第4話 少女たちのバトルスーツ
「うわぉ!? まじでエキサイティング! 今年もこれが見られて最高だぜ!」
「相変わらず凄まじいな……まじで密着してる……。ほんと、これで大丈夫なのかと、ある意味で心配になるぜ……」
「機動力を重視すると必然と、そういう設計にはなるが……。ただのエロスーツ……」
「学校の備品で、これはどうなんだろうな……ほんと」
「だけど……これはこれで、確かに動きやすいんだよねぇ」
多くの男子生徒の視線が、自ずと準備エリアの方向に集まった。
そして如月颯太が、男子用スーツを着用して、準備エリアに戻る。
深いグレーと黒の装甲型スーツが、鍛えた体型に合う。
肩部の装甲が展開されており、魔力回路の青白いラインが肩から腕に走っていた。
「うん、フィットしてる。動きも問題ない。MAGとの連動も問題なしだ」
如月が腕を動かして、機能を確認する。そしてルクレツィアが、着替えエリアから出てきた。
英国王立魔導院の紋章が刻まれた、白と紺を基調とした姫騎士風の戦装束が、彼女の完成された体躯を包み込んでいる。
磨き上げられた白銀の胸甲は、ルクレツィアの豊かな胸元に合わせて、優雅な曲線を描いていた。
その下から伸びる細い腰は驚くほど華奢で、胸と腰の対比が彼女の女性らしさをより際立たせている。
腰を守る装甲は最低限に抑えられており、白磁のようになめらかな太腿が、装甲とニーソックスの間から眩しく覗いていた。
背中まで流れる艶やかな金髪を軽く払いながら、サファイアブルーの瞳が自身の装甲の各部を確認している。金の装飾が施された鎧は高貴さを演出しているが、ただ立っているだけで目を奪われるような、気高さと女性らしい華やかさを放っていた。
「……こちらの学校が用意した戦闘用のスーツは、少々破廉恥が過ぎてよろしくありませんわね」
学校支給のスーツを着用している女子たちを眺め、ルクレツィアは小言を漏らすように呟く。
サファイアブルーの瞳に、明確な不満と羞恥の色が浮かんでいた。
「実用性と言えば聞こえはよろしいですが……肌への密着度の高さといい、身体の線を強調しすぎる設計といい、これではまるで殿方の目を引くための卑猥な衣装のようですわ。我が国の支給品を見習っていただきたいものです」
「はぁ……。文句があるなら学校に直接言ってくれ。俺に言われても困る」
敢えて視線を逸らしながら如月が答える。
「あら、わたくしが文句を言った所で、何かが変わるとは思いませんわ。 ……にしても本当に、はしたないですわね」
溜息をひとつつくとルクレツィアは、腰のホルスターに王冠口径を装着する。マットブラックのデバイスが、白紺の戦装束の上で静かに、その牙を潜めた。
そしてリュミエールが、準備エリアに戻ってきた。
フランスの最先端魔導工学が粋を集めた、白と深紅を基調とする専用の戦装束――。
それが、彼女の細身で華奢な体型を包み込んでいた。
その腰元には、百合と天秤の意匠が施された、白銀の細身長剣が静かに揺れている。
フランス名門の誇りを体現するかのような、彼女の専用MAG”クレール・ド・ジュジュマン”。展開すれば刀身を完全な光粒子へと変貌させ、戦場を秩序で支配する最高峰の光学裁定型デバイスだ。
一見すると、その武器にふさわしくナポレオンジャケットを思わせる高貴な仕立ての戦装束だが、驚くべきはその大胆な設計。
胸元は大きくV字に開いており、制服の時には隠されていた豊かな胸元の膨らみが、白磁のような谷間とともに大胆に覗いている。
さらに、ジャケットの裾から下は極端に短く、引き締められた細い腰から伸びる華奢な太腿が、黒いニーソックスとの隙間から眩しく露出していた。
普段の王子様のような佇まいから一転、あまりに扇情的なその戦闘服は、リュミエールの瑞々しい女の子らしさをこれでもかと強調している。
ふんわりとした淡いブロンドの癖毛を少し揺らしながら、折り畳み式の手鏡で自分の姿を確認した彼女の蜂蜜色の瞳は、みるみるうちに潤み、耳の裏まで真っ赤に染まっていった。
「これは……っ、いくら自国の最新モデルだからって、少し……っ、恥ずかしすぎるよ! 動きやすさは完璧だけど、このデザインは……っ、どこをどう見られたって、ただの変態じゃないか……っ!」
開いた胸元を隠すように、両腕を交差させて、リュミエールが身悶える。
普段の柔らかな佇まいはどこへやら、潤んだ蜂蜜色の瞳を泳がせながら、彼女は少しでも露出した素肌を隠そうと、小動物のように小さく身を縮こまらせた。
「気になるのか?」
真顔を晒しながら、アイゼンが問う。感情の起伏がない声だ。
「当たり前でしょ! ……アイゼンは気にならないのかい?」
「機能に問題がなければ、外見など関係ない」
静かに腕を組みながら、アイゼンは冷めた声で断言する。そんな彼女が身に纏うのは、自国の軍服をベースに戦闘用へと特化させた、黒と銀を基調とする戦装束だ。
その前腕部と背部には、無骨な灰鉄色の装甲ブロック――アイゼンの専用MAG”シュタール・リヒター”が装着されている。
起動すれば全身に魔力鋼フレームを展開し、骨格と筋力を直接補強して圧倒的な重圧と鉄壁の防御を戦場にもたらす、重装甲制御型の装着式デバイスだ。
一見すると威厳ある軍服の佇まいだが、激しい戦闘機動に追従するため、胴体や太腿の大部分が伸縮性と透湿性に優れた極薄の特殊密着素材に切り替えられている。
鍛え抜かれ、余分な脂肪を一切排したアイゼンの均整体に張り付く黒い素材は、浮き出た腹筋のしなやかな縦線や、腰から腿にかけての強靭かつ滑らかな曲線を、まるで皮膚の一部のようになぞり出していた。
胸元こそ控えめだが、軍服のボタンを敢えて外したかのように深く切れ込んだV字の隙間から、色香とは無縁のはずの白く引き締められた肌が覗いている。
装飾を拒むストイックな軍服だからこそ、露わになる肉体の肉感的で歪な色気が、かえって強烈に引き立てられていた。前髪の隙間から、右目の人工魔眼が微弱な光を放ち、準備エリアを見渡す。
そして神代美弥が、準備エリアに戻ってきた。彼女が身に纏うのは、和の意匠を現代の魔法技術で再構築した、白と淡い藍を基調とする独自の戦装束。
神職の装束を思わせる高貴な佇まいでありながら、胴体から腰回りにかけては皮膚のように密着する、特殊な白の薄手素材が使用されている。
作り物めいたほどに整えられた細身かつ均整の取れた体型が、その素材によって恐ろしいほど鮮明に浮き彫りにされていた。
衣服の合わせ目から覗く豊かな胸元の柔らかな輪郭と、そこから急角度で絞られる細い腰の曲線。
しなやかな肉体の凹凸が、歩くたびに和の絹擦れの奥で生々しく躍動し、見る者に息を呑むような背徳的な色気を感じさせる。
しかし当の本人は、その完成された肢体を周囲に晒していることを、一切気にしていない様子だ。
腰近くまである銀白に近い淡い黒髪が、動きに合わせて戦装束の肩から静かに流れ落ちる。
澄んだ氷色の瞳が、準備エリアを静かに見渡した。そこに他者への関心の色は微塵もない。
手鏡型の薄型MAG――神代家が内製した観測同調型デバイス”神鏡”を手に取り、角度を微調整して確認した。その一連の動作すら、まるで絵画から抜け出してきた人形のように、優雅で無駄がない。
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