第24話
籠の中の鳥の見る夢。
空へ羽ばたいた私は、大きな揺籠の中にいる。
ここに金網はない。
抗い難い暖かさがあるだけだ。
「朝顔ちゃんは、それでいいんですか?」
隣でフランクフルトを口いっぱいに頬張っていた朝顔は、きょとんとした顔で向き直る。
「それでって?」
「結婚するって」
「ああ」
コーラで口の中を流し込み、ゆっくりと空を見上げる。
「……案外幸せなんじゃないかと思って」
「でも」
「温かいご飯があって、子供が産まれて。たまにドライブとか遊園地とか行ったりするの。縁くんとだって、会えない訳じゃないしさ。明石さんも、何回か顔合わせたけど悪い人じゃ無いと思うし。お父さんもお母さんも、明石さんみたいな人なかなか居ないって」
断絶を感じた。
それは地球に生まれ育った金持ち達の、自堕落と無関心だと思った。
揺籠に飼い慣らされた者達による、自由への冒涜だ。
その時、初めて、朝顔という少女を気味が悪く思った。
「ゆかりちゃん?」
「……私、の、母は」
何を口走ろうとしているのだろう。
そんな事をしても誰も幸せにはならないのに。
ここに居られなくなるかもしれないのに。
朝顔ちゃんが、心配そうに私の顔を覗いていた。
きゅるんとした髪の毛と同じ、栗色の大きな瞳。
水分に潤んだ光沢のある綺麗な目だった。
愛くるしく溌剌とした、お人形みたいに可愛らしい少女。
「朝顔ちゃんは、私のお母さんに似てますね」
絞り出したのは、そんな言葉だった。




