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第29話
「……何してくれるんですか」
「……兄妹だから」
「そんなことされたら死にづらいでしょ。私の方の罪悪感に訴えるみたいで姑息だと思います」
ゆかりは、水中でもがきながら、僕の手を掴んでなんとか水面に顔を出した。
さっきまでの神様みたいな白さは、すっかり消え失せている。
必死にもがいて、泥まみれの泣きそうな顔でぐちぐちと文句をたれるその顔は、同い年の田舎の少女そのものだ。
身体中に草とか泥が纏わりついて大層不快である。
変な病気になったりしないといいが……。
しばらくはそのままぶーすか言っていたが、なんとか岸に上がることができた。
裸だったゆかりはともかく、僕は着ていたジャージが水と泥を吸って満足に動くことも出来ない。
ぐったりと、ふたり、息を切らせて仰向けに寝転がる。
月が出ている。
大きな大きな満月だ。
「……責任とってくださいよ、お兄ちゃん」
ゆかりがそんなことを言った。
顔を逸らしているから表情は読み取れない。
しかし、荒い呼吸に上下する白い肌は、耳まで真っ赤になっていた。




