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第40話
「え、入るの?」
「入らないんですか?」
先陣を切っていた朝顔が躊躇う中、ゆかりは涼しい顔をして進んでいく。
朝顔もなんだかんだ言って温室育ちなのだ。
『我々も入りましょう』
びごー。
「入るんだ」
『折角ですから』
「えー、待って待って」
わたわたと最後尾を歩く朝顔の足取りはいつになく不安気だ。
廃墟と化した室内だったが、思いの外に綺麗だった。
一部の窓ガラスが割れたりしてはいるが落書き等はほとんどない。
少し進むと、ガラス張りになっている廊下の向こうに水の無くなった室内プールが見えた。
大きな海賊船のオブジェは、経年劣化は見て取れるが形を保ったまま鎮座している。
マストに蜘蛛の巣が張った様は幽霊船のようでもあった。
人と金に溢れていた、狂乱の時代の遺物。
『あの船の上はステージになっていて、たまにヒーローショーなんかやってたんですよ』
「へぇ」
プールエリアを抜けると、ゲームセンターに水を抜かれた釣り堀まであった。
ゲームセンターの窓からは遊園地エリアが見えたが、そこにあったと言う観覧車は解体されてしまったようだ。
「物悲しいな」
『悲しいですか?』
「悲しいとは思わない?」
『よく分かりません』
かつて確かにあった愛した物は、もうここにはない。
感傷と静謐に満ちた場所だった。
僕は、ゆっくりと歩を奥に進めることにした。




