第33話
『身体があったんですー!私のとってもプリティーキュートなお身体が……』
あったとしても数十年も経てば朽ち果てているのではないだろうか。
むしろ何故コアだけ無事なのか……。
「アンドロイドのコアユニットは、身体が破損しても経験データを引き継いだまま身体を代えて作業出来るように一番頑丈に作るんです。宇宙空間とか溶鉱炉とか発電所で作業する個体も居ますから。金属球でチップを覆うのも放射線対策ですし」
ゆかりがそう説明してくれる。
「せめて何か代わりのユニットでもあれば……」
ゆかりがうーん、と唸るがそんなものが手近にあるはずもない。
「えい」
朝顔が、首からぶら下げていた虫かごに空蝉を放り込んだ。
『うぎゃー』
「これで良し」
『最低です最悪ですよ、精密機械を何だと思っているのですか』
びごー。
スマホ越しに喋る虫かごは、朝顔を怖がるようになってしまったので僕の首にぶら下げることになった。
「まあまあ、町の方に出たら何か探すよ」
『まさか虫かごに入れられることになるとは』
「蝉って名前だしピッタリじゃない?」
朝顔がそんなことを言う。
『なんて事言うんですか!だいたい空蝉というのは……』
空蝉というのはセミの抜け殻のことであるが、文学的にはこの世、とかこの世に生きる人、みたいな意味合いの事が多い。
彼女(?)はまさに今自分の抜け殻を探している訳で、状況から言えば皮肉という他ないが……。
「あ」
ゆかりが声を漏らした。
携帯端末のバッテリーが切れたようで、翻訳を通さなくなった空蝉の声はまたけたたましい電子音声に戻ってしまった。
びごー。
「うーん、買い替え時ですね……。元がジャンク品だし、バッテリーだけでも新品にしたいなぁ」
びごー、びごー。
「代わりの買ってやるからちょっと静かにして……」
びごー。




