Deviance World Online ストーリー7『プレイボール』
Are you ready?
予定時刻到達、黒狼は封印状態に依然変わりはない。
だがロッソとモルガンの登場、そしてその登場に応じ発生したホムンクルス型侵攻部隊『ミリオネアの信徒』の登場によって生まれたのは膠着状態だ。
いや、より正確に言うのならば人為的に起こされた分断。
この瞬間より、魔女の反撃が始まる。
「ロッソ、私は貴女が嫌いです。そこに意味を求めることが無駄なほどに貴女が嫌いです、けれどもこの短い期間を通して理由がわかりました」
「へぇ、何故? 教えてくれるかしら」
「諦めてるでしょう、その先を。私は求めることが目的ではありません、得ることが目的ではありません。私の目的は得た先、その先にある物語こそが目的でありそれを得た時に私が何をするのかが人生の目的です。ですが貴女は違う、既に諦めている。その姿勢こそ私は侮蔑するモノです、その態度が余りにも無様であるからこそ私は貴女が嫌いです」
「同感ね、夢見る乙女気取りの貴女が嫌いな私と同じよ」
同時に二人は武器を構える、ロッソは式装肆式『レーザー砲』を両肩に掲げ装備を金属で形成されたゴスロリドレスに変化させる。
またモルガンは両手および装備を式装陸式『冥土』であるメイド服に換装しガトリング砲を二門掲げ、弾丸を射出した。
金属すらも一瞬で溶かす熱量を放射するレーザー砲は、質量を持たないからこそ最速であり貯め時間から軌道を予測し防御する他にない。
だがバカ真面目にそんな防御行動を取れば反動で吹き飛ばされながら射撃を行ってくるモルガンのガトリングが突き刺さる、こちらは質量を持つがゆえに弾速は遅く。
けれどもタメが発生しないからこそ、軌道は読みづらい。
「私が無理矢理押さえますっ!! その間に……!!」
「無理に決まってんだろ!! この気色悪ぃ怪物がいる限り、防戦一方だ!!」
「ぅうむ……、あの服相当の硬さ……。ダメですね、私の矢では刺さりません」
この二つの武装が式装と示されたのは幾つかの理由があるが、一番の理由として挙げられるのは使用者へのバフだろう。
黒狼が着羽織る装備は防御性能を重視した被膜性の鎧、これは元々の使用者が自身の防御性能に不足を感じた上で動きを阻害しないように仕立てた代物だからだ。
しかしこの形式は防御性の高さのみを重視しており基本的に優秀な装備であるとは言えない、防具とは守るために存在しているのではなくバフを与えるために存在しているからこそ。
防御性能に尖った防具は、はっきり言ってカスである。
「『踏み込み』ッ!!」
モードレッドが動いた、無理矢理にも『ミリオネアの信徒』の間を抜けモルガンに迫る。
モルガンの近接戦闘能力は決して高くない、距離さえ詰めてしまえば畳みかけられるに決まっているはず。
身勝手な推測から導き出したその行動は自分勝手でありながらも、一時的に硬直していた状況が変化する。
モードレッドが持つ剣は王剣『クラレント』であり、聖剣ではないながらも長年の契りによって構成された一種の呪いがダメージを大きく底上げしている。
ダメージ数値421、しかもコレは防御数値をある程度無視するため下手な通常攻撃よりも遥かにダメージが高い。
今の一般的なプレイヤーステータスが1000~1500前後とすれば4回ほど当てれば軒並みのプレイヤーは死ぬと推測できる、実際に与えられるダメージはもう少し減少するだろうが防御力の低いモルガン程度であれば10回も当てずに殺せるはずだと推測し。
そしてその推測は正しい、本来ならばモルガンを殺すのが最適解となるだろう。
しかし、式装『冥土』を装備している状況であるのならばこの評価は逆転する。
「『マジックブースト』『体当たり』」
「な、クソ!! テメェ、近接攻撃はからっきしじゃなかったのか!!」
「やはり頭が少し弱いですね、モードレッド。私だって体当たりぐらいはできますよ、さすがに」
大前提として、いくら近接攻撃が苦手だったとしても体当たりぐらいはできる。
そしてどんなソフトタッチな攻撃をしても、スキルを用いれば小さいダメージは発生し。
またダメージの参照値を込めた魔力量に変換する『マジックブースト』を利用すれば、そのダメージは遥かに向上し。
そもそも式装『冥土』は、魔力属性による攻撃力を遥かに向上させる鋼鉄製装備だ。
全身で体当たりをしながらマシンガンでより加速させる、重量は121㎏にも及ぶ体当たりはモードレッドの攻撃によるダメージを相殺したうえでダメージを与えた。
そのうえで浮遊魔術を展開、モルガンは姿勢を崩さず即座にガトリングで追撃を叩き込む。
装備による姿勢制御にステータスの補助も相まって細かい動きのリカバリーも完璧だ、雪崩のように打ちこまれる攻撃は重くないながらも数による製圧力で微小なダメージを積み上げる。
反撃を行う余暇は、ない。
「……危ないところでしたね、サー・モードレッド」
「チぃ、トリスタン。私は大丈夫だってぇの!! オメェはアイツ等の邪魔を優先しろよ」
「悲しい……、私は悲しいですサー・モードレッド。それに、……出来るならしています」
「お? 分かってるじゃない、『メテオストライク』」
ワルプルギスと直接の魔力パスを繋いでいるのは黒狼だ、黒狼だけがワルプルギスの無制限の魔力を供給される。
モルガンはルビラックスによる魔力補助を受けているため早々に魔力切れでダウンすることはあり得ない、しかしロッソは違う。
心象世界も無制限の魔力も、チートと言える力は何一つ存在しない。
だがしかし、そんなチートなど必要ないほどにロッソという錬金術師は完成されている。
「私のフィールドで戦う、その意味を教えてあげる」
降り注ぐは流星? いいや、流石の天才たちでも宙域に干渉することはできない。
それが出来るのは北方の怪物じみた人間以上の存在、自己進化の末に上位種族へ変貌した化け物たちでなければ成立させることすら難しいだろう。
だが一時的に領域を、世界を結界により孤立させ魔術により観測結果を塗り替えることで起こす揺らぎ。
それによる現象の再現ならば、不可能ではない。
「『演算開始』」
世界はスーパーコンピューターである、と仮定する。
いや実際にする必要もない、だってコレがゲームであるのならば世界は演算装置でしかない。
だから自分が描いたコマンドを入力し演算装置にそのコマンドを読み込ませ、世界を改変すればいいのだ。
簡単な行為と言い切るつもりなどない、実際にその難易度は高いだろう。
だが魔術を使うというのならばそれは皆が平然とやっていること、術式の形成とはすなわちコマンドプロンプトの実行である。
その規模を少し、大きくしたのがコレであるというだけで。
「黒狼の『始まりの黒き太陽』を参考にした魔術、権能に近い代物よ。アレは神話の太陽を顕現させる現実改変がなされているけどコレは違う、そんな大逸れたことはしていない。ただ、現実を少し私に有利な環境へと書き換えただけ」
高位の魔術師による戦闘は、環境の書き換えによって始まる。
半透明の仮想構成物の下、両肩に二門の砲台を掲げ全身を金属のゴスロリで着飾ったロッソは右手に杖代わりの魔術的端末を握る。
錬金術師の神髄、ウィッチクラフトとしての本領を見せつける様に。
「全く思ってないけど先に謝っておくわ、だって貴方たちの武器の力を封印させてもらったのだから」
ハッと慌て各々が自らの武器を確認する、残酷なことにロッソの言葉は真実だ。
この領域内にある全ての聖剣は機能を停止させられ、すべての効果は対抗術式によって発動を阻害されている。
キャメロットは確かに強く、13円卓は史上最強の一角を担うに相応しいだろう。
だが所詮は黒狼以下の烏合の衆、そう言わんばかりに笑みを浮かべロッソはトリガーを引く。
次の瞬間、目も眩む光の濁流が流れ出した。
(以下定型文)
お読みいただきありがとうございます。
コレから『不死王』黒狼、および『黄金童女』ネロや『妖刀工』村正、『ウィッチクラフト』ロッソ、『黒の魔女』モルガンの先行きが気になる方は是非ブックマークを!!
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