表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
両片想いでラブコメで!~想い人一筋なのに、隣人の金髪碧眼美少女がやたらとちょっかいかけてくるんだが?~  作者: 咲来青
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/156

第4話 結太、秋月邸のソファで悶々とする

 桃花達が水着売り場で大騒ぎしていた頃、結太は龍生の家にいた。

 リビングのソファに座り、いつも以上に苦虫(にがむし)を噛み潰したような顔で、女中頭(じょちゅうがしら)宝神(ほうじん)()れてくれたコーヒーを、ちびちびとすすっている。


 もちろん、結太が〝苦虫を噛み潰したような顔〟をしているのは、コーヒーが不味(まず)いからではない。宝神が淹れるコーヒーが、不味いわけがないのだ。


 だが、美味しいコーヒーを飲んでいても(なお)、そのような顔をせずにはいられない〝何か〟が、彼の身に起こった――ということなのだろう。

 その理由を、既に聞かされていた龍生は苦笑して。


「いい加減、機嫌を直せよ。おまえはもともと不機嫌顔だから、気付かれないと思っているんだろうが、お福をなめるなよ? 幼い頃から知っているんだ。おまえの精神状態など、とうに見抜いているに違いない。次にお福がここへ来た時、まだそんな顔をしていようものなら、確実に質問攻めされるぞ? 覚悟は出来ているんだろうな?」


 結太と違って紅茶派の龍生は、宝神に淹れてもらったダージリンのセカンドフラッシュ(夏摘(なつづ)み茶)を、高級茶器のティーカップに(そそ)ぎ、しみじみと味わっている。

 ただ紅茶を飲んでいるだけだと言うのに、相変わらず、憎らしいくらい絵になる男だなと、結太は、更に眉間(みけん)のしわを深くした。



 ちなみに、余談(よだん)ではあるが、秋月家で使用されている食器(特に茶器)は、高級で上質なものがほとんどだった。


 外国製なら、ウェッジウッドやロイヤルコペンハーゲン、バカラやマイセン、リチャードジノリ、ミントンやロイヤルアルバートなど。国内製なら、ノリタケやナルミ、大倉陶園――陶器や磁器に詳しくない人でも、耳にしたことくらいはあるであろう、有名メーカーのものばかりだ。


 その理由は、龍生の祖母や(そう)祖母が、(そろ)って紅茶好きだったからと思われる。

 彼女達が、紅茶だけでなく、茶器にもこだわっていたために、キッチンの食器棚には、有名メーカーのティーセットが、少なくとも、十数種類は並べられていた。(蔵には、その倍以上の茶器が眠っているが)


 当主の龍之助は日本茶好きで、これらのティーセットを使用することは滅多になかった(来客があった時くらいだろう)が、龍生は、祖母や曾祖母に似て紅茶派だ。これらのティーセットを、その日の気分によって使い分けていた。


 今日のティーセットは、ノリタケの〝しろつめくさ〟シリーズ。温かみのある白地の茶器に、上品なシロツメクサが素描(すがき)(手描きで柄を描く技法)されている、龍生のお気に入りだ。


 今は七月で、シロツメクサの開花時期は過ぎてしまっているが、お気に入りを使用するのに、季節は関係ないのだろう。結太も目にすることの多いティーセットだった。


 宝神は飲み物を淹れに行く際、ほとんどと言っていいほど、結太にも、『どちらのコーヒーカップがよろしいですか?』と訊ねて来るのだが、今日も例外ではなかった。

 茶器に全く興味のない結太は、毎回、『何でもいーよ』と答えている。そのたびに彼女は、ガッカリしたように目を伏せるのだ。


 給仕のし甲斐(がい)がない客で、申し訳ないとは思うが、よくわからないのだから仕方がない。茶を淹れに行く背に向かい、心で『ごめん』と手を合わせるのが、いつものパターンだった。



 ――ということで。


 結太は今日も、どこ製の、何というシリーズのものかもわからないコーヒーカップで、コーヒー以上に渋い顔をしながら、砂糖のみを入れたコーヒーをすすっていた。

 渋い顔の訳はと言うと――……。


「うっせーな! しょーがねーだろっ、ムカつくもんはムカつくんだよ!……ったく、イーリスめ! 『今日は桃花と咲耶とデートなの。どう? (うらや)ましい?』だの、『水着を選びに行くのよ。み・ず・ぎっ。――ウフフっ。今ちょっと想像したでしょ? 桃花の可愛い水着姿、想像しちゃったんでしょ?』だの、『やーねー。イヤらし~わ~。これだから男の子ってー』だの、散々からかって来やがって!……だーっ、もーーーっ!! んなもん、羨ましーし、水着姿だって想像しちまうに決まってんだろ!! オレだって男だ!! 健全な、高校二年の男なんだッ!! 好きな子が水着選びに行くって聞かされて、何の想像もせずにいられるワケねーだろーがッ!! 悪いかチクショーーーーーッ!!」


 そう叫ぶと、結太は両手で頭を抱え、ソファに座ったまま、両足をバタつかせた。

 ……要するに、女同士とは言え、桃花とデート出来るイーリスに嫉妬(しっと)し、()つ、桃花の水着姿を想像しては、大いに心を乱されているのだ。


「あーーーーーッ!! ダメだッ!! イーリスに言われたことが気になっちまって、脳内が勝手に、伊吹さんに(きわ)どい水着あてがって見せつけて来やがるッ!! 伊吹さんの水着ファッションショー状態だぁああああっどーしてくれるコンチクショオオオオオーーーーーーーッ!!」


 今度はソファに突っ伏し、右に左に、ゴロンゴロンと揺れ始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ