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両片想いでラブコメで!~想い人一筋なのに、隣人の金髪碧眼美少女がやたらとちょっかいかけてくるんだが?~  作者: 咲来青
第5章

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第13話 結太、桃花の姿を見てイーリスに抗議する

 それを目にした瞬間。

 結太と東雲は、ギョッとして目を見張った。


「い……っ、伊吹さ――」

「伊吹様、そのお姿は――っ!?」



 桃花が着ていたのは、昨日着ていたような、花の装飾の付いた可愛らしいビキニ――……ではなかった。


 紺色のスクール水着。

 しかも、咲耶が着ていたような、今時のスク水――スパッツタイプのものでもない。

 旧スク水と呼ばれている、紺色の、ワンピースタイプの水着だった。(その上、ご丁寧(ていねい)に、胸元には白い四角形の布地が縫い付けてあり、黒のマジックで〝三年三組 さとう〟と、クラスと名前らしい表記までしてある)


 その〝旧スク水〟を着用した桃花は、恥ずかしそうに両手を胸の前で重ね合わせ、落ち着かない様子で、もじもじもじもじしていた。

 結太は思わず鼻と口元を両手で押さえ、桃花が視界に入らないように、くるりと半回転する。



(な……っ、なななな――っ、何だありゃあッ!?……何で伊吹さんが、旧スク水なんて着てんだ!? しかも、わざわざ名札付きとかって……コスプレかよッ!?)



 今でこそ、学校では着られなくなった、旧スク水。

 一部のマニアの間で、旧スク水がもてはやされているということは、結太も、そして東雲も知っていた。


 その、一部のマニアが喜ぶような旧スク水を、桃花が着させられているということは、もしや――……。



 その可能性に思い至ったとたん、結太はカーッと頭に血が上った。

 再び体を半回転させると、桃花を視界に入れないように注意しながら、イーリスの元へと駆け寄る。


「イーリスぅうううッ!!――おまえっ、ポーズ集撮るように頼んで来た漫画家って、男じゃねーだろーなぁ!? だったら、ぜってーぜってーぜってーぜってー許さねーぞッ!? 特に、伊吹さんをモデルに撮影するなんてこたぁ、言語道断(ごんごどうだん)だバカヤローッ!! 俺の目が黒いうちは、死んでも認めねーからなッ!? 認めて堪るかってんだチクショウめぇえええッ!!」


 体の両脇で拳をギュッと握り、仁王立ちして怒鳴りつける。

 興奮状態の結太に、いきなり大声で責め立てられたイーリスは、気圧(けお)されたように数歩後ずさると、


「な……何っ? いったい、どーしたってゆーのよ?……何をそんなに怒ってるの?」


 意味がわからないと言った風に、戸惑いの言葉を発した。


「何を怒ってるか、だと!?――そんなん、怒るに決まってんだろーがッ!! ポーズモデルだか何だか知らねーが、伊吹さんにあんな水着着させて、どんなポーズ撮らせる気だって言ってんだよッ!! 今時、あんな水着が出て来る漫画が、フツーの漫画のワケねーだろッ!! それわかってて引き受けたのかッ!? だったらイーリス、てめーもぜってー許さねーからなぁッ!?」


 今度はギュッと握った拳を前に出し、ふるふると震わせている。

 イーリスも、そして桃花も呆気(あっけ)に取られ、しばらく結太を眺めていたのだが。


 一方的にまくし立てられ、だんだん、理不尽だということに気が付いたのだろう。

 ムッとした顔つきになり、


「ちょっと! さっきから黙って聞ーてれば、言いたい放題言ってくれるじゃない! 人の知り合いのこと、勝手に変な人扱いしないでよね! 漫画家が男かどうか気にしてたみたいだけど、アタシの知り合いは女性よ! どーゆー漫画を描いてるかどーかまでは知らないけど、アタシの知り合いが、そんないかがわしい漫画に、アタシの友達の写真を使うワケないでしょ!? 当たり前じゃない!」


 イーリスも、負けじと大声で言い返す。

 結太は一瞬(ひる)んだが、彼女の言い分におかしいところがあるのに気付き、


「『当たり前』ってゆーけどなぁ! 『どーゆー漫画を描いてるかどーかまでは知らない』ってのは何なんだよ!? 知らねーってのはダメだろ! 無責任過ぎるだろ! どんな漫画を描くために必要なのかどーか、ちゃんと訊ーとけよな! 『アタシの知り合いが悪いことに使うワケない』って理屈は通じねーよ! 主観で判断するなってんだ!」


「う――っ」


 結太の言うことにも一理ある――いや、もっともだと思ったのか、イーリスは悔しげに黙り込む。

 そこに、今まで成り行きを見守っていた東雲が割って入って来て、


「まーまー結太。そー興奮すんなって。おまえが腹立てんのもわかっけどよ。知り合いを信じてーって藤島様のお気持ちも、わからなくはねーだろ? だから……なっ? ここはいったん、信じとこーぜ。頼まれたポーズ写真ってのは一応撮っといて、写真を渡す前に、その知り合いって人が描いてるっつー漫画を、見せてもらえばいーじゃねーか。そこでチェックした上で、問題なさそーだったら渡しゃいーし、問題ありそーだったら渡さなきゃいい。藤島様も頼まれちまった手前、何も撮らずに帰るワケにも行かねーんだろーし、ここは協力して差し上げよーぜ。――なっ?」


 バシバシと結太の肩を叩き、東雲はニッと笑った。

 東雲の話を聞いているうちに、結太も落ち着きを取り戻したようだ。東雲の意見を聞き、渋々うなずいた。


「まあ……イーリスが、写真渡す前に、ぜってー漫画のチェックするってーのと……伊吹さんが、協力してもいい、って思ってんなら……」

「す――っ、するわよ! 漫画のチェック、ちゃんとすればいーんでしょ!……恥ずかしがって、今まで見せてくれたことないけど……あの人が、変な漫画なんて描いてるワケないんだからっ!」


 二人の言い分を、うんうんとうなずきながら聞いていた東雲は、桃花を振り返り、


「伊吹様は、どう思ってらっしゃいます?……本当に、協力してもいいんですね?」


 確認するように、彼女の率直な意見を問う。

 桃花は一瞬、困ったように眉根を寄せたが、イーリスを一瞥(いちべつ)すると、こくりとうなずいた。

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