表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その猿はハハハと嗤う。  作者: 昊ノ燈


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/13

9.垣根は相手がつくっているのではなく、自分がつくっている②

「学区の七不思議を作ろう!」

「学校の七不思議的な?」

「そう、それの学区版」

「学校の怪談的な?」

「そう、それの七不思議版」

「学校の七不思議って、この学校にあるの?」

「知らない。でも、それの学区版」


 白熱してるような、そうでもないような、とりとめのない会話をしているのは、中田さんと田中さん。五時間目のことだ。

 『とりとめ』とは、要点とかいう意味だから、この会話に『とりとめのない』という表現をするのは、間違いかもしれないけど、なんとなく、とりとめのない会話に感じる。

 正直、中田さんの中で班でやる事が決まっている事に戸惑いを感じるし、一年生に教えてあげる内容が『学区の七不思議』で良いのかというのも戸惑うポイントだ。


「なんで私たちの班の内容がもう決まっているの?」

 僕の疑問を黒瀬さんが口にする。

 頷きながら中田さんを見ると、口を尖らしながら、不貞腐れたように言う。


「だって、したかったんだもん……」

 うわぁ、中田さんの不貞腐れなんて誰得なんだよ。指まで口元に持っていって、あざといスタンスが全開。でも、全然あざとさが感じられないよ。せめて吉岡さんなら、あざとさも似合うんだけど……。


「気色悪ぅ。あざとさでも演出してんの?あんたにそんな格好似合わないわよ」

 そう言いながら、中田さんの真似をして、尖らせた口元に指を当てる黒瀬さん。

 僕の心が見えてるの?と思える発言だけど、黒瀬さんも似合っていない。


「だったら、他に何か案があるのかよ」

「…………」

「ほらな──だから、七不思議で」

「ば〜か。だから、今、この時間に班で集まって考えるんじゃないの」

「バカ野郎?もう決まってんだから、いいじゃねえか!」

「はぁ?馬鹿?馬鹿なの?」

「バカで言うな!バカって言う奴がバカなんだぞ」

「じゃあ、あんたも馬鹿だね」

「はぁ。バカにすんな」

 どんどんヒートアップしていく二人の会話。それにしても、黒瀬さんの煽りスキルって凄いな。


「ね、ねぇ、だったらさ、学区のって言うか、学校周りの危険な所とか、不思議な事をまとめたらどうかな?だったら、七不思議も入るし……」

 流石、田中さん。

「明くんの案なら賛成」

「だったら……良いか」

 黒瀬さんも中田さんも賛成したみたいだ。

 でも、中田さんがこんなに直ぐに折れるなんて気持ち悪いかな。僕はよく弄られてたけど、あまり中田さんを知ろうとも思ってなかったし、意外と素直な面があるみたい。



 授業も終わり、塾に行く田中さんにバイバイした後、僕と中田さんと黒瀬さんはノートとプリントアウトした近隣地図を持って、学校を出た。


 中田さんは目的地があるみたいで、学校に近いところから回ろうと言う僕の案を聞こうともせず、先を歩く。

 仕方なくついて行く。


「山田、あんたがこんなに付き合い良いなんて知らなかったよ」

「ん?」

「だってさ、いつも僕には関係ありませ〜んって顔してさ、俺別(俺だけは別なんだぜ)オーラ全開だよね」

「そ、そうかな?」

「そうだよ。良く言えば『孤高』、普通に言えば『ボッチを拗らせてる』ってとこ。よく真希ちゃんは、こんなのを好きになってるなぁって、本当に思ってた」


 いま、悪口の合間に不穏な言葉を耳にした。『真希ちゃんは、こんなのを好き』、って、えっ、吉岡さん、僕の事を好きだったの?そ、そりゃあ、僕も吉岡さんを好きだけど──それは、友達として、幼馴染として好きなわけで……。


「吉岡さん、僕のこと好きなんだ…………」

「そう、そういうところ!誰に対しても、『さん』付けして、壁を作ってるみたいじゃんか。真希ちゃんくらい、吉岡さんじゃなくて、真希ちゃんって呼んであげなよ」

「でも、先生が、ひとを呼ぶ時は『さん』を付けて呼びましょうって…………」

「あんたは、一年生?一年生なの?」

「…………」

「それに何今更感だしてんの、真希ちゃんがあんたの事を好きって、みんな知ってるわよ」


 そうなんだ……皆んな知ってる事なんだ。僕だけが知ってる事っていっぱいあるのに、僕だけが知らない事もあるんだ…………。


「で、でも、黒瀬さんだって……」

「みどり。翡翠(ヒスイ)の翠の字が一つで『みどり』」

「み、みどりさんだって、そんなに喋るタイプとは思わなかった」


 あぁ、僕は何を言っているんだ。

 黒瀬さんは翠さんっていうんだ。知らなかった。でも、黒瀬翠─黒と翠─ダークグリーンだ──なんて、言える雰囲気でもない。


「ん〜。みどりさんよりも『ちゃん』の方が好きかな。『みどりちゃん』リピートアフターミー」

「み、翠ちゃん」

「ちょっと硬いけど、まぁ良しとしようか。で、学校で?当たり前でしょ。学校では私の他に喋ってくれる人がいるんだもの。私が喋る必要ないでしょ」


 そ、そういうモノなの?

 女子って、喋りたくて喋りたくてしょうがなくて、ひたすらに口を開いているものじゃないの?

 まぁ、人それぞれか。


「それにしても、中田はどこに行こうとしてんだろ?」

 翠ちゃんは、僕には『みどりちゃん』を強要したくせに、僕達のことは呼び捨てなんだ…………。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ