第34話
線路をかなり歩いた。
少しずつ周囲も開けてきた様子で、駐車場ばかりやたらと広い田舎のコンビニなんかもいくつか出てきた。
コンビニで水分と食料にガムテープ、翻訳機なんて売っているはずもないので端末充電用のモバイルバッテリーを買う。
充電しながら、バッテリーとコードごと省電力モードにした携帯端末をガムテープでバリバリと虫かごに貼り付ける。
『あーあー。本日は晴天なり』
「手間のかかるAIですね……」
ゆかりがため息を吐きながら虫かごをつんつんとつつく。
『ぎゃー』
「……ちょっと可愛いかも」
気に入ったようだった。
『なるほどなるほど、月に向かっているのですか。私も同行しましょう』
「来るんだ」
『行くあても無いので』
それはそうだろうが……。
「連れてってあげよう。拾った責任だよ」
朝顔がそう言う。
まあ、大きな荷物でも無い。
『便利ですよー私は。交通系電子マネーも完備です』
現金がほとんど電子マネーに起き変わった昨今、交通系電子マネーなんて括りのものは廃止されてしまって久しい。
『私の身体もあるかもしれませんし』
「身体ねぇ」
「宇宙へ行けば代わりのものならいくつか見つかると思います。アンドロイドの身体は義体の発展型ですし、宇宙だと身体機能拡張用の義体が一般的ですから市場が広いんです」
労働力としてのアンドロイドは、数十年に流行したがしばらくすると廃れてしまった。
労働階級の人間の単価がアンドロイドを下回ったからである。
機械を買うよりも人間を雇った方が労働単価が安いのだ。
一時期はデパートにまで並んでいたが、今ではアンドロイドは一部でしか見ない存在になってしまっていた。
一部――例えば、人が入れないような極限環境――で運用されるロボットは、そもそも工業用の作業機器にAIを積んだものなので人の形をしていない。
女性型アンドロイドがあんな所に転がっていたということは、おそらく都市部で運用されていたものが払い下げられてこき使われていたのだと考えられる。
『私の身体はどこー』
怪談話の怨霊みたいなことを言うAIをぶら下げて、僕らは旅を再開した。




