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両片想いでラブコメで!~想い人一筋なのに、隣人の金髪碧眼美少女がやたらとちょっかいかけてくるんだが?~  作者: 咲来青
第3章

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第18話 結太と桃花、収集活動に専念する

 結太と桃花は砂浜にしゃがみ込み、ものすごく真剣に、貝殻とシーグラス集めに没頭(ぼっとう)していた。


 初めは、軽い気持ちで探していた二人だったのだが。

 綺麗な形の貝殻や、様々な色のシーグラスが、ひとつ、ふたつと見つかるたびに、夢中になってしまったらしい。気が付くと、かなり長い間、砂浜とにらめっこしていた。



「――うん。まー、こんなもんかな?」


 結太は両手いっぱいの戦利品を見つめると、満足げにうなずいた。


 色とりどりのシーグラスと、小さな貝殻の山。

 これだけあれば、アクセサリーも幾つか作れるだろう。桃花も、きっと喜んでくれるはずだ。


 意気揚々(いきようよう)と振り返り、桃花の姿を探す。

 すぐに見つかりはしたが、かなり遠い場所にいた。こちら側に背を向け、うずくまっている。



 いつの間にか、こんなに離れてしまっていたんだなと、思わず苦笑してしまった。

 いくら桃花のためとは言え、こんなにも長い間、無言のまま、ひたすら貝殻やシーグラス集めをしていたなんて、我ながら呆れる。



 気を取り直し、桃花の背に向かって『おーい』と声を掛けた。


「伊吹さーーーんっ! こっちは結構収穫あったけど、そっちはーーーっ?」


 片手を振りながら訊ねると、桃花は、しゃがんだままくるりと振り向き、同じように片手を振り返す。


「楠木くーーーんっ! こっちもたくさん取れたよーーーっ!」



 ――珍しい。いつも大人しく、控えめな桃花がはしゃいでいる。

 ウキウキしているような、(はず)んだ声が返って来た。



(あー、よかった。テキトーに言った〝貝殻とシーグラス集め〟だったけど、予想以上に楽しんでもらえたみてーだ。伊吹さんが泳げねーって聞ーた時は、どーしよーかと焦ったけど……。うん。結果オーライだな。何でも、言ってみるもんだ)



 桃花の返事に気を良くしながら、結太は彼女のいる方へ歩を進める。

 数メートルほど前まで近付くと、桃花はすっくと立ち上がり、(てのひら)を上に向けた状態の両手を、結太の前に差し出した。


「ほら見て、楠木くん! こんなにたくさん、綺麗な色のシーグラス見つけちゃった!」


 輝くような笑顔は、少し自慢げだ。

 まるで、見つけた宝物を、親に示して見せる幼子(おさなご)のような無邪気さだった。



(か……っ、可愛いっ! 可愛過ぎだろ伊吹さんっ? あーもーっ、どーしてこんなに可愛いんだっ?……くぅぅぅーーーッ! チクショーッ、今すぐこの場で〝ギュ〟ってしてぇええーーーッ!!)



 心の内で(もだ)えながらも、グッと拳を握って歯を食いしばり、どうにか『抱き締めたい』衝動(しょうどう)を抑え付ける。

 結太は取り(つくろ)うようにニカッと笑い、


「そっか。よかったな、伊吹さん!――オレも、ほら。伊吹さんに気に入ってもらえるかはわかんねーけど、一応、こんだけ拾えたよ」


 桃花を真似るように、握っていた両手を桃花の眼前に持って行き、そっと開いた。

 結太の両掌を覗き込む桃花の瞳が、キラキラと輝く。


「わあ、綺麗! 貝殻も可愛い……!」

「うん。探してるうちに楽しくなって来てさ。思わず熱中しちまったよ。この砂浜、貝殻もシーグラスも、すっげー簡単に見つかったろ? フツーは、こんな短い間にこれだけの量は拾えねーよな? やっぱ、プライベートビーチだからかな?」


 ゆっくりと周囲を見回した後、結太は桃花に視線を移し、小首をかしげた。

 桃花も、同意するように大きくうなずく。


「うん。そーなんじゃないかな? 人がたくさん来るような海岸だったら、ここまで簡単には、見つけられなかったと思う」

「だよな! じゃー、プライベートビーチ様様(さまさま)、ってワケだ。龍生に感謝しねーと」


 二人は視線を交わし合うと、同時にフフっと微笑んだ。



 龍生には、心底感謝せねばなるまい。


 夏真っ盛りの季節に、海岸(しかもプライベートビーチ)で、想いを寄せる人と二人きりでいられる確率など、極端に低いはずだ。奇跡と言っても、過言ではないのではなかろうか。

 少なくとも、結太のような一般庶民には、二度と経験出来ない贅沢(ぜいたく)であることは、まず間違いないだろう。



 うんうんとうなずきつつ、結太がしみじみ、感動を噛み締めていると。


「あの……。えっとね? 楠木……くん?」


 ふいに。何か言いたげな上目遣(うわめづか)いで、桃花がじっと見つめて来た。


「んー…………ん? んあっ?――ごっ、ごめん! ちょっとボーッとしてた! えっ、と……なっ、何かな?」


 慌てて返すが、桃花はもろに目が合うと、パッと視線を外し、頭頂部(とうちょうぶ)どころか、頭の裏側まで見えてしまいそうなほど深く、深くうつむいた。


「え――。伊吹……さん?」


 ためらいつつ声を掛け、しばらくの間、反応が返って来るのを待つ。


 しかし、一分経っても、二分経っても、桃花は顔を上げようとしなかった。


 結太はいよいよ困り果て、もう一度、どうしたのかと訊ねてみようと、口を開いた。

 すると、ようやく桃花は顔を上げ、


「あのっ!……わ、わたし……この貝殻とシーグラスで、何か作ってみようと思ってるんですっ!……けど――」


 そう告げた後、再びうつむいてしまう。


「……ん?……あぁ……う、うん……?」


 結太はキョトンとし、曖昧な答えを返した。



 ……まあ、あれほど夢中になって集めていたのだ。何か作る気でいるのだろうなと、初めから思ってはいたが。

 今更また改まって、どうしたというのだろう?



 戸惑いの中、結太は桃花を、ただ見つめていることしか出来なかった。

 桃花はと言うと、顔どころか耳の(ふち)まで、熟した桃のようにピンク色に染め、胸の前で両手を組み合わせてモジモジしている。


 再び沈黙が訪れ……それからまた、一分ほど経った頃。


「あっ、あのっ! まだ、何を作るかは、具体的には決めてないんですけどっ! でもっ、あの――っ、……つ、作り終わったらっ、きょ、今日の記念――に、楠木くんに、プレゼントし……したいな――って思っててっ!……で、で……っ、ですから、あのっ、……プ、プレゼントしてもっ、い……い……いー……です、か……?」


 語尾に近付くほど、桃花の声はか細く、小さくなって行った。最後の方は、ほとんど聞き取れないくらいだった。

 それでも、彼女の言おうとしていることは、充分理解出来た。


 理解は出来たのだが……突然の申し出に、結太はとっさに返事が出来なかった。

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