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両片想いでラブコメで!~想い人一筋なのに、隣人の金髪碧眼美少女がやたらとちょっかいかけてくるんだが?~  作者: 咲来青
第5章

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第21話 桃花、国吉についてイーリスに訊ねる

「あの……ひとつ、訊いてもいいですか?」


 イーリスの話を聞き終わると、驚きの声以外は沈黙を貫いていた桃花が、恐る恐る口を開いた。

 イーリスは桃花に目をやり、小さくうなずく。


「ええ、いいわよ。なーに?」


 桃花は数秒ためらった後、


「このことって……国吉さんは、ご存じなんですか?」


 イーリスと視線を合わせ、心配そうな顔つきで訊ねた。


 国吉の名を出したとたん、イーリスの顔に暗い影が差す。

 彼女はふいっと顔を背け、


「さあ、どーかしら。……一度、アタシに何か隠してることがないかって、訊いてみたことはあるんだけど……『何のことです?』って、逆に訊き返されちゃったし」


「――っ!」

「あ……っ」


 イーリスの言葉で、結太と桃花は、あることを思い出した。


 夜、貝殻とシーグラスを、拾い直しに行った時のことだ。

 途中、誰かが近付いて来るのに気付いた二人は、とっさに灯りを消し、岩陰に隠れたのだが――。


 そこに現れたのは、イーリスと国吉だった。

 あの時、確かイーリスは、国吉に向かって、


「いー加減、白状しなさいよ国吉ッ! アタシに、何か隠してることがあるでしょ!?」


 苛立(いらだ)った様子で、そのようなことを訊ねていた。


 結太と桃花は、ちらりと視線を交わし、『あの時のことだ』と確認するかのようにうなずき合う。

 イーリスはそれに気付くと、


「なーに? うなずき合ったりして……。国吉がどうかしたの?」


 怪しむように、二人をじーっと見つめた。


「なっ、何でもねーよ!」

「は、はい。何でもないですっ」


 慌てて首を振ってから、再び視線を交わしてうなずき合う二人に、スッキリしないものを感じながらも、イーリスは『まあ、いいわ』とスルーした。


「とにかく、国吉が、アタシの病気について知っててるかどーか、真相はわからないけど……。知っててもおかしくない――ってゆーか、知ってるに違いないって、アタシは睨んでるわ。だって、国吉と義父(ちち)は、大学時代の先輩後輩だって聞いてるし、たまに義父の愚痴を聞いたり、相談に乗ったりするのも、仕事のひとつのようなものだって、漏らしてたことがあったもの。絶対、聞いてるに決まってる。……なのに、ああやってしらを切って……」


 悔しげに唇を噛み、イーリスは両拳をギュッと握る。


「絶対、義父から口止めされてるのよ。病気のことについては、何もしゃべるなって。……まったく。チャラチャラしてるように見えて、そーゆーとこはきっちりしてるんだから。ほんっと厄介(やっかい)な男だわ」


「……でも、そーゆー人だからこそ、イーリスさんも信頼してるんですよね? 軽はずみに秘密を漏らしたりしない、誠実なところを……?」


 桃花の言葉に『うっ』と詰まると、イーリスは頬を染め、


「ま、まあ……そりゃあ、簡単に秘密を漏らしちゃう人間なんて、側においておけるはずないけど……。義父だって、信頼のおける人間だって思ってるからこそ、何年も(やと)い続けてるんでしょうし……」


 モゴモゴ言いつつ腕を組み、照れ臭そうにそっぽを向く。



 なんだかんだで、イーリス自身も、心から信頼しているということなのだろう。

 信頼しているからこそ、『正直に話してほしい』という自分の願いより、『黙っていてくれ』という義父の願い(この時点では想像に過ぎないのだが)の方を優先する国吉に、寂しさを覚えてしまうのだ。



「病気のこと、義父に直接訊くことは出来ないし……訊いたとしても、たぶん、はぐらかされちゃうと思うし。だからもう、確かめるのは諦めることにしたの。叔父さんに泣きながら頼んでたのに、渡欧(とおう)する様子もないところを見ると、名医の叔父さんにすら、治せる見込みがないほど、病状が進んでしまってるってことなんでしょうしね。……とにかくこの夏は、体の限界が来るまで、めいっぱい楽しむことに決めたのよ!……最後の夏に、なるかもしれないから――」


 宣言するように言い切った後、イーリスは睫毛(まつげ)を伏せ、ポツリとつぶやく。


 結太と桃花は、彼女が余命いくばくもない状態などとは、未だ信じられなかったが……。

 イーリスから聞いた、彼女の義父の様子が、冗談などではないとしたら、やはり本当のことなのだろうと、暗い面持ちでうつむいた。



 それに、先ほどから何度も、イーリスの悪戯(いたずら)だった場合や、ドッキリだった場合を、考えてみてはいるのだが。

 それでもどうしても、こんな質の悪い嘘を選ぶなどとは思えなかったし、思いたくもなかった。


 確かにイーリスは、〝お騒がせ少女〟ではある。それは間違いない。

 しかし、その点を考慮しても――友人たちに対して、ここまで悪趣味なドッキリを仕掛けて来るような、悪質な人間であるわけがないのだ。


 結太も桃花も、そういう意味では、イーリスを心から信じていた。




 結太はある決意を胸に抱くと、顔を上げ、涙ぐみそうになるのを必死に堪えながら、イーリスをまっすぐ見つめると。


「よっし、わかった! 今年の夏はみんなで――〝面片会(おもかたかい)メンバー全員〟で、思いっきり楽しんでやろーじゃねーかッ! これでもかってくれー……『もーいーや』って言いたくなるまで、遊び尽くしてやろーぜッ!」


 片手を前に出して拳を握り、イーリスのために出来るだけのことをしようという決意のもとに、大声で宣言する。

 桃花も慌てて顔を上げ、うっすら浮かんでいる涙を、そっと指の先で拭いつつ、大きくうなずいた。


「結太……。桃花……」


 両手を胸に当て、イーリスは感動したようにつぶやく。

 それからニコッと微笑むと。


「ありがとう、二人とも!……じゃあ、アタシが一番叶えたい夢を実現させるために、協力してくれるわよね?」


「おうっ、もちろんだぜ!」

「どんなことでも、喜んで協力します!」


 即答する二人を見て、再び満足げに微笑んだイーリスは、


「あのね。アタシ、()()()()()!! 人生、たった一度だけでもいいから、秋月くんと咲耶みたいに、()()()()()()()()()()()()()()の!!」


 よりいっそう声を張り上げて、キッパリと言い放った。

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