第32話
びごー、びごー。
聞き覚えのない音がどこからか鳴っていた。
音源を探して、なんだかんだと僕達は20分くらい草まみれの廃線を中腰で行ったり来たりしている。
僕達、というか、主に朝顔がなのだが。
僕とゆかりはとっくに疲れ果てて道の脇の石に並んで腰掛けている。
「何の音なんだろう、これ」
「……救難信号に似てます」
「救難信号?」
「声が出せないような状況とか酸素を節約したい時に鳴らす音の信号があるんです。宇宙だとたまに聞く音です」
「……誰か死にかけてるってこと?」
人影は見当たらない。
「いや、多分この音は――」
「あった!!」
ゆかりの声を遮るように、朝顔の声が響いた。
朝顔の手には、テニスボール大の金属球が握られていた。
びごー、びごーという音は続いたままである。
「鳴り止まないねぇ」
朝顔が首を傾げ、壊れたテレビか何かにそうするようにべしべしと叩く。
「わ、わ、ちょっと待ってください」
ゆかりが携帯端末をポケットから取り出すと、金属球の音を『翻訳』する。
『叩かないで叩かないで!野蛮人!』
「……なんだこれ」
「アンドロイドのコアユニットじゃないでしょうか。分解したらまんなかにAIのコアチップが入ってるはずです」
『分解ー⁉︎』
びごー、びごーとまた救難信号が再開する。
こんな所に僕ら以外に誰かいるはずもない。
「型式は?」
ゆかりが金属球に尋ねた。
『『空蝉』と言います。汎用人型決戦サポートロボットです』
「決戦?」
何かと混じっていないか?
「人型にも戦闘型にも見えないけど」
『身体が無くなっちゃったからですよー!貨物列車に跳ねられて……』
いつの話をしているのだろう。
こんなところを貨物列車が走っていたのは数十年前の話だ。
『数十年ー⁉︎』
びごー、びごー。
鳴き声みたいなものなのかもしれない。
『ガタがくるわけですよ、うう……』
びごー。




