キャンディ
ガシャンッ!
屋上から追い出され、俺達は手前の踊り場で呆然と立ち尽くした。直後は扉を叩いたり蹴ったりしてみたが、すぐに無駄だと悟ったのだ。
「くっそ……。ごめんなサラ、お前の弁当……取られちまって……」
もちろん友城の謝る事ではないが、友城はサラにそう言って頭を下げた。友城がこんなに熱くて男気のある奴だったなんて初めて知ったよ。
「いくらなんでも酷過ぎるよ……。一方的過ぎるよ……」
幾瀬はそう言ってサラの肩に手を回して撫でた。
「アイドンノゥ……。ブルマはやはり日本人に嫌われているデスカ……? ブルマのお弁当もダメだなんて……」
日本が大好きで、ブルマが大好きで、俺達と仲良くしたくてあんなにお弁当を用意して来たのに……、サラの想いは粉々に打ち砕かれてしまった。
違う国に飛び込んでくるんだ、いくら好きとは言え不安もあっただろう、それなのにあんなに明るく元気に振る舞っていたサラ。そのサラに、こんな悲しい顔をさせちゃダメだろう。
なんと声を掛けて良いか、分からなかった。
今現在、日本でブルマがどう認知されているのか、この学校において生徒会がいかに大きな権力か、そんな事を今のサラに言ったところで、何の慰めにもなりやしない。
「あ……」
と、サラが制服のポケットをまさぐって何かを取り出した。
「忘れてた! これが残ってたデス!」
「それは……?」
サラの両手を覗き込むと、そこには一つ一つ包装されたキャンディがいくつか乗っていた。
「ふふっ! これは手作りのアメちゃんデス! 日本人アメちゃん配る文化ある聞いたデス。これはお弁当とは違うからここに入れてたの忘れてたデス!」
そう言って配られたそのキャンディは、ブルマの形をしていた……。
「サラちゃん……! あなた……!」
幾瀬がうっと込み上げたのが分かった。そのまま、幾瀬の目からとうとう涙がこぼれ落ちる。
「お弁当は取られちゃったデスけど……三人サンこれ舐めてクダサイ」
ああ、サラ、あんな仕打ちを受けて、どうしてお前はまだそうやって笑えるんだ! もう良い! もう良いじゃないか! 憎しみに顔を歪めたって誰もお前を責めやしない!
「チクショーーーーーーッ!」
友城がたまらなくなってその場を駆け出した。俺も続く。
「友城! 待て!」
友城を追い掛けて走る。咄嗟の判断だったが、きっと幾瀬がサラの傍に居てくれるし、女子ならではの上手いフォローもしてくれるだろう。なら俺は、やっぱり友城のフォローをしてやらなくちゃな。
「はぁっ……はぁっ……はぁ……」
「おい……こんな息切れるまで走る事ないだろ……はぁ……はぁ……」
「あの感じで走り出して、どっかで追い付かれてみろ、どんな顔して良いか分かんねぇだろうが」
「確かに……」
結局、俺達は一階の昇降口付近まで走り切ってしまった。昼休みにこの辺で時間を潰してる奴は居ない。友城は下駄箱の側面に背中を預けてズルズルとその場にへたり込んでしまった。俺も隣りへ腰掛ける。
「あーあ……、すげぇ楽しかったのになー」
悲壮な感じで駆け出した割には、友城は軽い口調でそう言った。だけどそう装っているだけで、本当は何も出来なかった自分にへこんでるのくらい俺には分かるさ。なんだかんだ言って長い付き合いだろ。




