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僕だけは知っている〜〜そこがチュートリアルダンジョンである事実を〜〜  作者: バゑサミコ酢
第4章 僕が【死を縫い付ける裁縫師《デス・テーラー》】と呼ばれるようになるまで
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第203話 七不思議の数々——それはくだらない噂話

「そういえば、私も七不思議の噂を聞いたことがあります」

「……え? シトリンも?」

「はい」



 シトリンが七不思議の噂に反応を示した。

 僕としては強いて追求して盛り上がる話題じゃないからどうでもよかったんだけれど、他でもない僕の可愛い妹分が掘り下げてきたのだから、これを聞かないわけにはいかない。



「寮母のおば様のお手伝いをしていた折です。生徒の皆様が噂するのを耳にしたのです」

「へぇ〜〜シトリンも……それで、どんな内容なの?」

「はい! それは……」






——第1の噂——


『校舎裏の薮の中には影から這い出る男子生徒の幽霊が現れる』





「校舎裏の薮ね〜〜? あんなところで幽霊なんて出るの? あそこで初めてヴェルテと出会ったっけ? 確かあの時にはヴェルテに驚かれたように見つめられてさぁ〜〜あれはなんだったんだろう?」





——第2の噂——


『冒険科の生徒の中には幽霊がいる。ダンジョン内で秘密を語り、これを喋ってしまうと、惨たらしい呪いを掛けられてしまう。決して秘密をバラしてはいけない』





「ダンジョン試験の時にさ〜〜ヴェルテとペアになって……なぜか僕『オーバルケ?』とか呼ばれて……? それに妙に怯えられてたんだよね? 学食のメニューが、オールベジタリアンに変貌するって脅したのは、さすがに可哀想だったかなぁ……」





——第3の噂——


『乙女の顔に三つ目は存在しない。怒りを買えば青い輝きの洗礼を受ける。決して追いつかれてはならない。刃が肉食い込む血の祭典開幕を招くからだ』





「青い輝きの洗礼? 刃が食い込む? 乙女? 何それ——アッハッハ〜〜まるでアイリスのことみたいじゃん〜〜この噂!」

「……はあ?」

「……あ。いや……なんでも、ないです……」





——第4の噂——


『学園裏の塀。夕刻に現れる黒い影。それは外部からの侵入者の兆し。——学園の生徒の中には影の怪人が居る』



「学園裏の塀? あそこはよく通るけど……」

「そうですね。ウィリア様は門限を破ってよく壁を飛び越えてらっしゃいますよね!」

「……ッぐ。ご、ごめんて〜〜シトリン」

「別に、私は怒ってなんていません。ぷ〜〜んだ!」

「ほんと、ごめんて……」




——第5の噂——


『学園アルクス女子寮の大浴場では、いつもきまって生徒数よりも1枚多くのタオルが消える。そこには誰も知らない女生徒がいるようなのだ。それはブラウンの長い髪、それと背の低い少女である』



「ねぇ、ウィリア? 本当に何も思うことがないの?」

「だから言ってるだろう? 思うことは何もないって!?」

「あっそう。呆れた」

「なんで?!」





——第6の噂——


『男子寮には寮母を手助けするメイドが居る。彼女はどこのメイド??』



「「…………」」

「ウィリア様? アイリス様? なぜ私の顔を見るのですか?」





 シトリンが語って聞かせてくれた七不思議の話題はユーモアがある一方でどこまでもくだらない内容だった。

 所詮は噂話に尾びれ背びれのついたフィクションストーリーに過ぎない。これほどくだらないことは他にないだろう。


 でも……


 カワイイうちの妹が一生懸命に語ってくれたんだから、くだらない話題でも幾分かはまともに聞くことができたってもんだ。

 それだけが唯一の救いだ。


 だが、しかし……



「ねぇ〜ウィル? この七不思議なんだけど……」



 どういうわけかアイリスだけがさっきから浮かない顔をしているんだ。

 シトリンが一生懸命に語っているというのに、何が不満だっていうのだろうか? 


 シトリンの可愛さの前には他に言葉などいらないだろう! それとも、うちの妹が可愛くねぇ〜ってか?! けしからん奴だな!!


 と、ムカムカッとはしたものの——アイリスの訝しむ表情の理由は確実に七不思議が原因だってことは必然的に分かる。

 アイリスはこういったくだらない噂話なんてまったく興味なんてないと思ってた。

 現に耳にタコができるぐらい噂話を耳にしてきたことに関して嫌気が差してるみたいだったし——これ以外に彼女の表情の説明がつかないだろ?


 と思っていたらだ——



「これって七不思議のほとんどがウィリアのことを言ってるんじゃないの?」

「……はあ?」



 確かに七不思議が関与していたことは正解だった。

 しかし、僕は彼女の発言に耳を疑った。



「アイリス……君は何を言ってるんだ?」

「いや、確証はないのよ? だけど、そんな気がするのよね〜〜」

「はぁあ??」



 僕が七不思議の噂元だと言い出したんだ。

 そんなわけなわけないだろうに——アイリスは何を言ってるんだろう? 

 頭でも打ったのかな?



「そんなわけないだろう? 何を突飛なことを——」

「だって、あなたたちの話を聞いていると……」

「どこにそんな要素があった?!」

「……う〜〜ん……ね?」

「『ね』ってなんだよ!?」



 別に証拠があるわけでもない。だと言うのにアイリスは是が非でも僕を原因にしたてあげたいみたいだ。 

 そこまでして僕を責めたいのかよ?!



「今話してたら内容でも凄く抽象的だっただろう? それがなんで僕のことになるんだよ!」

「それは……ね? ウィリアだから……かな?」

「なんだそれ?!」

「そうでしょう? シトリンちゃん」

「う〜〜ん? はいッ!」

「なぜシトリンまで同調するの!?」


 

 僕の心は傷ついた。


 別に七不思議の発起人みたいに、ありもしないレッテルを貼られるのは別に痛くも痒くもないんだ。

 だけど、何が1番悲しいって……? 

 それはシトリンが僕を売ってあっちサイド(アイリス)に寝返ったことが1番悲しいんだ。


 『私は関係ないもん♪』ってフリして逃げていくなんて……


 シトリンッ!! 君って奴は——!?


 君は噂の6番目ぐらいに登場してたでしょうがぁああ!!














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