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両片想いでラブコメで!~想い人一筋なのに、隣人の金髪碧眼美少女がやたらとちょっかいかけてくるんだが?~  作者: 金谷羽菜
第2章

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第7話 結太、龍生が同乗していないことにようやく気付く

 桃花の『赤ちゃんみたいで可愛かった』発言に、顔を赤らめている結太を前に、咲耶は、


「『可愛い』と言われたくらいで、何を真っ赤になっているんだ?……まったく。宿題を終わらせるために数日徹夜(てつや)したあげく、当日には、ボロボロの状態で車に乗り込んで来て、速攻で寝入ってしまうとは……。おまえには、学習能力というものがないのか? 前回別荘に行った時も、車中では、ずーっと眠ってたよな?」


 冷たい目で結太を見据(みす)え、呆れたように言い放つ。

 瞬間、結太はカッとなり、


「悪かったな、学習能力がなくてっ!――だいたい、前に行った時は、オレじゃなくて龍生が――っ」


 思わず、『龍生が、薬か何かを盛ったせいで』と言いそうになったが、当の本人の姿が、車内のどこにもないことに気付き、数回目を(しばたた)く。


「あれ……? そー言や、龍生は? 車には乗ってねーのか?……あ。前の席に乗ってるとか?」


 くるりと振り返って確認するが、運転席に安田の姿が見えただけで、助手席にも、龍生は乗っていなかった。

 不思議に思って顔を前に戻すと、再び咲耶が呆れ顔で。


「秋月から、何も聞いてないのか? 一度にヘリに乗れるのは、運転する東雲(しののめ)さんの他、四人だけだから、自分は前日に別荘に行き、あれこれ準備して待ってる――って、私には言っていたぞ?」


「えっ。……なんだ、そっか。そんなら、べつにいーんだけど。……ん? あれ? だとすると、国吉さんは? 確か、一緒に行くって話だったよな?……ん? そー言や、今朝は姿見てねーぞ? イーリス、国吉さんはどこ行ったんだ?」


 そう言って隣に視線を移すと、ほんの少し前までニヤついていた顔が、不機嫌に(ゆが)んでいる。


「国吉なら、秋月くんと、秋月くん()のもう一人のボディガードさんと一緒に、昨日のうちに別荘に行っちゃったわ。お陰で、こっちは大迷惑よ。こんな大事なこと、昨日突然――しかも、電話で知らされたんだから」


 唇を(とが)らせ、イーリスはふいっと横を向く。

 結太は、『ああ。だから朝、隣から『キャーッ!!』って悲鳴が聞こえた後、バタバタと騒がしい音がしてたのか』と納得し、小さくうなずいた。


「イーリスも、そろそろ一人で起きられるよーになれよ。何でもかんでも、国吉さんに頼りきってっから、いざって時困るんじゃねーか。ちったぁ、自立しろよな。小学生じゃねーんだから」


 朝が弱いイーリスは、学校がある日は必ず、国吉にモーニングコールしてもらっているらしい。

 ――が、それだけで起きることは、滅多にないのだそうだ。

 国吉が朝食を作りに来る時間まで眠り続け、彼に叩き起こされるところから、彼女の一日が始まる……というわけだった。


 イーリスは、ムッとしたように結太を睨みつけると、


「うるさいわね! 結太にはカンケーないことでしょ!? いちいち首突っ込んで来ないで――よッ!!」


 『よッ!!』の言葉を発すると同時に、結太の両頬を指先で強く(つま)み、ギューッと横に引っ張る。


「イ――ッ!……(いて)ててててッ!!――はっ、放せイーリスっ!! 痛ぇーよ!! 痛ぇーーーってッ!!」


 結太の言葉も意に(かい)さず、彼女はぎゅむむと頬を摘み続け、


「フーンだっ。結太のバーカバーカっ。生意気(なまいき)な口()いてると、車から放り出しちゃうんだからっ。……いーい? 大人しくしてるのよ?――ほらっ。わかったら、『はい』って返事しなさい!」


 八つ当たりとしか思えないことを言って、鼻先が()れるのではないかと思えるくらい、顔を近付けて睨んで来る。

 あまりにも顔が近いので、桃花の手前、結太は焦った。


「わ――っ、わかったッ!! わかったから手を放せッ!! 放せってこのヤローーーーーッ!!」


 とにかく早く離れてほしくて、目をつむりながら叫ぶ。

 イーリスはパッと手を放し、『フフン。わかればいいのよ』と、満足げに笑った。



(――ったく! ほんっと勝手で、ムチャクチャなヤツ! これだから、〝お嬢様〟ってのは……)



 ヒリヒリする頬を、両手でさすりさすりしながら、結太は横目でイーリスを盗み見る。



(……けど、初めて会った時は、もー少し可愛い――……っつーか、やたら人懐(ひとなつ)っこくて、親切な美少女って感じだったのにな。なんかすっかり、〝空気読めねー我儘(わがまま)お嬢様〟ってイメージに、変わっちまった気ぃするぜ)



 病院で初めて会った日のことを思い返し、(うら)めしげに見つめていると、視線に気付いたイーリスは、たちまち眉間(みけん)にしわを寄せ、


「はぁ? 何?――まだ文句あるってワケ?」


 お嬢様と言うよりは、レディース暴走族の総長のごとき迫力で(すご)んで来る。

 とっさにふるふると首を振り、正面に向き直ると、桃花が胸の前で両手を組み合わせ、心配そうに、じっとこちらを(うかが)っていた。



(ほわぁ~……。やっぱ伊吹さん見ると、(いや)されるなぁ……。まるで天使。――いや。天使そのものだ。……ハァ。伊吹さん……)



 一気に浮上した結太の顔は、デレっとだらしなく(ゆる)む。

 そのとたん、


「結太様、皆様。そろそろ、場外離着陸場じょうがいりちゃくりくじょう(ヘリコプターが離着陸するところ)に到着します」


 運転手の安田が、前を向いたまま知らせて来た。



(いよいよか――!)



 四人はそれぞれ顔を見合わせると、別荘でのバカンスへの期待からか、誰からともなく、顔をほころばせた。

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