ノーサイド
安池が口を開くと、収まらなかったざわめきがピタリと止んだ。みんな安池の次の言葉が気になるのだ。
「今のは独り言と言いました。今日はこれで解散です! 約束通り、早急に着替えて帰宅しなさい! 他の皆さんもお疲れさまでした。もし何か私に提案があるのなら……、後日、改めていらっしゃい」
「会長……それって……」
希望を持って良いのだと思う。そう思うのだが、言葉の真意が聞きたくてそう呼び留めた。しかし安池はくるりと身を返して颯爽と歩き去ってしまう。その姿は、さっきまで子供の様に泣いていた人物と同じとは思えない。
「ありがとうございました!」
幾瀬が身体を折りたたんでお辞儀をしながら安池の背中にそう言った。俺達もそれに続く。
「あっしたぁ!」
「ありがとうございました!」
「センキューソーマッチ! カイチョ! サラ達明日行くデス! 明日またデス、カイチョ! カイチョー!」
安池に続き、無言のままその場を後にする内山田と加納。更にその後ろをぴょこぴょこと亜子が付いて行く。
「アコ!」
サラに呼び止められて亜子は振り返った。
「アコも部活動、一緒にやるデス!」
屈託のないサラの勧誘に、亜子は少しだけ笑ってこう言った。
「ん……考えとく……ね」
そうして生徒会員達が出て行くと、どこからともなく、体育館に拍手が沸き起こった。それは、とても暖かい拍手だった。
試合には負けた。部活動の話しもどうなるかまだ分からない。だけど、お前たちは良くやったと、そう言われているみたいだった。
俺達はそんなギャラリーに深々と一礼をして、会場を後にしたのだった。




