第16話 結太ら、午後に備えて昼休憩を取る
写真のチェックを終えると、国吉は一同を見回し、
「うん。これで、メモに書いてあった一人のみのポーズは、全て撮り終わりましたね。楠木様、伊吹様、そしてお嬢。ご協力いただき感謝します。お陰で、良いポーズ集が撮れたと思いますよ。お嬢のお知り合いの漫画家さんも、きっと満足してくれるでしょう。――後は、二人以上のポーズだけですが……そろそろ12時になりますし、先に昼食にしちまいましょうか」
ニッと笑うと、後ろのアイスボックスを親指で示した。
「やったー! メシだーーーっ!!」
「もう、お腹ペコペコだわ……。写真のモデルなんて久し振りにやったから、疲れちゃった」
「う、うん……。私は、モデルなんて初めてだったけど……。撮ってもらってるだけなのに、こんなに疲れるものなんだね」
思い思いに感想を漏らし、結太、イーリス、桃花は、ホッとしてレジャーシートに向かう。
イーリスは桃花を振り返り、
「そーよー。疲れるのよー? たまーに、『モデルなんて、ニコニコ笑って、立ったり座ったりしてればいいだけでしょ?』なんて、テキトーなこと言う人もいるけど……。そーゆー人達は、実際に、カメラの前で何時間も表情作ってポーズ決めて、何百枚も何千枚も撮られてみればいーのよ。思ってる以上に、気力体力使うものだってわかるだろーから」
そう言って、不満そうに顔をしかめた。
「まあまあ。お嬢の大好物も、たくさん作って来ましたから。それでも食べて、午後の撮影までに、気力も体力も回復しておいてください? 複数人での撮影は、一人の時以上に、大変になってくると思いますんで」
言いながら、国吉はクーラーボックスから、サンドウィッチと三段の重箱を取り出し、レジャーシートの上に並べて行く。
結太は『えーっ? そんなに大変なのか国吉さんっ?』と訊ね、レジャーシートの上であぐらを掻いた。
イーリスは、重箱の中身に好物を見つけたのか、パアッと瞳を輝かせる。
桃花はと言うと、どこに座ればいいのか迷っているようで、レジャーシートの手前で立ち尽くしていた。
結太はいち早くそれに気付くと、
「あ……。あ、あのっ、伊吹さん! オレの隣空いてるから、もしよかったら、ここに――」
『座れば?』と言おうとしたのだが。
最後まで言わせてもらえないまま、イーリスが結太の指し示した場所に、ちょこんと腰を下ろしてしまった。
結太はギョッとし、
「い、イーリスっ! おまえ、何勝手に座って――っ」
「あら。レジャーシートに、指定席なんてあったかしら? ないわよね? だったら、どこに座ろうと自由なはずだし、『ここに座っちゃダメ』なんてことも、言えないはずよ? ねえ、桃花もそう思わない?」
訊ねられた桃花は、『う、うん。……そうだね』と返し、空いていたイーリスの隣に座った。
結太は内心、桃花の隣に座れずに悔しがったが、イーリスに歯向かうと、またややこしいことになると思ったので、グッと我慢し、興味を昼食の方へ移した。
三段の重箱の一段目には、からあげ、玉子焼き、ウィンナー、白身魚のフライやエビフライ、アスパラベーコンなどの定番のおかず。
二段目の半分には、モモやブドウ、キウイなどのフルーツ類、もう半分には、宝神特製のパリパリサラダやコールスローなどの野菜類。(当然、混ざらないように、間に仕切りが入れてある)
そして三段目には、俵型のおにぎりが、綺麗に並べられていた。
ラップに包まれたサンドウィッチの種類は、BLT、照り焼きチキン&スクランブルエッグの他、ブルーベリー&クリームチーズ、あんバターなどのデザート系――などなど、目移りしてしまうほどだ。
「すっげーーーっ! 今日もごちそうだ! どれから食べるか迷っちまうなぁ!」
ニコニコ顔の結太に、桃花もイーリスも同意し、やはり満面の笑みでうなずく。
嬉しそうな高校生らの顔を見て、張り切って作った鵲と国吉も、作った甲斐があったと、軽く目配せして微笑んだ。
「ほんっと、マジで目移りしちまうなぁ! 国吉さんはもちろんだけど、サギも頑張ったじゃねーか! 今日は手伝えなくて悪いと思ってたが、これだけ作れりゃ、もう一人で任せても大丈夫だな!」
東雲も感心してうなずくが、鵲は焦ったように、
「いやっ、俺なんてまだまだだって! ほとんど、国吉さんが作ってくれたようなものだし……。それに、今日はまだ、坊と保科様――特に、保科様の分を考えずに済んだから、これだけでよかったけど、そうじゃなかったら、俺一人でなんて、とてもじゃないけど無理だよ!」
一人で任されては大変と、思いきり首を横に振る。
何気なく放たれた鵲の言葉に、イーリスはハッと目を見張り、
「そー言えば、秋月くんと咲耶はどこにいるの? どーせ、どっかでずーっとイチャイチャしてるんだろうと思って、気にしないようにしてたけど……。お昼にもいないなんて、どーゆーこと? お昼はいらないって言われたの? それとも、二人だけ、別のもの食べてるの?」
今更ながら、二人がいないことを気にし始めたのか、周囲をキョロキョロと窺っている。
結太らは、心で『ヤバイ――! 騒ぐに決まってるから、ギリギリまで黙っとこうと思ったのに』と冷や汗を掻き、
「さ……さあ?……どーしてるんだろーなー……?」
「そ、そーだね。どこ行っちゃったのかな……?」
「藤島様のおっしゃる通り、どこかでイチャイチャしてるんでしょう。ほっといてあげましょーよ。ハハハハ……」
「う、うん、お二人なら、きっと心配いりませんよ。……ね、ねえ?」
それぞれ白々しい言葉を口にしつつ、微妙な笑みを浮かべた。




