表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
両片想いでラブコメで!~想い人一筋なのに、隣人の金髪碧眼美少女がやたらとちょっかいかけてくるんだが?~  作者: 咲来青
第6章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

98/156

第1話 東雲、エントランスで三名を待つ

 二階のイーリスの部屋を出て、結太と桃花、そしてイーリスが、階段を下りていると、


「おっ。やーっと来たか、お三人方。なかなか下りて来ねーから、今、呼びに行こーとしてたとこだったんだぜ?」


 東雲がエントランスから上を見上げ、結太達に声を掛けて来た。

 結太は慌てて、


「あ、ああ――、ごめんトラさん。トイレの他に、日焼け止め塗り直したりもしてたからさ」


 言い訳がましく告げた後、ニカッと愛想笑いを浮かべる。

 東雲は両手を腰に当て、『日焼け止め塗んのに、そんなに時間掛かんのかぁ?』と呆れ顔だったが、三人は曖昧(あいまい)な笑みを浮かべて聞き流した。


「ま、いーけどよ。――サギと国吉さんは、下準備もあるってんで、先に海に行ってる。午後からの撮影は、ただ突っ立ってるとか、ポーズ決めてりゃいいってだけのものより、動きの指定のあるもんが多いらしいからな。気力もだが、それ以上に体力使うだろーし、覚悟しといた方がいいぜ?」


 ニヤニヤと笑いながら、東雲は先に立って歩き出す。

 三人はうんうんとうなずきつつも、その実、彼の話はろくに聞いてはいなかった。


 ――東雲には申し訳ないが、無理もあるまい。


 結太と桃花は、イーリスから衝撃的な事実を知らされたばかりだったし、イーリス自身も、〝残り少ないであろう日々を、どう過ごすか〟ということで、頭がいっぱいだったのだ。


 特に、結太と桃花は、イーリスから『恋がしたい』『恋人とイチャイチャしたい』という願望を告げられ、それらを叶えるために『協力して』とまで言われている。


 協力するのは構わない――と言うか、喜んで協力してあげたいとは、二人共に思っているのだが。

 何せ、二人に課せられた役割が、面倒と言うか、ややこし過ぎて、上手くこなせる自信がなく、思い悩んでいるのだった。




 イーリスに『恋がしたい』と言われた時には、



(『恋がしたい』って……えっ、これから!?)



 相手探しから始めなければいけないのかと、一瞬ヒヤッとさせられた。

 しかし、イーリスから詳しく話を聞いたところ、相手は既にいるとのことで――。


「えっ!? それって、もしかして……!」


 結太は口には出さなかったが、心の中では『オレ!?』と思っていた。


 仏頂面(ぶっちょうづら)コンプレックスの他にも、様々な〝自信の持てない〟部分がある結太にしては珍しく、思い上がった認識だったが。

 病院で、たった一度会っただけという、結太のいる学校へ、イーリスはわざわざ転校して来たのだ。自惚(うぬぼ)れる理由としては、充分だったろう。


 だが、彼女から打ち明けられた〝想い人〟は、彼の認識から大きく外れた人物だった。

 彼女のボディガードである、国吉。彼が、イーリスの片想いの相手だったのだ。


「ええええッ!? 国吉さん!?」


 結太は心底ビックリし、大声を上げてしまった。


 その一方、桃花はすごく冷静で……。

 そればかりか、『やっぱり……』とつぶやいて、なんと、納得したように、大きくうなずいていた。


「えっ?……伊吹さん、驚かねーの?」


 意外に思って訊ねると、桃花は優しく微笑んで、


「うん。なんとなくだけど……そんな気がしてたから」


 そう言って、再びうなずいたのだった。



(噂には聞ーてたけど、やっぱ、女の勘ってすげーんだな!……いや、伊吹さんだから気付けたのか? それに比べて、このオレは……)



 イーリスの思わせぶりな態度に振り回され、てっきり自分かと思っていた結太は、恥ずかし過ぎて、深い穴でも掘って、閉じこもりたい気分になった。



 更に驚いたのは、イーリスの十六歳の誕生日に、告白も済ませている――という事実を知らされた時だった。

 さすがにこれは、結太だけでなく、桃花もすごく驚いていた。


「えっ、告白って……。じゃあ国吉さんは、イーリスさんの恋心を、知ってるってことですか? 知ってて、ずっとボディガードの仕事を……?」


 桃花の質問に、イーリスは面白くなさそうに顔を歪め、こくりとうなずく。


「ええ、そーよ。思いっきりアタシを振った後も、ケロッとした顔して仕事出来るんだから、憎らしいったらないわよね。……でも、まあ……『辞める』って言い出しそうだったのを、アタシが先回りして、ストップ掛けたよーなものだけど。義父(ちち)に、『国吉を辞めさせたら絶対許さないし、二度と口利かない』って伝えておいたから、辞めたくても辞められないだけなのかもねっ」


 吐き捨てるように言った後、腕組みして仁王立ちしているイーリスは、プイッと横を向いた。


「……そう……だったんですか……。でも、お義父(とう)さんにそんな言い方したら、国吉さんのことが好きなんじゃないかって、疑われてしまうんじゃ……? お義父さんは、イーリスさんの気持ちは知らないんでしょう?」


 そこまで桃花にツッコまれるとは思っていなかったのか、イーリスはむうっと口をとがらせ、


「もちろん、知るわけないわ。知ってたら、即、首にしてたんじゃない?……何せ、『娘に手を出したら殺す』って、国吉も言われてるみたいだし?」


「えええっ?」

「こっ、こここ殺すッ!?」


 もちろん、釘を刺す意味での言葉だろうが、〝殺す〟というワードの過激さに、二人は戦慄(せんりつ)した。

 二人の反応を見たイーリスは、焦ったように、


「だっ、ダイジョーブよ! 義父にアタシの気持ちを覚らせるなんてゆーヘマはしないわ。国吉を辞めさせたくないわけも、ちゃんとごまかして伝えてるから、何の問題もないわよ!」


 そう言い足し、自らも納得させるように、うんうんと何度もうなずく。

 結太と桃花は顔を見合わせ、



(……でも、おやじさんからそんなこと言われてるんだったら……)


(国吉さん、ますます……イーリスさんの気持ちを受け入れるなんてこと、出来なくなってるんじゃあ……?)



 それぞれ思いつつ、う~んと唸ってしまった。



 イーリスの恋を応援したいという気持ちは、もちろん、変わっていない。

 しかし、それを叶えてあげることは、『想像以上に難しい』ことに気付き、気安く引き受けてしまったことを、二人共に後悔し始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ