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両片想いでラブコメで!~想い人一筋なのに、隣人の金髪碧眼美少女がやたらとちょっかいかけてくるんだが?~  作者: 咲来青
第3章

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第4話 男性陣、咲耶の水着姿に言葉を失う

 放り投げられたTシャツを目で追い、砂浜に落ちたのを確認してから、咲耶に視線を移した男性陣は、


「うぇ――ッ!?」


 という奇妙な声を上げた後、固まってしまった。


 咲耶は、両手で自分の体を抱き締めるようにして、顔を赤らめつつたたずんでいる。

 両手で隠せない部分から(のぞ)いている()()は……明らかに、()()()()()()だった。



 結太達が通う桜月(おうげつ)高校指定のスクール水着は、上下に分かれたセパレートタイプ。色は黒で、左右に白のラインが入っている。

 上はタンクトップのような形状。下はほぼスパッツだが、(たけ)は三分ほどあるので、太ももの半分以上が隠れてしまう。

 ハッキリ言って、色気の欠片(かけら)もないデザインだった。



 せっかくのバカンスに、わざわざスクール水着を選んで着て来る人間がいるなどとは、思ってもみなかったのだろう。皆、唖然(あぜん)としている。



 シンと静まり返った砂浜に、しばらくの間、寄せては返す波の音だけが響いた。



 そんな中、最初に我に返ったのは結太だった。



(いやいやいやいや――っ! いくらなんでも、スク水はねーだろ保科さん!? なるべく露出(ろしゅつ)の少ねー水着を――って考えんのも、わかんなくはねーけど……。それにしたってスク水はねーよ、スク水は! そんな色気のねー水着着て来られちゃ、龍生が気のどっ――く……)



 そこで結太は、恐る恐る、龍生を盗み見た。


 彼は他の者達とは違い、唖然とはしていなかった。


 ……が、呆れたとも、落胆(らくたん)したとも言えない、どうにも表現しようのない顔つきで、咲耶をただただ凝視(ぎょうし)していた。


 表現しようがない――が、それでもあえて、彼の表情を言葉で表すとしたら……〝無〟だ。

 〝無〟という言葉が、一番しっくり来る気がする。



 もともと本心が読みにくいタイプではあるが、咲耶の前でだけは、素直な感情表現をしているように思えたので、この表情は、結太にとっては意外だった。

 これでは、ガッカリしているのか、呆れているのか、はたまた、別の感情を抱いているのか、容易(ようい)には判断出来ない。


 正直に、どう思っているのかを訊ねるべきか、結太が決めかねていると。

 ずっとうつむき、目をつむっていた咲耶が、静かに(まぶた)を開いた。

 ゆっくりと顔を上げて辺りを見回し、皆が固まっていると気付くや、心細そうに身をすくめる。



(な……なんだ? 妙に静かだと思ったら、みんな押し黙って……。やはり、呆れているのか? 海にスクール水着を着て来るなんてと、呆れ返っている――?)



 それならそうと、ツッコむなり大笑いするなり、何かしらリアクションしてくれればいいのに。

 ただ黙って、じっと見つめられているだけでは、何を考えているのかわからない。


 そんなことを思いながら、救いを求めるかのように、龍生の方へ視線を移した。



(え……っ?)



 予想外の表情にヒヤリとし、咲耶は大きく目を見張る。


 きっと、微笑んでくれているだろうと思っていた恋人は、これっぽっちも、笑ってはいなかった。

 呆れている風でもないが、かと言って、この水着を歓迎しているようにも見えない。



『秋月くんが、少しもガッカリした表情を見せなかったら、咲耶の勝ち。見るからにガッカリした表情をしてみせたら、アタシの勝ち』



 イーリスに言われた台詞が、脳裏をよぎる。


 〝見るからにガッカリした表情〟とは、違うような気もするが、〝少しもガッカリした表情を見せ〟ていないわけでも、ないように思えた。


 ……ということは、つまり――……。



 つまりこれは、イーリスとの勝負に負けた――ということになるのか?



 不安になって、(なな)め後方に顔を向ける。

 とたん、イーリスと目が合い、咲耶がギクリとして顔をこわばらせると、彼女は『ほら見なさい』とでも言うように、ニヤリと笑った。


「う――っ」


 その瞬間、完全に負けたのだと覚った咲耶は、『う……うぅ……う……』と、数回小声で(うめ)いた後、


「わぁああああーーーーーッ!! 秋月の……っ、秋月のバカアホマヌケぇえええーーーーーッ!! スットコドッコイのトーヘンボクぅうううーーーーーーッ!!」


 今度は大声でわめき立てながら、たった今歩いて来た道を、猛スピードで駆けて行く。


「――えっ?……さ、咲耶っ?」


 咲耶の大声で夢から覚めたかのように、数回目を瞬かせてから、龍生は慌てて彼女の後を追った。


「咲耶っ、待ってくれ! いきなりどうしたと言うんだっ!?」


 走りながら呼び掛けるが、咲耶は立ち止まるどころか、


「うわぁあああーーーーーッ!! 信じてたのにっ、信じてたのにぃっ!! 秋月のバカバカバカバカッ!! サイテーのスケベヤロォオオオオーーーーーーーッ!!」


 ひたすら(けな)し言葉を発し、ますますスピードを上げて、彼との差を開いて行く。


「ええっ? 信じてた……って、どういうことだ咲耶っ? いったい、何の話をしているんだっ? 教えてくれっ、咲耶!! 咲耶ぁああああーーーーーッ!!」


 困惑しつつ追い掛けて行く龍生の声が、徐々(じょじょ)に遠ざかり……。

 砂浜には、再び沈黙が横たわった。

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