↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
64/100

第17話 触手の全解放

「行くぞ、恒一ッ!」

「ああ、来いッ! 不破ッ!」


 再び戦闘が開始されると、恒一が因果加速で一気に踏み込んだ。

 今日の試合で最速の因果加速である。しかし、ネメシスも動いた。

 今度は〇・三秒ではなく、〇・五秒先に動いている。


「速い……!」


 驚愕の声を漏らす恒一。


「自己修復の過程で、神経回路の処理速度が上がった。貴様の因果加速の因果連鎖が見えるようになった」

「見えるとは、どういうことだ……?」

「因果の流れが、俺の神経回路には感触がある。恒一が因果加速を発動する瞬間、因果の流れが特定の形に変わる。その変化を感知できれば、発動前に対処できる」

「それは今日初めて、できるようになったのか……」


 そう言うと恒一は舌打ちを放つ。まさに感情的な動作だ。


「だが、それなら……因果加速を複数同時に発動する。お前は一体どの因果の流れに対応する?」


 白い歯を晒して、彼は術式を発動すると、数珠の光が複数に分裂する。

 三方向から、恒一の動作が同時に起動した。本体と因果だけが加速した虚像が二つ。


 どれが本体かを判断する間もなく、三つが同時にネメシスに向かう。

 彼が神経回路で、三つの因果の流れを同時に走査した。


「……中央が本体だな」


 視線を忙しなく動かし、冷静に分析した結果のものを、ネメシスは呟く。

 左右の虚像を無視して、中央の恒一に向けて動いた。

 右手から触手が三本展開する。彼の動作を拘束しようとした。


「甘いなッ! 触手の展開の因果を縛るッ!」


 即座に恒一が因果縛を発動すると、三本の触手が展開途中で停止する。

 しかしネメシスは、すぐさま別の手段に切り替えた。


「魔法無効化領域、展開する」


 宣言すると同時に彼の周囲には、半径五メートルの領域が展開される。

 領域内の空気の質が変化した。魔力の術式化を阻害する干渉が、領域全体に満ちる。

 そして寸前の所で、恒一が領域の縁で足を止めた。


「これが今日、使っていなかったものか……」

「ああ、そうだ。所謂、奥の手というやつだ」

「……この領域内では俺の術式が使えない」

「そうだな。因果加速も、因果縛も、因果書換も、この領域内では発動できない」

「しかし、俺は領域の外にいる。領域を動かさない限り、俺は外から攻撃できる」


 領域の縁を念入りに、確認するように恒一は、周囲に視線を配る。


「そうだな。だから……今から動く」


 そう言うと同時に、ネメシスが前に出た。領域ごと、恒一に向けて移動する。

 咄嗟に彼が大きく後退した。領域から逃げながら、外側から因果演算で、対処しようとしている。


「因果書換、第三段階」


 新しい術式名を、恒一が口にした。


「第三段階? 初めて聞いたな」

「ああ、そうだろうな。俺も今日、初めて使う。お前が領域を使うなら、俺も奥の手を使うまでのこと」


 軽快に移動しながら恒一は術式を発動すると、数珠の紋様が今日一番複雑な形に変化する。


「領域そのものの因果を書き換える。領域が存在するための前提を消去する」

「領域への因果書換か……。ふっ、面白い。試してみろ」


 尚も彼への接近を止める事なく、追撃を続けながらネメシスは、不敵な笑みを浮かべた。

 そして次の瞬間、因果書換が展開される。領域の縁に、因果の書き換えが走った。

 領域が大きく揺らぐ。しかし消えなかった。


「っ……なぜだ!?」


 目を見張りながら恒一が叫ぶ。


「ああ、言い忘れていたが、俺の領域は術式ではない。NMSウイルスの神経回路が直接生成している生物的な領域だ。術式の核が存在しない。因果書換の対象になる核がない」

「くっ……生物的な領域は因果書換の対象にならない……」

「そういうことだな」

「……ならば、領域を生成しているお前自身の存在の因果を書き換えるまで」


 逃げていた足を止めると恒一は、一秒ほど考えた末にデバイスを構えた。


「また存在への干渉か。しかし、今度は修復の準備ができている。前回より速く対処できる」

「そうか、ならばやってみろ」


 そう言うと恒一は因果書換、終焉の帰結を再び発動させる。

 ネメシスの存在の連続性に、因果の書き換えが走った。


 しかし今回は違う。神経回路が、因果書換の発動と同時に、修復を開始。

 因果の書き換えが走る速度と、神経回路が逆算修復を行う速度が、拮抗した。


「ふむ、互角と言ったところか」


 倒れない相手の姿を見て、恒一が冷静に呟く。その声には、本物の驚きが滲んでいた。


「前回は俺の因果書換が先に完成した。しかし、今回は修復が追いついている」

「そうだ。一度経験すれば、次は速くなる。これが俺の神経回路の学習機能だ」

「なるほど、それなら更に速度を上げる」


 デバイスへと流す魔力の循環を、彼は強めると因果書換の展開速度が上がる。

 だが、それに対抗するべく、ネメシスの修復速度も上がった。

 二つが拮抗したまま、フィールドで激突し続ける。


 そして状況が変わらないまま、数分の時が経過すると、ネメシスが一つの判断を下した。

 このまま拮抗を続けていても、消耗戦では必ず有利不利が出る。恒一の因果書換は学習しない。


 速度を上げるために魔力を消費する。しかし、神経回路は学習するたびに効率が上がった。

 故に長引けば、神経回路の効率の方が、必ず上回るのだ。

 しかし、ここでは短期決戦を選んだ方が確実であると。


「触手を全展開する」


 そう彼が言い切ると同時に、皮膚の下で動いていたものが、一斉に表面へと飛び出す。

 背中から、両腕から、肩から、触手が展開された。

 そう、十二本という圧倒的な数が、同時に展開されたのである。


 そして十二本の触手が、一斉に恒一の元へと向かう。

 だが同時に、ネメシスの右手が彼へと向いた。

 魔法無効化領域が、触手の展開に合わせて拡大する。


 半径五メートルから、半径十メートルに広がった。

 恒一が領域の内側に入る。因果書換の展開速度が、領域内で落ちた。

 術式化の阻害が、因果書換の核の形成を妨げている。

最後まで読んで頂きまして誠にありがとうございます。

宜しければ評価とブックマーク登録をお願い致します。

活動の励みとなり更新が維持出来ます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。