災餓の謳歌編 ⑥
連続更新36日目
少しペース戻すわ
「…………何故分かった同胞よ」
「妾はお主と同じダンジョンの主故な。
…………偏に主と言っても妾は純然たるダンジョンのマスターであり力を完全にものにした存在だがな」
「答えになっていない同胞よ。
マスターとはいえ魔眼持ちではない身に何故看破出来る」
「はぁ……言ったであろう?妾はダンジョンの力を完全に物にしたと。開けたり閉じたりも自由に出来る。
ならば他者のダンジョンに干渉するなど容易という事よ」
葬盛の奴いつの間にそんな事を?!?!
むぅ!
悪魔族もかなり出鱈目な存在だと自覚していたがダンジョンのマスターの中でも上位存在であろう葬盛は輪を掛けて出鱈目だな
「貴様は同胞の中でも随一の化け物だ」
「して、空を翔ける神話よ
先程聞いた理由の答えを聞かせてもらおうか」
「…………」
「この葬盛の主である私からもお願いしたい。
それに理由次第によっては人類に対して不利益があるかもしれんのだ。貴様らダンジョンの主達の目的はあくまでも襲い来る侵入者の排除であって人類の敵ではないはずだ。
だからどうか話して欲しい」
「まるっきり部外者な俺からも頼む」
南坂は地面に膝を付き頭を下げた。
大袈裟だが南坂は昔からモノを頼む時必ずこの土下座スタイルなのだ。
相手の罪悪感を揺さぶりこちらの要求を通しやすくする交渉術。
なのだがこいつは交渉とか関係無しにストレートに頭を下げるから私とて罪悪感が生まれる。
そもそも交渉云々を考えるほど頭が良くないんだな南坂は。
「何なんだこの人間は……なりふり構わずか?
…………えぇい!!頭を上げろ!見ていてイライラする!理由を話すからさっさと立てぇ!」
要求が思ったより素直に通った?!
やはり南坂のキャラがする土下座は効果があるのか?
「簡潔に言うし何度も言うつもりはない、いいな?」
「構わん」
「「あぁ」」
一息つくと目の前のダンジョンボスは答えた。
「理由は単純自我に目覚めたと言ったな?あれば間違いではない曖昧なのも何の間違いもない。
何と言うべきか……………………性格、が定まっておらずただダンジョンのボスとしての本能、つまり侵略者の排除だけが優先実行された」
「ダンジョン内にいるモンスター……言わば貴様の部下のようなものだ。それらを殺した理由は?」
「性格が定まっていなかった影響かは知らんが排除対象が人間からダンジョン内のモンスターだっただけだ。
もちろん今は直った。しっかりと排除対象は人間だ。
何故私が自我を獲得するのに他のダンジョンとは違い時間を浪したのかは分からんが恐らく本来の私になるはずだった結末に横槍を入れられたのだと推測する」
「「「横槍?」」」
3人一緒に同一の反応を返す。
そして葬盛の顔が一気に変わる言葉が紡がれた。
「誰かかは知らんが本来の私になるはずだった結末を歪めた。
歪められてしまった。幸いにも何かに支配されずにすみ奪われる想定であったであろう私の力は健在所から逆に支配をして力を増している」
「っ!!!!!それはっ!」
口には出さなかったが葬盛の心の中で「それは今の私が生まれた経緯と似たっ?!」と絶句していた。
酒呑童子や茨木童子は純粋培養のダンジョン・ボスならのマスターへ成り上がった存在。
対して葬盛は何処かで歪められいくつもの適合する伝承のエッセンスを無理矢理与えられた存在。
いわば目の前のダンジョンボスは自然のボスであり葬盛は人工に近い。
外部からの力を無理矢理与えられて歪んだならば人工になるが完全に自分の物にして結果的に歪んだ、変質したボスは人工と言えるのか?
分からない。
正直学生誘拐の話より規模の重要とも言える爆弾を見つけたのは葬盛含めて2人目。
慎重に対応しなければならない。
葬盛と同じ存在ならば戦力になるやもしれん!
どう交渉を──────
「あぁ名前を言うのを忘れていたな。
私の名前は紅空漸々《くのそらぜんぜん》。このダンジョンのマスターとしてようやく生を授かった者だ。
何故この名前が咄嗟に口から出たのかは分からないが……恐らく意味があるのだろうな。
精々恥じぬよう……生きるとしよう」
少しだけ周囲の重力が増したように感じる。
それだけプレッシャーが強いという事か?
「今は世界で異変が起こっている。ダンジョンの中に現れるダンジョン外から来たモンスターと会った事はないか?」
「ダンジョン外のモンスター?……確か3体ほど始末しましたね」
3体も?!
強さはこのダンジョンのボスならば余裕だろうがそれよりも3体もここに来た事が異常だ!
イリーガル種が現れたダンジョンは一体現れて以降別の個体は現れていない!
それなのにこのダンジョンでは3体だと?!
何かあるのか?
それとも目の前の男、紅空漸々と名乗る存在に何か秘密があったりするのか?
分からん
謎だらけだ!
「すまないがもう少し話を聞きたい。
ダンジョンを閉じろとは言わない、ただダンジョンの外に出て少し私達の事情に付き合って欲しい」
「断る」
迷いなく私の言葉を拒絶する。
「理由を聞いても?」
「対価が欲しい所だが……まぁいい話してやる。
私はね……このダンジョンの中から出られないのだよ。出たくともね」
「っ!それは貴方の事情か!それともダンジョンの事情か!」
「その両方だ。
まず俺の事情はどこの誰とも知らぬ女共の言う事を聞くつもりはない。俺以下の奴の言う事は聞かん。
そしてダンジョンの事情、それは制約」
「制約……なるほど。
少し分かった」
「聡いな。
恐らく想像している通り私は一度負けないと外に出られない制約がある」
「私が欲しくば勝って見せろ」
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