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ブルマ部  作者: 焼肉一番


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34/40

逆転

「加納! 命懸けで繋げなさい!!」


 ほとんど悲鳴みたいに安池が叫んだ。


「はい!!」


 加納はそれに答えるべくボールに追い付き、中継用のカメラに突っ込みながらレシーブする。ド迫力の絵が撮れたのか、旧体育館から低いどよめきがこちらまで響いて来る。同じクラスにいながら、加納がこんなに熱い奴だなんて知らなかった。いや、加納が熱いと言うより、加納を動かしているのはきっと安池への忠誠心だ。そしてそれは内山田も同じで……。


「良くやったぞ加納! 次で、決める!!!」


 ボールは乱れていたが強引にスパイクを合わせる内山田。


「コハル!」

「うん!」


 サラと幾瀬がブロックに飛ぶが、内山田の強烈なスパイクは二人の腕を後ろへ押し込む様に炸裂。勢いを殺さぬままボールは自陣へ戻り、俺の前へ迫って来る。咄嗟に腕を構えるが間に合わず、それは俺の股間を直撃した。


「よし!!!」


 内山田は勝負が決まったかの様な声をあげて皆を鼓舞した。隣から聞こえてくる感嘆も今日一でかい。この激しいラリーを制したのは大きいかも知れないがまだリードしているのはこっちだ!


「奏介! 大丈夫か!!」


 友城が血相を変えてこちらに走って来る。


「見てたぞ! えげつない所にえげつない角度で入っただろ! 潰れてねぇか?! ピョンピョンしろピョンピョン!」


「ははっ」


 友城がどうしてこんなに慌てているのか予想は付いていたが、俺は何ともない。


「正直一瞬ビビったけどな……、こいつのお陰で命拾いしたぜ」


 そう言って自分の股間を指の関節で軽く叩いて見せた。コンッと硬い音がして、友城の表情が柔らかくなる。それと同時に、さっきの内山田のスパイクよりも大きな歓声が聞こえて来たではないか。


「聞こえるか……奏介……」


「ああ、友城、ブルマすげぇって、そう聞こえるぜ……」


 立ち上がり、サラと幾瀬に無事をアピールする。二人にももちろん歓声は聞こえてたワケで、その目は絶対に勝とうと、そう言っていた。


「勝つぞ!」


『イエス! マイ! ブルマ!』


 ラリーの末に一点を失ったタイミングだと言うのに、俺達の士気は下がるどころか上がっていた。

 俺は正直、全力でやれば負けても良い……そんな風に思っていたかも知れない。せっかくこんな機会が与えられたと言うのに我ながら煮え切らない奴だ。だけど今は違う。ブルマなら……、ブルマなら本当に、勝てるかも知れない! いや、何が何でも勝ちたい! そう思った。

 盛り上がる俺達に対して、生徒会チームの空気は深刻だった。何故ならカメラに突っ込んだ加納と、後頭部を強打した亜子のダメージがかなり残っていたのだ。


「やれます! やらせて下さい会長!」


「お姉ちゃん……止めないで……私、最後までやりたい」


 その様子を見ていた友城が欠片も同情せずにこう言い放つ。


「棄権したって良いんだぜ~? もちろんその場合は俺達の勝ちだけどな!」


「ふざけないでちょうだい! 勝負はまだ始まったばかりよ。内山田、分かってるね? 私達で二人をフォローする。負けは許されない」


「分かっております会長」


 気丈に立ち上がる生徒会チームは、敵ながら少しカッコ良い。ブルマだったらもっとカッコ良いのに。

 試合は再開され、いつしか旧体育館から鳴り物の音が聞こえてくる様になった。得点が入るたびに地響きの様な歓声。試合の勝敗に関わらず、もはや興行として生徒達の心を掴んだ様だ。我慢出来なくなった生徒が何人かこちらの体育館にやって来たりもした。

 もともと互角の戦いをしていたワケだが、負傷者を抱えた生徒会チームの体力は徐々に奪われ、得点に差が付き始めた。安池も内山田も、二人をフォローしようとなりふり構わずボールに喰らい付いているが、気合でどうにか出来る事には限界がある。しかもこちらは最初から徹底して亜子狙いなのだ。卑怯者と言われようとも、こちらもなりふり構ってられない! られない……のだが……。


 ピッ!


 笛の音が鳴り、また一点、こちらの得点になった。亜子はもうボロボロで、それでもようやくといった感じでコートに立ち続けている。


「だいぶ点差も付きマシタ……。これ以上……亜子を狙うのは……」


「ええ、私もそう思ってたの」


 サラの遠慮がちな提案に幾瀬がすぐ賛同した。俺は正直、何を甘い事をと思ったが、ここでこうして戦っているのはサラと幾瀬が居てこそだ。


「良いぜ、こんだけ点差あったら行けんだろ」


 友城も賛成して、俺達は作戦を変更した。

 しかし、作戦変更の弊害は思ったよりも早々に、そして如実に現れてしまう。

 安池と内山田を舐めていたわけではない。むしろ舐めていたのは生徒会の方で、それ故に亜子の参加を良しとしたのだ。その上、サラのポテンシャルの高さ、幾瀬のブルマによる覚醒、友城の足技を予測出来なかった。それらが重なってようやく俺達は生徒会相手に良い勝負をして来れたわけだ。つまり……、この条件が崩れれば……。亜子を狙えないとなれば……。


「うおおおおおお!!!」


 内山田の雄叫びで、生徒会チームの逆転を嫌と言う程思い知らさせる。

 クソッ! 亜子を狙えば簡単なのに! そう思って俺は単独で亜子を狙ってみるが、そう思うようにコントロールも出来ないし威力もない。

 心を鬼にして亜子を狙うと言ったじゃないかサラ。点差が開いたから狙うのを止めたのなら、もうカッコ付けてる余裕はない! 

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