Deviance World Online 間話『天才』
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ハワードは、天才だ。
座学において天才であった訳でなく、彼はその視点こそが天才のソレだった。
彼が発見したカスルブレホード脳波は時代を一新させ、また行き詰まっていた私の研究を完全に破壊する決定打となる。
生物学など関係なく、人類は進化できない。
私にとってそれは一つの絶望であり、答えだ。
私の研究そのものの否定、溶液に全てを浸し真っ当な生命としての寿命を超過してまで臨んだ種の昇華が元より叶うはずのない望みだったと知った時。
私は手元の資金をかき集め、その天才に会いに出かけた。
「ロッツェさん、人類進化を基盤とする研究の第一人者たる貴方が私を尋ねるとは。それほどまでに、私の発見は意外でしたか?」
意外にも程がある、いやそもそも眼中にすら無かったと言った方が正しいだろう。
この時代、医師という存在は淘汰され果てており。
いやそもそも研究者という存在が、既に時代遅れの産物だ。
全てはマザーコンピュータによって制御され、過不足のない安全性を担保されながら定められた回答に向かって数式を描く時代。
医師も、研究者もまた時代に淘汰された過去の遺産にすぎない。
同じ視点、同じ視座で見れば私たちも有象無象たる顔のない人間のはずだ。
だと言うのに何故彼は、マザーコンピュータの想定を上回れたのか。
ただその一つが、私の持つ疑問であり答えだった。
「最初は些細なキッカケでした、幼い頃に超人に憧れたんです。スーパーマン、あるいは主人公。決まりきった答えを覆す神様に愛された存在、そんな人間を知り憧れたんですよ」
そしてその奇跡こそが不公平だと思った、私と同じように。
この世界が真に万能であれば、この世界が本当に雄大無窮であるのならば。
そんな奇跡に、理由があるのではないかと。
「最初は散々でした、だって私の思うこと全てを貴方がやってるんですから。再検証しても結果は一緒、もう何処か笑えてきます。だから諦めました、その知見を活かして医者にでもなろうと諦めたんですよ。そんなこんなで20年ほど、医師の必要性も欠落し惰性で来る仕事を受けていた時にふと天啓が訪れた」
始まりは一つの事例だった、脳以外の殆どの器官を置換した時に記憶障害を起こし重度の認知症を発症したと言う事例。
最初はそう言うこともあると認識していたらしい、けれども深く考えれば余りにも不可解な事実だった。
人体を一つの機構として認識するときに、脳はその演算処理を行う部品である。
そしてまた脳は情報を記録保存する媒体でもある、つまり人体の全ては脳にあるというべきだ。
だが実際にはそうではなく、肉体を置換すれば大なり小なり記憶の欠損があり少なくないショックが存在する。
情報記録体である脳に触れてなどいないにも拘らず、だ。
「人を人として存続させているのは記憶ではありません、脳に刻まれた情報はあくまで重要性が高い情報だけ。日々の習慣を始め直近248日以内のエピソードしか脳には刻まれない、ですが人間の記憶は一年以上持続し場合によっては80年前の出来事を鮮明に思い出すことが出来ます。一見すれば前説と矛盾しているようで、間違ってなどいない」
記憶は記録、脳は情報を一時的に保存するだけの機構。
であれば記録は一体どこに保存されるというのか、そこにカスルブレホード波が関係する。
いや違うだろう、関係するのではない。
カスルブレホード波こそが人体の最後の神秘を暴くすべての扉となるのだ、宛ら魔術のような。
フィクションのような答えこそ、世界の真実である。
「人間は、波形です」
一次元を点と線、二次元を面、三次元を立体と置く場合より高次に存在するのは何だろうか。
ハーバート・ジョージ・ウェルズによって定義された四次元とは時間だ、時間こそが第四の次元であると明記している。
だが本質的な四次元は全く異なるはずだとも、後年考えられてきた。
何せ我々が存在している三次元の世界は斯くも低次な世界であり、また高次を観測する瞳を我々人類は持たないのだから。
だからこそ、その回答は唯の的外れに思える見解を仮想の数式に代入することでしか得られない。
もう一度、私は述べる。
ハワード・F・ラヴクラフトは、天才だ。
彼は文字通り高次の世界を観測した、人間という存在を僅か二文字に凝縮し証明せしめた脳神経外科医。
そんな彼が発見したxは、世界を革命へと導くヒントとなる。
まるで蒸気機関を発明したかつての発明家のように、人類は新たな革命を得たのだ。
「人は波形であり、脳は肉体にその波形を刻む電子機器です。細胞分裂と自己破壊により不必要な細胞を破棄することで人間は数百年以上をも情報を保存する機構を完成させました、実際にはDNAの不順や外的要因。細胞分裂の限界などから真実悠久を生きることはできませんが肉体の完全性を損なわなければ基本的に有休を生きれます。貴方のように、百年を超え」
そして、また同時に
「カスルブレホード波は同じく、同じ人間やカスルブレホード波を用い情報を保存する人間。そしてこれ自体は推測の域を出ませんがカスルブレホード波に影響を受ける高次の何か。私は、エネルギー的なモノを想像していますが。これに影響を与え自らの望む短期的な理想を現実化する能力を持ちます、想像の域を大きく出る事は在りませんがおよそその影響範囲は半径3キロ前後でしょうか。バタフライエフェクト的に細かなエネルギーを変動させ、其々のベクトルを微調整し。例えばサイクロンなどの巨大なエネルギーの塊を誘導したり雨雲などの流れを微細に変更することが出来ます。もちろん、人間の気紛れとでもいうべき思考回路などにも影響するでしょう。今研究されている同一性仮想現実が成功すればきっと、この問題が証明されるはずだ」
絶望だった、何処までも愉快であり不愉快だ。
だって無駄なのだから、オカルトとして忌避した非現実的なモノの全てがこの波形で解決する。
人は炎を生み出せるし空も飛べるだろう、それだけの物理的な理由を与えれば決して不可能ではない。
もしも万物に変貌するエネルギーがあるのならば、この波形とソレが組み合わさればすべては理屈の上で解決しない圧倒的な矛盾を内包する。
その矛盾を成立させられるほどに人類が完璧であるのならば、私の研究である人類の昇華など達成されない。
達成できる、はずがない。
彼との会話は一日中続いた、互いの知見を交換し短い時間で私の全てを超える答えのようなものが与えられたのは喜びであり吐き気を催す災いとなる。
また私もカスルブレホード波を研究し、人類の昇華を目的としたすべての研究に最終的な見切りをつけたのはそれから70年後ぐらいだろう。
意図的にやめたというよりは自然消滅の方が近しい、半ば惰性でつづけた研究は明確な成果を得られず先に研究資金が底をついたのだ。
もとより宇宙に存在するコロニー1つを買い取り研究していたのだから莫大な予算を食いつぶすのは必然であったが、生産した人型生命体の維持費が嵩んだのも大きな原因である。
割と投げやりな気持ちで自堕落な日々を過ごしていた日々、まぁそんな折に一つの話が舞い降りてきた。
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