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両片想いでラブコメで!~想い人一筋なのに、隣人の金髪碧眼美少女がやたらとちょっかいかけてくるんだが?~  作者: 咲来青
第4章

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第17話 結太、貝殻とシーグラスを拾いに夜の海岸に行く

 龍生からの適当なアドバイスを受け取ると、結太は満足して部屋を出た。

 他者から見れば、どう考えても、満足出来るようなアドバイスではなかったが、全てが未経験の結太には、あんなものでも充分だったらしい。



(そっかー。やっぱ、目は開けてていーんだな。……だよなー? 目ぇつむってたら、唇がどこにあんのかわかんなくなっちまうし。やっぱ開けとかなきゃだよなー)



 龍生からのアドバイスを真に受け、一人でうんうんとうなずきつつ、リビングルームに戻ってみると。

 そこに、イーリスと桃花の姿はなかった。


 まあ、いつ戻るかわからない結太を、のんびりと待っているのは、退屈だったのだろう。

 特に気にすることもなく、結太も二階の部屋へと移動した。




 割り当てられた部屋に戻ったとたん、結太はハッと、()()()()のことを思い出した。


 ――昼間、桃花と拾い集めた〝貝殻とシーグラス〟だ。


 せっかくたくさん集めたのに、イーリスが泣きながら抱きついて来たせいで、全て砂浜に放って来てしまった。

 外はすっかり暗くなっているが、拾っていた場所は、だいたい覚えている。手提げランプでもあれば、またすぐに、拾い集めることが出来るだろう。



 何も、真っ暗の中探さなくても、また明日、明るくなってから拾い集めればいいではないか。

 ――そうも思ったが。


 明日は明日で、龍生が、皆の予定を考えてくれているはずだ。今日のように、呑気に貝殻などを拾い集めている暇は、作れなくなる恐れもある。


 拾い集めた貝殻とシーグラスを、今夜中に、桃花に届けに行ったら。

 彼女はきっと、『ありがとう』と微笑んでくれるだろう。

 結太は単純に、桃花の笑顔が見たかったのだ。



(――よし! トラさんかサギさんに、手提げタイプのLEDランプを借りに行こう!)



 結太はくるりと半回転し、部屋を飛び出て、再び一階に向かった。





「え~っと。確か、この辺りだったと思うんだけどな~」


 東雲から借りて来たLEDランプを、片手に(かか)げて周囲を照らすと、結太は()()を探した。


 この島の表側の海岸は遠浅で、見渡す限り、白い砂浜が広がっているのだが。

 一部にだけ、大きな岩が集中している場所があった。


 昼間、結太はその辺りで、貝殻とシーグラスを拾っていたのだ。

 その岩の群れさえ見つかれば、放ってしまった貝殻とシーグラスも、すぐに拾い集められるはず。結太はそう考えていた。



「――あ。あったあった! あそこだ!」


 岩が密集している場所を見つけ、一気にテンションが上がる。

 片手にランプ、もう片方の手には、拾った貝殻とシーグラスを入れるためのポリ袋を提げた結太は、思わず駆け出していた。



 岩の手前辺りの砂浜を、ランプで足元を照らしながら進む。

 簡単に見つかると思っていたが、想像と違って、目を皿のようにして砂浜を探し回っても、なかなか見つけられなかった。


「……っかしーなー。大きな岩はここにしかねーんだから、場所は、そんな間違ってねーと思うんだけど……」


 ブツブツと独り言を言いながら、足を交互に上げて、砂を蹴る。

 砂に埋まってしまったのだろうか、それとも、波がさらって行ってしまったのだろうかと、心配になって来た。


 すると。

 数メートル先、五十センチ四方ほどの範囲に、かなり大量の貝殻とシーグラスが、散らばっているのが目に入った。


「やった! あったあったあったーーーっ!」


 大喜びで駆け寄り、スライディングするように、砂浜に膝をつく。

 すかさず、貝殻とシーグラスを拾い集めると、広げたポリ袋に、片っ端から放り込んだ。


「やーったやったーあったったーっ♪ホイホイホイホイホーイホイっ♪」


 即興のヘンテコな歌を口ずさみ、結太はやたらと上機嫌だ。

 桃花に喜んでもらえると思うと、気分が高揚して来てしまったのだろう。


「ホイホイホホイノホーイホーイ♪ホホイホホホイホホーイホ――」


 ヘンテコな歌が、急に途切れた。

 結太の目の前に、小さくて可愛らしい足が出現したからだ。


「――っ、わああッ!?」


 結太はビックリ仰天し、思いきり尻餅をつく。

 同時に、頭上から聞こえたのは――、


「あ……。ごめんねごめんねっ? 驚かすつもりはなかったの!」


 ……可愛らしい、癒し系ボイス。


「いっ、伊吹さんっ!?」


 見上げた先には、結太が持って来たものと、同じタイプのLEDランプを掲げた、桃花の姿があった。

 桃花は、申し訳なさそうな顔でしゃがみ込み、まだ尻餅をついている結太に向かい、ペコリと頭を下げる。


「ホントにごめんなさいっ! まさか、ここに楠木くんも来てたなんて知らなくてっ。ホントに、驚かそうと思ったわけじゃないのっ」


 何度も謝りつつ、ペコペコと頭を下げる桃花に、結太は慌てて体を起こし、


「い、いやっ! オレこそごめん! 大袈裟に驚き過ぎた!……お、オレ、伊吹さんが驚かそうと思ってしたとか、全然思ってねーからっ! だから……なっ? そんなに頭下げなくていーんだって!」


 怒っていないということを、必死に言い続ける。

 桃花は頭を下げるのをやめると、そうっと顔を上げ、


「……ホントに?……怒ってない……?」

「怒ってないッ!!」


 キッパリ告げる結太を見て、ホッとしたように微笑んだ。


「よかった。怒ってなくて。……でも……楠木くん、どーしてここに?」


 小首をかしげて訊ねられ、結太は砂浜に再び膝をつくと、前のめりになって訊ね返す。


「伊吹さんこそ! こんな夜に、どーして海なんかに?」


 ここは秋月家所有の島なのだから、不審者に襲われる可能性など、まずないが。

 夜に一人で行動して、怪我などをしたら大変だと、結太は真剣な顔で、桃花をじっと見つめた。


 見つめられ、恥ずかしくなった桃花は、顔を熱くしながら、視線を斜め下に落とす。


「え……えと……。昼間、貝殻とシーグラス……落として来ちゃった、から……。拾いに……」

「えっ、伊吹さんも? 実はオレもなんだ。――ほらっ」


 宝物を拾った子供のように、目をキラキラと輝かせ、結太はポリ袋を広げ、貝殻とシーグラスを桃花に見せた。

 桃花は『あ。ホントだ』とつぶやくと、僅かに顔を上げる。


 瞬間、視線が重なり、ハッと息を呑んだ二人は――。

 一拍(いっぱく)置いた後、どちらからともなく微笑んだ。

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