守れないのなら
先攻は生徒会、亜子のサーブだ。
「亜子! ファイトよ! でも入らなくても大丈夫だからね! 誰も怒ったりしないし後でお姉ちゃんがちゃんと取り返してあげるから。それにあんまり強く打つと痣が出来ちゃうからポーンと打つのよ? 怖かったら打たなくても……」
「……そ~れっ」
「亜子! 上手よ!」
どうなる事やらと思ったが、安池の心配をよそにかろうじて亜子はサービスを入れた。山なりにゆっくり落ちてくる。これならさすがに取れる!
「頼んだぞ!」
亜子が良いボールをくれたお陰で幾瀬までスムーズに繋がった。
「はいっ!」
おお、あの大人しそうな幾瀬がアクティブに動いている……! 体育の時間でも髪をおろしたままにしている幾瀬がポニーテール姿を見せてくれた時から良いなと思っていたのだが、凄くカッコ良い! ギャップ良い!
「ナイストス、コハル! ほわちゃ~~~!!」
高い……!
サラがとんでもない打点でスパイクを放つ。狙いも恐ろしい程に正確だ。亜子のサービス後、すぐに亜子の前に立ちはだかっていた安池だったが、あれでは後ろに下がらなければ捉える事は出来ないし、反応出来たとしても後ろには亜子が居る。
「クッ……!」
ピッ! 笛の音が、俺達に一点が入った事を知らせてくれた。
「必殺! 東洋の! ブル魔女アタックデース!」
「やったあああ! 先制点!」
俺のガッツポーズと同じタイミングで旧体育館の方から歓声がこちらまで聞こえて来た。これはブルマ解禁を賭けた戦いなのだが、何でも良いから生徒会に勝って欲しいと思っている生徒が一定数以上いるのだろう。ダイソンに私物を吸われた生徒は少なくはないからな。
「見たかぁぁ!!」
歓声に気付いて、このターン何もしていない友城がカメラに向かって吠える。
「まだまだ! 次も行くよ!」
浮かれた俺達を引き締めたのは幾瀬だ。
「ああ、良いね幾瀬、乗って来た!」
「うん……! 私今、生まれて初めてブルマで運動してるけど……、最高だよ! 動きやすいだけじゃなくて、解放感と共に気合が漲って来る感じだよ!」
そうか、幾瀬のこのアクティブさはブルマのお陰だったんだ。ああ、分かるぜ、その解放感と気合!
さぁ負けてられない。次は俺のサーブだ。とりあえずサーブミスで点をくれてやるのは癪なのでアンダーハンドサーブ、いわゆる安全サーブってやつで確実に入れる。入れる事だけを考えて打ったが、それは亜子の方へ流れた。亜子はレシーブの構えを見せる。が、ボールは目前で片手を伸ばした安池に弾かれ、コートの外へ飛び出した。
「しまった……!」
「やったぜ奏介! サービスエース! もう一本! もう一本!」
今のでサービスエース?! こりゃ……、想像以上に亜子が穴……と言うか、安池が機能してないのがでかいぞ。
もう一本……。とりあえず気負わず、同じ様に打つ。
よし、なかなか面白いところへ飛んだぞ。安池が受けようとキュキュッと床を鳴らして下がるが、お尻がドンと亜子にぶつかる。
「あっ! ごめんなさい亜子! 大丈夫?!」
タンッと、何の威力もないボールがただ重力に従って落ちた。
「サービスエーース!」
「凄いデスソースケ! 連続ポイントデス!」
凄いのは俺じゃなくて安池のシスコンっぷりだがな!
「会長!」
内山田がたまらず声を出す。さすがに安池も強気な態度には出れないのか、小さく「分かってるわ」と呟いた様だった。
「お姉ちゃん……」
「なっ……なぁに亜子? ごめんね、痛かった?」
ふるふると首を振って、亜子はこう続けた。
「私の前に立たなくて良い……。このままじゃ、お姉ちゃんが悪者になっちゃう……。試合結果がどうなっても、お姉ちゃんだけは強くてカッコ良いままじゃなきゃ……私は嫌だ」
「亜子……」
きゅっと口を引き結んで、安池は立ち上がった。そしてこちらを見据えて続ける。
「安心しなさい亜子。試合結果がどうなってもって言ったわね? 亜子がそんなに覚悟しているなら、私だって覚悟を決めるわ。あなたを守れないのなら、試合には必ず勝つ! 良いわね、内山田! 加納!」
クソ……。三点か。とりあえずもうちょっと点を取っておきたかったが早々に吹っ切れちまったみたいだな。だがやる事は変わらない。継続して亜子狙いで行く!
「んっ……!」
言っても安全サーブだ。亜子もこれくらいは受けられるらしい。しかしボールは乱れている。加納がフォローしようと床に滑り込み、何とか手に触れたものの内山田には繋がらない。その絶望的な軌道のボールに飛び付いたのは安池だった。




