試合終了
それなのに、俺以外の誰も亜子を狙おうとはせず、とうとう生徒会にマッチポイントを握られた。この展開に観戦中の生徒達も大盛り上がり。旧体育館から飛び出して来る生徒も増え、体育館上部の細い通路、ギャラリー部分にも人が溢れた。
「タイム!」
この流れはマズい。そう思った俺はタイムを要求した。もう一度亜子狙いで行くべきだと思ったのだ。だけど俺にはそんな技術はない。申し訳ないけど俺以外の三人に悪役をやらせてしまう事になるので、その覚悟を決めて欲しかった。
「ノー、大丈夫デス、アコを狙わなくてもサラ頑張りマス。もう少し難しいコース狙ってみるデス。アウトになってしまうリスクもあるデスけどやるしかないデス!」
「分かった、じゃあ私もちょっと変則でトスあげるね。あとサラちゃんの高い打点に慣れて来てるみたいだから、もうちょっとギリギリネット際で打ってみようか」
「ふーん、分かった、このまま亜子狙いはなしな」
「なっ……何でだよ……」
あと一点ですべてが台無しになってしまうと言うのに、亜子狙いはしない方針を崩さないサラと幾瀬。それに友城も文句はない。だけど……、だけど俺は……。
「せっかくここまで来たのに! 亜子を狙えば勝てるかも知れないのに!」
自分じゃ狙えないクセに、最低な事を言ってるなと思う。でも、諦めきれない。この、柔らかく俺を包むブルマの感触が今日限りだなんて。最高に魅力的なサラと幾瀬のブルマ姿が今日限りだなんて。ブルマが何の役にも立たないと証明されてしまうなんて!
「タイムアウトは三十秒だ、お戻り願おうか」
まだまだ余裕そうな顔の内山田に急かされる。
「く……!」
俺はみんなを説得出来ないまま、コートに戻るしかなった。サラも幾瀬も、キラキラと前を向いている。苦々しい顔をしたままの俺の肩をポンと叩いて、友城はこう言った。
「まぁやれるだけやろうぜ!」
それは当然だ。こうなったら最後まで、足掻いて足掻いて、少しでも長くブルマをはいていたい!
「行くわよ」
バンッ! と体育館中に音が響いて、安池のジャンプサーブが絶妙なポイントへ落ちてくる。
「絶対に繋ぐ!! ブルマダッシュ!!」
つい声に出てしまっていた。いつもよりも反応速度が上がってる気がして、ギリギリのボールに喰らい付く際いつも心の中で叫んでいた言葉。ブルマダッシュ。
「サラちゃん行くよ!」
「オーケー! ブル魔女……アターック!!」
幾瀬のトスが絶巧だ。狙い通り、ネット際ギリギリ、内山田のブロックの上下左右ここしかないと言うポイントをすり抜ける。しかし、完全に決まったと思ったそれは安池の根性レシーブで拾われ、しかも加納が繋げやすいところにあがっている。
「あげるだけで良いぞ加納! どんなボールでも合わせる!」
「冗談でしょ……!」
加納は意地でもと言った感じで真下に回り込み、美しいトスをあげた。たぶん、本当に乱れても内山田は打って来る。逆に几帳面なトスからのアタックの方が、こちらとしては読みやすかったりするんだよな!
「ほら来た!」
初見で戦意喪失してしまった内山田のスパイクも、ようやく慣れて来たところだ。俺が一番の初心者だと悟った内山田は、チャンスとあらば俺ばかりを狙っていたからな。
「うぐっ……! ブルマッ……ブーストぉ!!」
また声に出してしまった。いつもよりもパワーが出る気がして痛そうなボールをとる時に心の中で叫んでいた言葉。ブルマブースト。
でもやっぱ少し乱れたか……!
「任せろ奏介! 行くぞサラ!」
友城は俺とサラにそれぞれの言葉を掛けて足を突き出し、相変わらずキレッキレの足技でサラに繋げる。サラは空中で強引に身体を捻り、無茶な体勢ながら何とか友城のボールにアタックを合わせる。
「ブル魔女アッ……タァーーーック!!!」
あっ……!
作戦通り、ネット際ギリギリ、コート際ギリギリのサラのスパイクは、内山田のブロックをまたもくぐり抜け、安池の根性レシーブも今度は届かなかった。しかし……。
ピーッ!
笛の音と共に、無情にも赤い旗は上げられた。
「アウト……」
これで、試合終了だ。
ウォォォォォーー!!
強制的に見せられていた筈の全校生徒が、この試合に興奮して拍手を送った。どちらが勝っても影響のない第三者がこんなに大声を出しているのに、俺達は何も言えない。それは勝った生徒会チームも同じだった。




