違う結論
「美幸ちゃーん、俺来たよー」
いつもの様に俺の母さんをちゃん付けにして、友城が慣れた様子で家へ上がりこむ。
「あら、ともちー久しぶりじゃない? 真面目に勉強でもしてたの?」
母さんは母さんで、ちゃん付けを咎める事もなく、友城を昔ながらのあだ名で迎え入れる。
「ちげぇよ、奏介とゲームやんのにパソコンないと出来ねぇから……」
「あっ! 小春ちゃん!! いらっしゃ……!! えっ……? ええっ?! うぇうぇうぇるかむ?!」
友城の言葉を遮って、案の定、二人を見た母さんははしゃいだ。大いにはしゃいで国際結婚の大変さを耳打ちして来たり、二股交際の危険性をジェスチャーして来たりしたが、面倒臭いのでもう友城の彼女だっつー事にして大人しくさせた。
「なぁなぁなんで? なんで美幸ちゃん幾瀬の事知ってんの?」
「友城! そんな事言ってる場合じゃないだろう! サラに頼られているんだぞ! 分かってんのか!」
「うん、分かってる。で? なんで幾瀬の事知ってんの?」
「母さん! お茶を四人分頼む! さぁこっちだ!」
友城はしばらく大人しくなってくれなかったがスルーを決め込む。断固あれは俺と幾瀬の秘密なのだ! いくら苦しくても俺からは言えないのだ!
六畳間に、ベット、勉強机と言う名のパソコンスペース、本棚、冬はこたつになる小さなテーブル……。ここに四人と言うのは少々定員オーバーであるが、女子二人をベットに座らせ、俺は友城と座布団に座った。
「悪いなサラ、これがジャパニーズ住宅事情だ」
「フー! ジャパニーズフレンズのお部屋もお初デスガ、年頃のボーイの部屋もお初デス……! 独特なスメ~ル」
「本当だ、独特の匂いする……」
「意外だな! ボーイの部屋お初とか、良い! 良いな奏介! 初めて二つももらって良いな!」
黙れ友城。俺の部屋臭い言われた。死にたい。
「それにしても心配したよ、二人共居ねぇんだもん」
俺の気も知らないで話しを進めだす友城。みんなが帰ったら一本まるっと使って消臭スプレーしよ……。
「ソーリー……。実はあの後サラとコハル話し合って、ある結論に達したデス」
ふむ……。俺と友城が話してたみたいに、やはりサラと幾瀬も思うところを話し合っていたのだな。
サラは幾瀬に向き直って続きを促す。
「うん……。あのね……、私やっぱり変だと思うの、生徒会のあのやり方」
「ああ、俺だってそう思う」
「でも、うちの学校って凄く生徒会の権力が強いでしょう? 特に、今の生徒会は歴代最強って言われてる……」
そうなのだ。うちの学校は数年前まで普通の公立高校だったのだが、生徒数が減り続けた結果、学区外の公立高校に吸収される事が決まっていた。ところがそれをある物好きな大金持ちが買収し、私立校として存続する事になったのだが……、その物好きな金持ちってのが現生徒会長と会計補佐の安池姉妹、亜弥と亜子の祖父なのである。
まぁ、他所の高校より少々規則は厳しいかも知れないが、普通に通ってる分には特に文句もない。それで徒歩圏内の高校に通えるのだからと、俺は概ね私立化には感謝している。みんなもそうだから、少しくらい厳しくても生徒会に逆らおうとも思わないのだろう。
そう考えると、やっぱり生徒会に刃向かうのは得策ではない。
「ああ、その通りだ。今回の事で生徒会に目を付けられたのは間違いない。でも安心しろよ、俺と友城も話し合ったんだ! 二人を孤立させる様な事は絶対しないし、ルールさえ分かればサラだってちゃんと適応出来る筈だ。少しずつ、日常を取り戻せるようにみんなでフォローし合えば……」
幾瀬の顔が曇っている。
そう、どうやらサラと幾瀬は、俺達とは違う方向で気持ちを共有し、違う結論を出した様である。




