Deviance World Online ストーリー7『空間規定』
式装肆式『レーザー砲』、黒狼が天使砲と呼ぶその武装が何故準古代兵器と比類可能だと思ったのか。
様々な理由が隠されているものの、単直に言えばその兵器が宇宙空間に在住する対艦用兵器として作成された2600年代の衛星砲台『Ἁρμονία』の機構を魔術的に再現した代物であるからだ。
調和を意味する『Ἁρμονία』は衛星内に存在する248基の核融合炉によって生み出されるエネルギーを放射する国際兵器であり、使用回数は3回ほど。
熱暴走によって自己崩壊を起こし、そのまま惑星軌道上に破棄されたとはいえ実際に利用された経歴があるほどに列記とした兵器であり最近設計図が公開されたモノ。
その放射部分のみを小型化と魔術的に再現した結果に完成したのがこの式装肆式『レーザー砲』、そもそも元ネタからして防御不能として作成されたこの兵器は爆発的な熱とエネルギーによるダメージによって驚異のDPS821を達成。
そしてこの放射攻撃はなんと1000MPで10秒間も継続する、実質的には8210ダメージを叩き出す脅威の代物。
もちろん使用するMPが増えるほどダメージは跳ね上がり、理論上は無限にダメージが増えることだろう。
実際には砲身の冷却などの術式が絡む影響で最終的に秒間消費MPが872になったので無限にダメージが上昇することはないだろうが、理論上に現実を持ち込むのは野暮と言ったところだろう。
「『パラディン・シールド』ッ!! 『クロス・ルミナス・アーク』!!」
完璧なタイミングで万全に叩き込まれた、だが残念なことに円卓の騎士は。
キャメロットはその万全を防いでくる、故に13の円卓の騎士であるのだから。
ギャラハッドが大きな盾でその放射を受け止める、防御に特化していないアグラウェインですらスキル『パラディン・シールド』で黒狼の『始まりの黒き太陽』を上乗せしたマグナムによる『黒き太陽』ですらブーストを過剰に用いなければ突破は不可能。
少量のダメージを叩き込む『レーザー砲』ではこの防御を攻略できないのは必然であり、だからこそ動く猶予が生まれる。
『レーザー砲』はその性質上動くことが出来ないというのと同じように、『パラディン・シールド』もまた使用者は動くことが出来ない。
生まれた膠着状態、先ほどの牽制によって生まれた物でなく力と力の相殺で生まれた膠着状態はもう一人を遊ばせる。
『黒の魔女』モルガンはガトリングを両手から手放し、勝手に背中へ動くのを感じつつ魔杖『ルビリックス』を構えた。
古来より空間を操作する力はメタられやすい、様々な理由があるとはいえ作劇的に扱いづらいからだろう。
だからと言ってだ、それは現実ではないフィクションであるから。
実際に空間操作などという大逸れた行動をされれば、真っ当な存在では対処が不可能。
そしてモルガンは練り上げた、この魔術を詠唱破棄で扱えるようになるまで。
「死なない様に、『モルゴース』」
湾曲する空間、今なら詳細に描写できる。
かつてエキドナの腹部を空間ごと湾曲させ部位欠損を巻き起こしたその魔術は、練度を上げることでより緻密に正確に世界を変化させてゆく。
歪む世界、ガラスに罅が入り鏡が砕けるような錯覚。
脳内の認知すらも追いつかない、空間という高次を操る魔術の頂。
その本懐は、世界に触れる腕である。
空間の連続性、直線の証明を右腕で歪め『そうであるべき』という正解を正解として保持したまま『そうではない』という解を成立させる。
実際に起きているのは湾曲した鏡に映る歪んだ世界の再現に等しく、実際の距離は視認できる距離よりも遠く近い。
そのうえで空間自体がリボンを結んだように交差しているため、下手に動けば自分自身を切断するだろう。
この一部分だけを切り取ればさほど強い魔術とも思えないだろうが、この動きを止める対象は細胞にすらも及ぶのだ。
攻撃の中心、トリスタンの全身が薄く裂ける。
「……やはり、脅威ですか」
大技の応酬、しかし神は細部に宿っている。
鳴らす弓の音、番えた矢は鋭い音を伴い放たれた。
歪んだ空間の内で真っすぐ体を動かそうとしても、斜めの世界で人間がまっすぐ歩けないように必ず転げ落ちる。
それは人間の感覚が視覚や聴覚感覚、果てに味覚まで関与し世界を認識しているからだ。
だから真っすぐ動いていると錯覚し、空間の捻じれに対応できず自らで自らを破壊する。
トリスタンはソレを理解しながら、歪んだ空間の内。
認識が通用せず自らを傷つける最悪の空間で、矢を放ったのだ。
「円卓、トリスタン風情が。己の弱さを、己の恥を知りなさい」
「追い詰められてるじゃない、手助けは必要かしら?」
「一切不要です、貴方風情に助力されるほど私は弱くありません」
右肩を撃ち抜かれた、想定内でありながら十分に最悪だ。
射貫いてきた矢を引き抜き、溢れる血液を手で受け止めながら回復魔術を発動する。
そのまま無理矢理に傷つきながら迫るモードレッドを空間魔術で飛ばし、防御魔術によって自らを守る。
短期決戦は厳しいことなど分かっている、一先ずの最高出力は出し切った。
そのうえでコレが結果であるのならば短期的な決着は望めないだろう、辟易とはするが安心もある。
一方的に負ける心配はなくなった、時間を稼ぎ削り切るのはできないわけもない。
対等、その言葉の軽さと重さを二人は互いに再認識し。
そのうえで、もう一つの策謀を巡らせる。
「別段、私は貴方たちを害する気はないのだけれど。全くひどい話ね、善良な一般市民を急に襲ってくるなんて」
「よく言うぜ、テメェが善良な一般市民だって!! ソレが罷り通るのならすべての罪人が監獄からあふれ出る!!」
「罪は立証されなきゃ罪じゃない、推定無罪の原則を学ぶべきね」
地面を溶かし固め、即興で制作せしめた斧を叩きつける。
モードレッドはソレを王剣でガードし、キツく睨らみつけた。
牽制代わりに放たれた攻撃だ、重いわけもない。
受け止めることも難しくなく防御も容易くできる、そう分かっていて放たれた攻撃は唯舐め腐っているという事であり嫌なほどに苛立ちが体を襲ってくる。
だというのに、モルガンが形成した防御術式は余りに強固で突破するに能わないというのがこれ以上なく腹立たしい。
「時間稼ぎ、させてもらおうかしら」
「存分に励むことです、私の魔術を超えられるというのならば」
追撃の悉くを魔術によって無効化する魔女二人、その神業は瞠目すべきものであり。
だからこそキャメロットの彼らからすればより、『何故』という疑問が強いだろう。
何故、戦うのか。
何故、襲うのか。
何故、脅かすのか。
人々の安寧を望むキャメロットへ、黒狼ら『混沌たる白亜』は何故挑むのか。
彼らは今一度困惑している、困惑しながらもアルトリウスの英雄的輝きに脳を焼かれ剣を振るう。
だからこそ、そこに付け入る隙があるのだ。
(以下定型文)
お読みいただきありがとうございます。
コレから『不死王』黒狼、および『黄金童女』ネロや『妖刀工』村正、『ウィッチクラフト』ロッソ、『黒の魔女』モルガンの先行きが気になる方は是非ブックマークを!!
また、この話が素晴らしい!! と思えば是非イイね
「この点が気になる」や「こんなことを聞きたい」、他にも「こういうところが良かった」などの感想があれば是非感想をください!! よろしくお願いします!!




