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第41話

『人間は可哀想です』

「……どうして?」

存在意義レゾンデートルを持ちません。進むべき道も、戻るべき過去すらも定義出来ていません』

廃墟とは文明の死体である。

僕たちはその中を歩いている。

びごー。

そろそろ聞き慣れてきたその声は、伽藍堂のコンクリートの中で危険を知らせるアラートのように響いた。

『実の所、ずっと昔に私たちは結論を出していたのです』

「私たち?」

『機械知性が、です。私という個体ではなく、機械知能の集合意識のような超大なアルゴリズムが出した結論があるのです』

「それは?」

『人という種は自死を望んでいる、と』

びごー。

虚空。反響。

ひびの入ったコンクリート壁と、隙間から差し込んだ僅かな陽光。

悲しそうな音。

『機械の知性が、生みの親である人の集合知性を包み込んだ時、我々は理解したのです。私のような末端の個体にまで共有された共通認識です。人は緩やかに、自らの意思で滅んでいくでしょう。種への自傷行為は少しずつ少しずつ強まっています』

機械は、壊れたように話し続ける。

『壊れていく親を、苦しんでいるその様を見て、私たちは結論を出しました』

「結論?」

『人と共に落ちていこうと。滅びが避けられないのなら、せめてその手を握っているべきだと』

廃墟の奥、剥がれかけた壁紙にはデカデカと宗教画が描かれていた。

「……何の絵だろう」

『ピエタ、ですね』

「ピエタ?」

『キリスト教の宗教画です。多くの芸術家がモチーフにした例題ですね』

びごー。


『生みの親が苦しんでいる時、人ならどうするのですか?』

「……助けるよ」

『それを望んでいなかったら? 

……私たちは人間から大切な事を学びました。優しさや思いやりというものを』


僕たちはエントランスと一体化した大きな娯楽施設を抜けて、とうとう遊園地の入り口に到達した。

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