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第35話
宿は二部屋、一応男女で分かれることになった。
ゆかりと朝顔でツインルーム、僕はシングルルームだ。
『私も女の子なんですけどー』
びごー。
「そんなこと言うなよ。ちょっと寂しかったんだから」
『仕方ないですね』
びごびご。
虫かごをベッドの枕元に置く。
金属の塊が入っている上にバッテリーだの何だのを貼り付けているので意外と重く、首に吊り紐の跡がついてしまっていた。
「ふぅ」
小狭いビジネスホテルは、一体型のバストイレとベッド一つの他には机と椅子があるだけだ。
ベッドと机の間の床は、リュックを置くとほとんど埋まってしまうくらいのスペースしかない。
荷解きをしてシャワーを浴びると、部屋はしんと静まり返った。
テレビをつける。
ありきたりなメロドラマの再放送。
「……何か喋って」
『何かとは?』
「思い出話とか。身体探しのヒントになるかも」
『思い出話ですかー。うーむ』
人恋しくて虫かごと喋っている姿はさぞシュールだろうが、幸いなことに部屋には他に誰もいない。
『じゃあ、私が働いていた頃の話をしましょう』




