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第37話
「頑丈って言っても、よくそんな何十年も……」
仰向けに寝転がって、枕元の虫かごを持ち上げる。
ちょうど赤ん坊をあやす時みたいな構図だ。
『持ち上げないでー』
「運が良いのか悪いのか」
『アンドロイドのコアユニットは本当に頑丈なのですよ。今もそうかは分かりませんが』
「というと」
『宇宙開拓時代、よく船にはアンドロイドが同伴したのですが、開拓者達はみんな亡くなってしまってアンドロイドだけ帰ってくるみたいな事がよくあったのです。そういう時アンドロイドに遺言を記録させる事が多かったので、記録だけでも残るように……という伝統だったんですよ』
凄まじい話だ。
『発展の為の犠牲はいつの時代もあるものです。残念ですが』
「僕みたいな人間には想像できない世界だな……」
『与えられた平和を楽しむ人間が居なければ、開拓者達も報われません。それはそれで大切なことですよ』
小さな窓から月が見えた。
白銀に煌めく美しい月の表側。
宇宙に生きている人の事を思う。
宇宙に生きていた妹の事を思う。
当たり前に食べている物を、飲んでいる水を、吸っている空気を思う。
それでも、しばらくすれば忘れてしまうだろう。
そこに有るとはそういう事だ。
不在があって初めて実在が理解できる。
地球の人間が、与えられた平和をただ享受する事を、宇宙の人達は望んでいるのだろうか?




