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Deviance World Online 〜最弱種族から成り上がるVRMMO奇譚〜  作者: 黒犬狼藉
二章上編『終わらぬ夜の暗月』

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Deviance World Online 間話『騎士王の憂鬱』

 アルトリウスは、嫌な予感に苛まれている。

 王城内にいるNPCを可能な限り撤退させた、反対の声も大きかったが王女の助力もあり主要貴族以外は全員自領地に帰還しており。

 キャメロットの警戒態勢も万全だ、現状どれだけの物量で攻められても完全に落とすことは不可能だろう。

 裏切り者の可能性もあるが、そこまで疑い始めれば切りがない。

 プレイヤーの行動を律するのは如何にカリスマがあると言えど、不可能なのだ。


「サー・アルトリウス、様々なプレイヤーを手配し城下町の安全を確保しました。……ですが本当にここまでする必要があるのですか? あの戦いの宣言から1か月以上も経過し、彼らも通常プレイにいそしんでいる様子が見られます。また内部分裂もありました、この状況で私たちを攻撃するようには……」

「安心してほしい、僕も同じ意見だ。冷静に、理性的に考えれば絶対にありえないだろう。けれど僕が彼の立場なら今この瞬間を狙う、()()()()()()()()。気を抜かない方がいい、必ずだ」


 不気味なほどに警戒しているアルトリウスへ呆れたような顔を向けつつ、騎士の一人はそのまま廊下を通り過ぎる。

 イベントが終了して10分経過、嫌な予感は刻一刻と増大している。

 どこかで、何かが手遅れになっている気がして仕方がないのだ。


 焦りを含んだ足はいつの間にか宝物庫の前に迫り、そこにいる王女を見て止まる。

 王女ギネヴィア、血盟(クラン)キャメロットの盟主であり盟約の締結者。

 実質的なキャメロットの心臓とでもいうべき彼女が、宝物庫の前に立っていた。


「アルトリウス様、先ほどの戦いはお見事でした。ふふ、貴方の素晴らしい戦いを見れたのは本当に良かったです」

「……ああ、それは僕としても光栄だ。王女たる貴方からのお褒めの言葉を頂けるとは、聖剣のお陰とは言えどもその言葉は本当に嬉しくて溜まらない」

「おや? どうされたのですか、少し気が立っているように見受けられますが……」


 直観が、感覚が、全身の全てが不愉快な感覚に浸されている。

 それは王女の言葉に対し上の空で返さなければならないほどであり、視界に映っているはずの落とし穴を認識できない様子宛ら。

 左手は自ずと鞘に掛けられ、いつしか右手は何かを掴むように虚空を彷徨う。

 どれだけ考えても確実に言えることがある、どこか何かがオカシイのだ。


「すまない、ただどうしようもなく不安があるだけです。何か、拭えない違和感が……。もうすでに手遅れになっている、手遅れになろうとしているような違和感があるのです」

「違和感? ここはグランド・アルビオンの中で最も堅牢な王城です、外敵がいるのであったとしてもこの城を崩すことなどできません」

「ええ、ですがもし内敵が存在しているのであれば如何に堅牢な城といえど砂塵の楼閣だ。プレイヤーが裏切っているのならばまだいいが……、いやこれ以上の予想は侮辱ですね」

「まさか貴族の者たちが裏切っているとッ!! いえ、ですが聖剣に選ばれた貴方の直感です。もしかすれば本当に……、恐ろしい話ですが可能性としてとらえておきましょう」


 顔を歪めるギネヴィアを見て益々不安が増大する、指示を出すため足早に変えた彼女を見送ればアルトリウスはさらに足を進めた。

 場内はいつも以上に静かであり、不吉な騒々しさが残っているよう感じられる。

 見慣れた世界が見慣れていない空間に置き換わっているからこその不気味さ、付け加えればこれ以上なくアルトリウスの直感が指し示しているのだろう。

 もうすぐ、事件が発生すると。


「……ふぅ、ここに来るのも随分と久々だ」


 いつしか足は王城最外郭、28の魔術塔のうち現在封鎖されている湖を冠する塔へと向けられていた。

 すなわちモルガン・ル・フェイが居座っていた研究所へ、彼女が残した爆弾が残る最奥に。


 アルトリウスは無知である、そして自らが無知であることを自覚している。

 この国家の成立をアルトリウスは知らない、この世界の秘密を最奥をアルトリウスは把握しておらず。

 そしてアルトリウスはソレを知ろうと、していない。


「けどそれもいよいよ限界かな、無知の徒であり続けるのはいい加減不可能らしい」


 聖剣に光が宿る、すべてを無に帰す極光が輝きを増す。

 騎士としては行う事を思案する時点でダメだろう、だがアルトリウスが掲げる正義は『万人の安寧』そのもの。

 その為にはあらゆる彼我を、その汚泥の罪をこの身にかぶろう。

 故に彼は騎士王であり、聖剣の担い手となったのだから。


「『エクスカリバー』」


 それは目を焼く極光でありながらこれ以上なく優しい月光であった、すべてを許容し否定する仮想の輝きであり実在の不在証明そのもの。

 幻想はこの光の内で成立しえない、何せこの属性は属性として成立していないのだから。


 仮想属性、それはこの世界からすでに失われた技術によって成立する唯一の属性であり属性ではない。

 事象を端的に説明するため名前を付けただけの架空の品物、3種以上の属性が僅かな空間に重なり合い自壊することで発生する魔力の結合性を崩壊させる魔力。

 それはほか一切の干渉を受けることがなく、実在するだけですべてを崩壊させる破滅の力であり。

 けれどもアルトリウスが担うその聖剣はただ月の力に導かれ、王を待つ光となった。

 その属性に名前はない、けれど名前を与えるとするのならばその属性は『月光属性』というべきだろうか。


 それを放射しない、本来の使い方である光線としては用いず周囲の空間に満たすだけに留める。

 ただそれだけで発動中の魔術をかき乱し無力化することが出来るのだ、月光であり仮想であるその聖剣の輝きは誰にも阻まれることがないからこそ。

 魔女のたくらみは、あっけなく崩れ去ることだろう。


「さて、君は一体何を隠そうとして……。なるほど、そういう事か」


 アルトリウスは驚き、そして展開された術式により一層警戒を強める。

 カウンターとして展開された術式の内容、察するに外敵侵入を察知し発動する類の物だろう。

 しかしこの術式は通常の侵入で発動することはない、この術式を封じ発動させないようにする術式が存在していたからだ。

 それをこの一瞬で理解したアルトリウスは少し驚き、そして理解する。


「そこまでして隠したい物がある、そう言っていると理解していいかな? これは。『ウィッチクラフト』のロッソ、さん?」


 そして基本的にギミック型の魔術であっても、発動待機中の術式であってもソレが魔力のみで運用されるのであれば月光属性で消失する。

 つまりこれは物理的に描かれた術式であり、それはモルガンの管轄でないことを示していた。

 加えもう一つ、この術式を無力化したことで増えた魔力源へ地面に転がっている石ころを投げつけ。

 直径わずか5mmのエクスカリバーを放ち、粉砕する。


「悪いね、僕はキャメロットの主としてこの先を知る必要があるんだ」


 現れるのは人造魔獣(ホムンクルス)、転移魔術で大小問わず100体を超える数のモンスターが送られている。

 ヤレヤレとため息を吐けば、アルトリウスは改めて聖剣を握りなおした。

 示しているように、すべてを圧倒する威圧感を放ちながら。


 騎士王の戦いは、ここからであると。

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