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第21話
緩やかなような、そうでも無いような日々が過ぎていった。
宮原朝顔はよく僕の家に遊びに来るようになり、彼女と遊ぶうちに村に知り合いも増えていった。
あの頃は何も思わなかったが、よく近所の家に木登りとか珍しい虫取りとか理由をつけて遊びに行ったのは、僕を村の人たちに馴染ませるためだったのだろう。
数年が過ぎた。
村に居る子供は、ずっと僕と朝顔だけだった。
猫のおばさんは、
「朝顔ちゃんはずっと同じくらいの友達が居なかったから僕に会って嬉しい」
のだと言っていた。
朝顔は顔を真っ赤にして否定していたが、僕が向き直ると否定の言葉も返せずに固まってしまった。
この村は僕の全てになった。
その頃には、都会の風景など思い出せもしなかった。
僕は朝顔が好きだった。
それは憧れみたいな感情だ。
子供雑誌に載っているレトロフューチャーな未来都市みたいな、きらきらとした未来図が僕にとっての宮原朝顔だった。
朝顔に婚約者が出来たのは、僕らが15歳になった時のことだった。
顔すら知らない、12も歳上の男だった。
朝顔はあっけらかんと、
「そんなものだよ」
と言っていた。
「そんなものかな」
と僕も返した。
それから二人、溜池に釣りに行った。
いつもと同じ、何も変わらない日曜日の午後だった。




