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第27話

闇の中、大きな大きな月を背に、浴衣の少女が立っていた。

大きくはだけた浴衣から覗く真白い肌は月明かりに透けるようで、その瞳は真っ直ぐに僕を捉えている。

月下に咲く白い花のようだった。

「ゆかり」

ゆかりは、ジッと僕を見たまま何も言わない。

「帰ろう。みんな心配してるから」

「……」


暗い溜池は、鏡面のように月夜を写している。

月明かりが、朧げに世界に輪郭を齎していた。

一際に月明かりを反射する月下の少女は、まるで世界の中心のようだった。

「とても……」

鈴虫が鳴いている。

蛙が、山鳩が、木々のざわめきも。

田舎の夜の澄んだ空気は、思いもよらないくらい多くの音に震えていた。

「月が綺麗ですね」

目の前の少女は、じっとこちらを見ながらそう言った。


僕はゆっくりと歩み寄る。

ゆかりはぼんやりとそこに立ち止まったままだ。

溜池の水際に、風景の一部であるみたいに。

距離が詰まる。

もう数メートルも無い。

ゆかりが一歩後ずさる。

ちゃぷ、と片足が水面に波紋を立て、僕は立ち止まった。

「縁」

ゆかりは僕の名前を呼びながら、ゆっくりと、浴衣の帯を解いた。

はらり、とはだけていた浴衣が足元に落ちる。

月明かりの中、白い肌が闇夜に浮いていた。

「……本当に、月が綺麗」

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