいるよッ!ユナシアッ!僕の後ろに回って戦ってッ!!」
「ありがと、モモカ」
ユナシアがモモカの後方に着こうとしたその時、二人を捉えた神々の光の奔流の一筋が二人を押し潰そうて迫って来た。
「もうっ駄目ッ…!」
ユナシアは諦めて目を閉じ、死を観念したその時だった。
温かく甘い官能的な香りが風に運ばれて、ユナシアの鼻腔をくすぐった。
目を開けたユナシアの目に飛び込んできた光景は、迫りくる光の奔流の一筋は無く、先程までの優勢を誇った神々の姿すら無かった。
「ユナシア…。あっという間に消えちゃった」
呆然と黒き拳を構えるモモカは、そう覇気のない声を漏らした。
「俺様の勝ちだ…」
力なく威勢のいい言葉を吐いたユキノヒメの足は震えていた。
風上から運ばれてくる温かい甘い官能的な香りがユキノヒメの震える足を落ち着かせた。
「あっ、この龍涎香の薫りっ!姉さま…姉さまッ!」
三人そろって香りがする方向へ顔を向けると、悠然と黒き拳を構え深呼吸するヌロニハールの姿がそこにあった。
「姉さまッ!」
三人をそう呼ぶとヌロニハールり元へ駆け出した。
瞬殺だった。神々は抗う術さえ持たなかった。ヌロニハールの放つ黒き拳と白き健脚は、あたかも風が通り過ぎる一瞬の間に、神々を悉く殲滅せしめたのであった。
三人の呼ぶ声が耳に届いたヌロニハールは振り向き、笑顔で応え駆け寄る三人を抱き締めた。
「ユナシア、モモカ、ユキノヒメ。みんながんばりました。ご苦労さん。さっ帰りましょマスターの元へ」
「うんッ!!」
傷だらけの満身創痍となりながらも、三人は元気よく返事をし、ヌロニハールがマスター琉人の元へ踵を返した。
マスター百瀬琉人がいる方角で、天から幾筋もの光が差し始めていた。
その光景を見たヌロニハールは良からぬ予感がした。
天から指す光は帯状に広がり、あっという間に白き光に包み込まれた。
神々の降臨する光景が今まさに広がっていたのだ。
ヌロニハールの良からぬ予感は的中した。
また新たな神が眷属64柱を率いて降臨している光景だった。
その光景を見た三人も茫然自失の態で言葉を失っていた。
「うそでしょ」
「また神様相手に戦うの姉さま。僕、疲れた」
「俺様はまだいける。なっ姉さま」
「みんな、新たな神々の降臨です。マスターへ急ぎましょうッ!」
「はいッ!姉さまッ!!」
白き影となって疾風の如く消えたヌロニハールの後を追って、三人も揃って黒き影となり疾風の如く消えた。
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