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両片想いでラブコメで!~想い人一筋なのに、隣人の金髪碧眼美少女がやたらとちょっかいかけてくるんだが?~  作者: 咲来青
第4章

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第18話 結太と桃花、人の気配を感じ岩陰に隠れる

 貝殻もシーグラスも、結太が再び集めた分で充分だろうということで、別荘に戻ろうか――ということになったのだが。

 二人が立ち上がろうとした瞬間、別荘のある方角から、誰かの大きな声が聞こえて来た。結太と桃花は、ギョッとして振り返る。


 すると。

 声のする方角から、ふたつのライトらしき灯りが、こちら側に向かって来るのが目に入った。

 まだ遠いので、ハッキリとは確認出来ないが、灯りの正体は、結太達が持っているものと同じ、LEDランプだろう。


「誰だろーな? こんな夜に、わざわざ海岸に来るなんて……」

「う、うん。……咲耶ちゃんは、今日は早めに眠りたいって言って、さっきお風呂に入っちゃったから……たぶん、違うと思うけど……」


「そっか。じゃあ、あと考えられるとすると……」

「あっ。近付いて来るよ? どーしよー? 挨拶した方がいいのかな?」


 そう言って、桃花は立ち上がろうとしたが、結太は慌てて、


「ちょ! ちょっと待って、伊吹さん!」


 片手で桃花の手をつかみ、軽く引っ張る。

 桃花は再びしゃがみ込み、ビックリしたような顔で、『えっ? ど、どーしたの楠木くん?』と小首をかしげた。


「もし、あれがイーリスだったら、マズいって。こんなとこに二人でいるの見たら、ぜってーからかって来るし」


 結太は小声で注意を(うなが)すと、自分のLEDランプを消した。

 ランプを消しても、月明かりのお陰で真っ暗にはならないと、わかっていたからだ。


「えっ? どーして消しちゃうの?」


 月明かりの下とは言え、夜の海は、やはり恐ろしいのだろう。桃花は心細そうに、それから、少し不思議そうに、目をパチパチさせている。


 結太は、桃花にもランプを消すよう指示してから、中腰になり、ゆっくりと後ずさった。

 桃花には、彼の意図するところがわからなかったが、言われた通りにランプを消した。


「ちょっと海ん中入っちまうけど、あの岩陰に隠れよう? あいつらが別荘に戻ってくまで、様子見た方がいいと思ってさ」


 再び小声で伝えると、結太は少しずつ海に入った。海の深さは、ふくらはぎ半分が浸る程度だ。

 彼は大きな岩影を目指し、まるで忍者のように、腰を落として歩き続けた。


 結太の服装は、上はTシャツ、下はハーフパンツだが、桃花は白のブラウスに、膝下丈のスカートだ。海に入れば、濡れてしまう恐れがあった。


 桃花は一瞬ためらったが、意を決したように、スカートの裾を膝の上まで引き上げると、下に落ちて来ないように、スカートの端をギュッと結んだ。

 それから結太を見習って、海にそろりそろりと入り、彼の待つ岩陰まで歩を進める。


「ごめん、伊吹さん。服のことまで考えてなかった。……濡れちまったかな?」


 桃花が岩に隠れたと同時に、結太は申し訳なさそうに頭を下げ、上目遣いで窺う。

 慌ててふるふると首を振ると、桃花はニコリと微笑んだ。


「ダイジョーブ。濡れてないよ?……それに、ちょっとくらい濡れても平気。汚れても良い服しか、持って来てないから」

「そ……そっか。なら、まだよかったけど……」


 ホッとしつつ、結太は何げなく、桃花の服に視線を移した。

 ブラウスには、控えめながら、フリルとリボンが付いている。スカートの生地も上質そうだ。


 結太はファッションには詳しくないし、女性服のことは、特にわからない。

 だから、自信を持って言えるわけではないのだが……桃花の着ている服は、どう見ても〝汚れても良い服〟とは思えなかった。



(……もしかして、オレに気を遣わせないよーに、平気なフリしてくれてんのかな……?)



 桃花の気遣いだとしたら、申し訳ないなと思いながら、彼女の横顔をじっと見つめる。


 いつも可愛い桃花だが、月明かりの下で見る彼女は、〝可愛い〟以上に〝美しく〟感じられた。

 ――とたん、結太の鼓動は大きく、速く打ち始める。岩陰に二人並んでいることを、今更ながら意識してしまったのだ。



(ば――っ、バカか、オレ? 自分で『岩陰に隠れよう』とか言っといて、何一人で緊張してんだよ?……こ、これは、イーリスにからかわれないための、ただの緊急避難……っつーか、そんな感じで……。べつに、他意はねーんだ、他意はっ!)



 必死に自分に言い聞かすが、意識してはダメだと思えば思うほど、十センチと離れていない桃花と自分との距離に、胸が高鳴る。

 あと少し手を伸ばせば、肩を抱ける。もう少し(かが)みこめば、唇と唇を合わせることだって……。


「あっ。あれ……」


 岩陰から、じっと砂浜の様子を窺っていた桃花が、小さく声を上げる。

 結太はビクッと肩を揺らした後、ピンと背筋を伸ばし、気をつけの姿勢を取った。


「えっ?……ど、どーかした、伊吹さん?」


 (よこしま)な想いを慌ててかき消し、桃花の視線の先に目を移す。

 そこには、思った通りのイーリスと、彼女のボディガードの国吉の姿があった。


「あ~……。やっぱイーリスだったか。隠れて正解だったな……」


 とっさの自分の判断は、間違っていなかったのだと、ホッと胸を撫で下ろす。


 結太と桃花のLEDランプに気付かれていたら、誰かいたのではと怪しまれ、辺りを捜し回られるかと思ったが、それは杞憂(きゆう)だったようだ。

 イーリスは、特にそんなそぶりは見せず、LEDランプを片手に、砂浜をサクサクと歩いている。

 国吉は、彼女の少し後を歩き、やはり片手には、LEDランプを掲げていた。


 しばらくは、二人とも何も言わず、砂浜をぶらぶらしているようだった。

 しかし、ふいにイーリスが立ち止まり、


「もうっ! いー加減、白状しなさいよ国吉ッ! アタシに、何か隠してることがあるでしょ!?」


 しびれを切らしたかのように、大声で国吉に問い掛けた。

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