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両片想いでラブコメで!~想い人一筋なのに、隣人の金髪碧眼美少女がやたらとちょっかいかけてくるんだが?~  作者: 咲来青
第5章

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第14話 イーリス、ポーズ指定メモに蒼くなる

 イーリスが知り合いの漫画家から手渡されたメモには、数十ものポーズ指定が、箇条書きされていたらしい。その全てを撮るには、かなりの時間を要する。


 そうするとやはり、休憩するためのビーチパラソルが必要だろうということで、


「んじゃ、俺が戻って取って来ますよ。ついでに、サギと国吉さんの様子も見て来ますんで」


 そう言って、東雲は別荘に戻って行った。



「じゃ、こっちはこっちで始めてましょう。えーっと、まずは……どのポーズから撮ろうかしら?」


 イーリスはメモをペラペラめくり、最初に撮るポーズを選び始める。

 結太はひょいっと、横からメモを覗き込み、


「うっへぇ~。マジでびっしり書いてあんなぁ……。えーっと、なになに? 〝筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)の男性が筋骨隆々の男性を、お姫様抱っこしているところを、多方向から〟――?……はああッ!? 何だこりゃあ!?」


 いきなり不可解なワードが目に飛び込んで来て、ズサササッと後ずさりした。


「……〝筋骨隆々の男性を筋骨隆々の男性が、羽交(はが)()めしているところを、多方向から〟〝筋骨隆々の男性が筋骨隆々の男性と、追いかけっこをしているところを、多方向から〟〝筋骨隆々の男性と筋骨隆々の男性が、恋人(つな)ぎで海辺を散歩しているところを、多方向から〟〝筋骨隆々の男性が筋骨隆々の男性と、正面から抱き合っているところを、多方向から〟〝筋骨隆々の男性が筋骨隆々の男性を、バックハグしているところを、多方向から〟〝筋骨隆々の男性と筋骨隆々の男性が、〇ィー〇〇〇しているところを、多方向から〟……」


「――って思いっきり()()()()()()じゃねーかッ!! んなもん撮れるワケねーだろッ!? 誰がOKすんだよするワケねーってッ!! 何なんだよその、〝筋骨隆々の男性が筋骨隆々の男性と〟~ってヤツは!? 筋骨隆々の男性ったら、トラさんかサギさんしかいねーんじゃねーの!? 国吉さんも結構筋肉付いてっけど、二人よりは細めだし……って、いや! 条件に当てはまってるとしても、誰もこんなんやりたがらねーよ! 決まってんだろ!? こんなんばっか指定して来たってことは……おまえの知り合いって、どー考えてもBL漫画家じゃねーのか!?」


「ふぇ――っ、…………ふぇええええっ!?」


 結太のセリフにショックを受けたらしい。桃花が真っ赤になって悲鳴(?)を上げる。

 最後までメモをめくり終えると、イーリスは蒼い顔で、


「…………何、これ?」


 同じくショックを受けている様子でつぶやいた。


「『何、これ?』――って、おまえが頼まれたんだろーが! メモ渡された時、全部チェックしなかったのかよ!?」


 呆れて結太が問い(ただ)すと、イーリスは暗い声で『……最初の方だけ、した……けど……』と答え、絶句する。


「最初の方だけって……。やっぱおまえ、無責任だな。普通、撮るの頼まれたら、一応は全部チェックすんだろ?」


 ほとほと呆れ果てたといった感じで、深いため息をつかれ、イーリスはカッとなった。


「しょっ、しょーがないでしょっ!? 最初の方は、〝高校生くらいの少年が海に向かって叫んでるところ〟とか、〝高校生くらいの男女が見つめ合うところ〟とか、〝スク水少女と海パンの少年がパシャパシャ水をかけあうところ〟とか、そーゆー、少女漫画に出て来そうなシーンしか書かれてなかったんだから! まさか、最後の方であんな特殊な要求が書かれてるなんて、思いもしなかったんだもの!」


 言い返しながらも、責任を感じているのか、イーリスの目には、うっすら涙が滲んでいる。

 女性の涙に弱い結太は『うっ』と詰まり、バツが悪そうに視線をそらした。


「でも……いくら知らなかったからって、やっぱマズイだろ、それ? 知り合いの人に、メッセか電話か、してみた方がいーんじゃねーの? こんなの聞いてねー。無理だーって」


 なるべく刺激しないよう、声を荒らげないように注意しながら、連絡してみるよう(うな)す。

 イーリスは素直にうなずくと、レジャーシート上のバッグに駆け寄り、中からスマホを取り出した。


「……ったく。詰めが(あめ)ぇーんだよなぁ、イーリスのヤツ」


 イーリスが、スマホ画面をもの凄いスピードでタップするのを眺めながら、結太は腕組みして苦笑する。

 桃花はハラハラした様子で、じっとイーリスを見守っていた。



 しばらくの間、スマホ画面と睨めっこしていたイーリスは、


「あーーーっ、もう! 人騒がせなんだからっ!」


 その場で大声を上げると、スマホをバッグにしまい、結太らの元に戻って来た。


「もーっ、聞いてー? 『あんなもの撮れるワケないでしょ』ってメッセ送ったら、『てへ♪ やっぱり? 男性同士の(から)みは、もしも可能であれば……って感じのお願いだから、無理ならスルーして?』……ですって! なーにが『てへ♪』よ! ホントにもう! あの人が、あんな無理言って来るなんて、おかしいとは思ったけど……。『イーリスちゃんが、あれ見たらどんな反応するのか、知りたかったの』とか言うのよ?……まったく、あんなところもある人だとは思わなかった。意外な一面を知っちゃった感じよ」


 ひとしきり愚痴(ぐち)った後、イーリスはハアーっと大きなため息をついた。

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