第10話 筋書通り俺は、再び神罰を受けます
「百瀬琉人ッ!土塊人形どもに戦わせているだけの卑怯者ッ!潔く神罰を受けよッ!」
腹に穴が開いたまま大声で百瀬琉人を呼ぶ冥府の王アルベルススに対してリファーダは、止めの一撃を喰らわそうと利き足を軸に踏み込もうとしたその時、制止する落ち着いた少年の声が背後からして、その場で踏み止まった。
「リファーダ、神はそんなんじゃ死なないよ」
左右にメイド姿の少女を従えて歩んできた黒髪赤目の少年が、踏み止まり跪くリファーダの肩をポンと軽く叩いて労った。
「またお会いしましたね冥府の王アルベルスス神。こうやってお会いするのは初めてですね」
「百瀬琉人、小賢しい抵抗はよせ。神罰を下す」
「嫌だと言ったら」
「神の絶対を拒む事は出来ぬ」
「い・や・だ」
「どこまでも神を馬鹿にしおって」
冥府の王アルベルススは怒りで震える大剣ケロベロニロニクスを天高く掲げた。
「目の前の神に仇名す罪人、百瀬琉人へ神罰をッ!煉獄の断罪ディン・シェル・ゲヘノムっ!」
大気が悲鳴を上げ、天が真っ赤に染まる。
視界を埋め尽くすのは、地獄の底から溢れ出したかのような悍ましいまでの紅蓮の炎が、冥府の王アルベルススの掌から爆風を伴い放たれた。
放たれたそれは、ただの勢いのある火炎ではなかった。それは神罰を下すことに燃え盛る、意思を持った断罪の咆哮そのものだった。
微動だにしない百瀬琉人と二人のメイドゴーレム。そのまま逆巻く火炎に包まれ、周囲もろとも灼熱の地獄と化した。
「焦土と化した大地と共に消し炭となったか百瀬琉人」
勝ち誇る冥府の王アルベルススの目には、火炎の勢いが収まり、灼熱の高温で大地はマグマと化して溶け出している光景が映っていた。
視界を遮る濃い煙と、絶え間なく立ち昇る陽炎。冥府の王の神罰による絶大な破壊は、そこにあるはずのすべての有機物を消し炭にし、無機物さえも溶かすはずだった。
目の前のある光景を目の当たりにした冥府の王アルベルススは、先程の勝ち誇った笑みがみるみる消え失せて行った。
紅蓮の煙が風もないのに綺麗に左右に割れ消えた。
そこには、塵一つついていない身なりで佇む百瀬琉人の姿があった。
隣に控える二人のメイドゴーレムに至っては、スカートの一枚、リボンの端一つすら焦げていなかった。
「神罰これで終わり?ただ派手だけだったね、神様の神罰ってもんは」
琉人とメイドゴーレムが立っている足元だけが、まるで結界でも張られていたかのように、マグマの海の中でぽっかりと円形の乾いた大地として残っていた。
「あっありえん!煉獄の断罪を真正面から受けながら、無傷だとッ!貴様、一体何をしたッ!」
「簡単だよ。僕の生産系魔術は、単に物を作るだけじゃない」
琉人がゆっくりと一歩、踏みだした。
次の瞬間、溶岩と化した地面が、彼の足が触れた場所から瞬時に石畳の石が造られ、歩道としての石畳の道が造られていった。
「素材の選定、構造の最適化、そして絶対的な性能の付与し生産する。俺が筋書き通りに己の願望を実現するため、この世に存在するあらゆる物質、あらゆる魔導を解析し、それを超える完成度で組み上げ作り上げる、それが僕の生産系魔術なんだ。その一つがこの美少女ゴーレム。まだ発展途上だけどね」
琉人が隣のメイドに視線を送ると、彼女は可憐な微笑みを浮かべ、静かに一歩前へ出た。
その身に纏う空気は、もはや単なる土塊から造られし人形そのものではなかった。神の権能さえも撥ね付ける、完成された個と美の融合としての威圧感がそこにあった。
「冥府の王アルベルスス神。君は彼女たちを単なる土塊人形と呼んだね」
琉人の赤目の瞳に、冷徹な光が宿った。
「確かに素材はこの大地から頂いた土かもしれない。でも、僕が製錬したその土は、君が統べる地獄の炎よりも硬く、神の理よりも強固だった。残念だったねぇ、あなたの神罰は、彼女たちの美しさを損なうにはあまりに不十分だったという事だよ。冥府の王アルベルスス神」
「己ぇぇぇッ!神を冒涜しおってぇぇぇぇッ!!」
憤怒の形相で激昂した冥府の王アルベルススが大剣を振り下ろそうとしたか否や、もう一人のメイドゴーレムが、目にも留まらぬ速度でその剣先を指先ひとつで受け止めた。
その受け止めた衝撃波から耳を裂くような金属音が響き渡る。
「神であろうお方が、あまりにも不作法ですね。マスターとの対話中に、武器を振るうなどと。このヌロニハール、造られしゴーレムの矜持にかけて、許されることではありません」
凛とした、しかも温情のない声が、冥府の王アルベルススに突き刺さる。
まだ発展途上の最強の美少女ゴーレムの指先に、神の絶対的な武具である大剣が完全に停止していた。
「さあ、お返しをしようか。僕の生産系魔術が、あなたの神の力よりも効率的であることを証明してあげましょう」
琉人が軽く指を一つと鳴らした。
次の瞬間、冥府の王アルベルススの足元のマグマが、意志を持った生き物のように猛烈な速度で逆流し、精緻に設計された拘束具へと瞬時に再構築され、彼の四肢を完璧に縛り上げた。
「ぬあああっ!身体がっ!?」
「これは僕が初めて女神を拘束した時に使用した対神用拘束具だよ。神の力を使おうとするほど、逆に締め付ける構造になっている。これであなたで記念すべき二人目だ。最高に効率的な神への絶望だと思わないかい?冥府の王アルベルスス神」
絶望に染まるアルベルススの顔を、琉人は冷ややかな笑みで見下した。
その表情は、傲慢でそして残酷な創造主としての顔だった。
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