介入
うっ……と言葉を詰まらせる俺達。状況を理解していないサラだけが思うままの言葉を口にする。
「オー、ナイスプロポーションなジャパニーズ女子高生……そっちの子もベリーキュートですがジャパニーズ女子小学生? 何故ここに小学生が……」
「しょっ……小学生……じゃ、ない……」
小学生と言われた亜子が、一応の抗議をして下を向いてしまう。その仕草と顔付は間違われても仕方がないとも言えるのだが……、こんなところに小学生が居たらオカシイし、ちゃんとこの高校の制服を着ているので気付いて欲しかった。
「失敬ね! 亜子はれっきとしたジャパニーズ女子高生よっ! ほら! ちゃんとご覧なさい?! こんなに背も伸びたし胸だって立派なものだわ!」
亜子の代わりに安池がおおいに怒り、自分の胸元くらいまでしかない身長の亜子の後ろに回ると、曰く立派な胸を両側から鷲掴みした。
「うあっ……おっ、お姉ちゃんっ……やっ、やぁ……ヤダよぉ……!」
背後から良いように揉まれている亜子は、なんとかその手から逃れようとするのだがどうにも力の差があるのか、遠慮しているのか、とりあえず二人でじゃれ合っている様にしか見えない。
「あらぁ? 亜子……、あなたまた大きくなったんじゃなくって? ふふっ……お姉ちゃんすぐに抜かされちゃいそ♪」
それを聞いて一瞬満更でもなさそうな顔を見せた亜子だが、亜子とは逆の意味で高校生には見えない安池の胸は下手なグラビアアイドルよりも立派である。それを追い越せればさぞ立派な胸になるだろうが、女子の成長期は男子と違ってもっと早く、中学生くらいまでと聞いた事があるので……まぁお察しなのだが。
「マズいサラ……、あいつはこの学校の生徒会長だ……」
サラの耳元に囁く。
「何がマズいかは後で説明するからとりあえず弁当片付けて撤収するぞ」
言いながらタッパーの蓋を閉めて行くが、サラはきょとんとしたままだ。友城も幾瀬も、近いところに置かれていたタッパーの蓋を次々と閉めているが、さすがに全部隠す前に安池は亜子の胸を揉むのを止めた。
「お待ちなさい!」
「は……はい?」
「公共の場である屋上で、何か相応しくないものを持ちこんで騒いでいたのではないでしょうね?」
「めめめ滅相もございません!」
安池は美人だ。誰が見ても美人で、サラの言う通りナイスプロポーションである。俺の好みではないのだがさすがにこう近寄られて高圧的な態度を取られると……必要以上に卑屈な気持ちになって来るーっ!
「わぁ……美味しそう……」
また定位置である安池の後ろに戻った亜子が、広げられたままのタッパーの中身を見てぽそりと言った。そのタッパーの中身は、デザートにと持って来ていたブルマクッキーだ。ココア生地でこんがり焼き、両サイドをプレーン生地で作って二本ラインを表現した傑作である! そう! 誰がどう見てもブルマと分かる様な傑作なのである!
「うふふっ! いっぱいあるからどうぞ食べてくだサイ! アコ!」
またもや速攻で名前を覚えたサラは、持ち前のコミュニケーション能力を発揮してタッパーを亜子の方へと差し出した。目の前でふわりと甘い香りがしたのであろう、亜子は目を輝かせてブルマクッキーを見詰めている。
「何ですの? これは……」
亜子に差し出されたクッキーだが、上から安池がひょいと摘まんだ。それを見た亜子も続いてブルマクッキーを摘まみ、二人でまじまじとその形を確認している。ああ、いたたまれない!
それがブルマの形だと、恐らく二人とも理解した筈だ。その上でサラが満面の笑みで言う。
「それはブルマクッキー!」
「……は? ブルマ……?」
心底イヤそうに、安池がサラの言葉を繰り返した。それをどう捉えたのか、サラが言葉を重ねる。
「そう! ブルマのクッキーデース!」
「なっ……?」
「ははは! 珍しいもん売ってるんだなー! ブルマの形のクッキーだなんてぇ! 形は変わってるけど美味しいんだもんこりゃ買っちゃうよなー!」
「何言うデスカソースケ! これはサラの手作りデース! 今日のお弁当はオール手作りデスヨ!」
せめてと思った俺の救出作戦あっと言う間に失敗ー!
それどころか、サラは閉めたタッパーの蓋を次々と開けだし二人に勧め出す。
「これも、これも! こっちは特に自信作デス! ニポン人好きなお弁当勉強して、全部ブルマにアレンジデ~ス!」
「なっ……ななっ……!」
サラの怒涛のブルマ攻撃にまだ言葉を返せない安池。さぁこれもと突き出されたラップに包まれたブルマおにぎりを見てわなわなと震えている。
サクッ……。
その横で、亜子は甘い香りに誘われるままブルマクッキーを口に入れた。
「いけません亜子!」
ビクリと身体を震わせて、亜子は食べかけのクッキーを落としてしまう。
「あっ……」
「オー、大丈夫デスアコ。まだたくさんあるから……」
「結構!」
そう言うと安池はグイと強引に亜子を後ろに隠し、ブルマクッキーの入ったタッパーを拒絶した。




