やらせちまってごめんね
なんと言って良いものかと悩んでいると、友城の方から話しを続けてくれた。
「別にあれだから、なんか、走りたかっただけだから」
「ああ……」
「食い過ぎたしよ、食後の運動」
「ああ……」
「お前はああ星人かよ」
「……ああ」
「何だよ、バーカ」
「ああ……」
「……ちぇー……」
何でもない様に振る舞う友城だが、このまま流してしまって良い事とは思えない。気は重いが、やっぱりちゃんと考えておかなきゃだよな、サラの事。
「友城、俺達何も出来なかったけどさ……」
「うん……」
良かった。友城もこの話しを避けたいワケじゃなさそうだ。
「相手は生徒会だろ? 転校初日にこんな目に合っちまったサラは可愛そうだったけど、この学校で生徒会がどう言う存在なのか、この国で今ブルマがどう言う存在なのか、俺達でちゃんと説明してさ、その……フォローして行ってやれば良い……よな?」
「……おぅ、うーんまぁ別に……、それで良いんじゃね。つかそのつもりだったし」
「うん、で、お前休み時間必ず来いよ」
「そのつもりだったですしー」
「生徒会に目ぇ付けられたって分かったら、他の生徒からはサラと距離取ろうって思われるだろうから……」
「だからそのつもりだっつーの」
「そうか……」
別に俺がグダグダ言わなくても、友城は友城でそりゃちゃんと考えているよな。無茶苦茶な様で居て、案外気を使える奴なんだ。
「五時限目なに?」
「何だったっけ……」
「とりあえず移動ねぇよな? 終わったらすぐ行くわ」
「おう」
サラの為にと、勝手に友城とそう約束したけど……。
――五時限目には、幾瀬もサラも、居なかった。
俺達は、安易にサラをフォローしてやれば良いなんて、とりあえずの結論を出した事を後悔していた。
本当は、二人共とても傷付いていたのだ。俺達の想像を遥かに超えるくらい傷付いていたのだ。だから俺達はモテない。女子の気持ちが全然分かってないから……、そうお互いを罵り合った。
「俺も帰ろっかな」
つまらなさそうに友城が言う。俺だって帰りたい。
「帰ってどうすんの」
「オンゲ繋げるくらい……。ま、居るか」
「そうしろよ」
「居るからよ、帰りお前んち寄らせろよ」
「良いよ」
そうして、思いっきり惰性で最後まで授業を受け(いつもだけど)俺達は足取り重く家路に着いた。石ころでも転がっていたならコツンと蹴り飛ばしたい。そうだ、そうしよう、石ころを探しながら歩こう……。
石ころ……石ころ……。案外ないもんだな……、石ころを蹴れないままに、もうすぐ家に着いちまうじゃねぇか……。
「ソースケ! トモキ!」
明るいサラの声。
「大嶋君! 田中君!」
可愛い幾瀬の声。
「俺、自分で思ってる以上に今日の事へこんでるかも。何だか二人の声が聞こえてくる様だよ」
「ははっ、馬鹿だな友城! ……俺もだよ……」
小石を探しながら歩いていた俺達に、その幻聴は聞こえ続ける。
「二人サン! 前を見て歩かないとデンジャーデンジャー!」
その声は一気に近付いて、まさかと顔を上げたところに、二人は立っていた。
「サラ! 幾瀬! どうして……帰ったんじゃないのか?!」
幾瀬の顔は明らかに泣いた後だったが、表情は二人共妙に明るかった。
「転校初日に授業バックレ! やっちまったデスネ! コハル!」
「ご……ごめんね……、私が収まんなくなっちゃって……やらせちまってごめんね」
なんと……、サラを慰めてくれるだろうと思っていた幾瀬の方が、逆に慰められていた様だ。あと幾瀬の日本語まで乱れている。
「ははっ! 良いじゃん良いじゃん! 出たくねぇ時は出なくたって良いんだよ! なっ! 奏介!」
友城はサラを見ると途端に元気を取り戻した。
「ああ! 良い良い! 四人でどっか寄り道して帰るかー!」
思ったよりも明るい二人に安心して、俺もそう提案してみた。ところが、二人はそれに乗っては来なかった。
「あの……、ちょっと二人に相談したい事があって……。それでね、あんまり人の居ないところが良くって……大嶋君の家、行っちゃダメかな?!」
「えっ! おっ……俺んち?!」
二日続けて幾瀬がうちに来るとか絶対また母さんがはしゃぐぞ!
「うっ……うん、だからここで待ってたの。待ち伏せみたいにしちゃってごめん……」
「えっ? 何で幾瀬が奏介の家知ってんだ?」
幾瀬があっ! と口元を抑える。ああもう、嘘が下手と言うか何と言うか……、可愛いんだよこの野郎。
「おう! 良いぞ! みんな俺んち来い! な! 行くぞ友城ぃ!」
「え? 何で? 何でなんだ?」
友城のもっともな疑問をスルーして俺は三人を自宅へ招き入れた。
さぁ、相談事とやらをじっくり聞かせてもらおうじゃないか! 俺達が何でも解決してやるぜ!




