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【コミカライズ企画進行中】婚約破棄された悪役令嬢は聖女となって竜族と趣味を満喫する  作者:


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11/23

無事、ガラスアクセサリーが作れそうです

 庭でのお茶会の間、私はほとんどボーとしていた。


 弟子と言われて満足なはずなのに、モヤモヤしている。そのせいか、ニアとキヌファの話が耳に入ってこない。


「……おい。おい、どうした?」

「は、はい!」


 声をかけられて私は反射的に返事をした。目の前にはニアの顔。キヌファの姿がない。


「あれ? キヌファ様は?」


 ニアがムッとする。


「さっき、帰った」

「すみません……」


 客人をちゃんと見送りできないなんて、弟子失格すぎる。


 落ち込む私にニアが低い声で訊ねた。


「まだ、キヌファと一緒にいたかったのか?」

「どうしてですか?」


 キヌファと話が盛り上がった記憶もないし、そう思われる理由が分からない。


 首を傾げる私から逃げるようにニアが顔を背ける。


「いや、いい。昼飯を食べたらガラス作りをするぞ」


 ニアはさっさとテーブルセットを片付けて丸太小屋に戻っていった。



 午後。私は青い炎と格闘していた。


 ガラス作りの間はすべてを忘れて集中できる。


 私はピンセットでつまんだガラス片を炎にかざした。トロリとガラスが溶けるタイミングに合わせて鉄の棒に巻きつけ、形を整える。そこに他の色のガラスを加え、自分が出したい色にする……のだが、うまくいかない。


 どうやってもニアのガラス作品のような色がでない。


 私はあの夜明け色のガラス玉を作ろうと、いろんなガラスを組み合わせ、試行錯誤した。でも、全然だめで。


 それで、ニアのガラス作りをこっそり観察していた。すると、なんとニアはなにもしていなかった。

 最初は、そんなはずはない。ガラスの配合の違いか、こっそり染料のようなものを混ぜているのだろう。そう考えていた。


 けど、本当になにもしていない。


 私は試しにニアと同じ原料からガラス作品を作った。

 すると、私は透明なガラス玉になったのに、ニアは夜明け色に染まった作品が完成。ちなみに作品は皿……らしい。私には陸に打ち上げられたタコ……にしか見えなかったけど、そこは黙っておく。


「はぁ」


 ため息もこぼれてしまう。

 そんな私の背後からニアが声をかけてきた。


「ガラスに関しては、意外と器用だよな」

「どちらかというと、ニアが不器用なだけだと思ぃ……」


 ジロリとにらまれていることに気づき、口を閉じる。

 ニアの様子をうかがうように見上げると、プッと吹き出された。柔らかい紫の瞳。でも、それは弟子を見守る目。


 ……私は、なにが不満なんだろう。


 私の葛藤に気づいていないニアが軽く手をふる。


「別にオレが不器用なのは事実だから、いいんだよ。それより、なにか作りたいモノはあるか?」

「え?」

「ガラスの扱いにも慣れてきたし、ガラス玉以外のモノを作ってもいいだろ」

「それなら!」


 私はずっと考えていたことを提案した。


「ガラスのアクセサリーを作ってみたいです!」

「アクセサリー?」

「はい。ガラスの形を丸ではなく(しずく)形にして、それをネックレスやイヤリングにつけるんです」


 ニアが不思議そうに首を傾げる。


「そういうのは宝石で作るんじゃないのか?」

「宝石にはない色でアクセサリーを作るんです」

「あー、そういうことか。面白そうだし、好きにやってみろ」

「はい!」


 私さっそく試しに何個か作ってみた。雫形以外に三角や四角など、いろんな形のガラスが転がる。


「形は……なんとか作れそう。あとは色だけ」


 ほっと一息ついた私は額から流れる汗をタオルで拭いた。ニアを見れば、ガラスが溶けた窯をジッと覗き、ガラスの材料の溶け具合を見定めている。


 私はそっと工房を出た。水分補給のためコップに水をいれて、塩飴を持って戻る。


 すると、ニアは私が工房から出た時と同じ姿勢のままだった。私は水を置いて、後ろからこっそりニアの作業を覗く。


 ニアが近くに置いている吹き棒を見ることなく手に取る。武骨な手に、筋肉がしっかりと浮き出た二の腕。

 狙いを定めたように手が動き、吹き棒の先端に溶けたガラスを絡めとる。


 素早く窯から出し、吹き棒を回しながら空気を吹き込んだ。溶けたガラスはシャボン玉のように一瞬で膨らむ。それを隣の窯に入れ、ガラスに熱をくわえてから再び窯から出した。

 次は布を当てて形を整えていく。これを何回か繰り返すことで、ガラスはコップや皿などの形になる。


 ガラスを見つめる紫の瞳。通った鼻筋にキツく結ばれた唇。シャープな顎に太い首。


 真剣なニアの姿に、つい目を奪われてしまう……


 ただ、不思議なことにニアが汗をかいているところを、あまり見たことがない。工房はこんなに暑いのに。


 ニアは暑さに強いから、あまり汗をかかない、と言っていたけど。でも、水分は取ったほうがいい。


 私はニアの作業が一段落ついたところで声をかけた。


「お疲れ様です。水をどうぞ」

「おう。ありがとう」


 ニアが水を受け取る。私は塩飴をなめながら水を飲んだ。冷めた水が体に染み渡って気持ちいい。病みつきになりそうな瞬間。

 そこで視線を感じて顔をあげる。そこには、コップを持ったまま動きを止めたニアが。


「どうかしましたか?」

「あ……いや、なんでもない」


 ニアがコップに口をつける。チラチラとこちらを見ながら。さすがに、これは気になる。


「あの、私、なにかやらかしました?」


 ガラス玉を作り始めた頃は服を燃やしたり、髪を焦がしたり、いろいろやらかした自覚はある。でも、最近はしなくなった……はず。


 私の質問にニアが気まずそうに視線をそらす。


「いや、その……オレがいないところでキヌファと何を話していたのか……ちょっと、その……気になって、な」

「キヌファ様と?」


 私は顎に手をそえて記憶をたどった。ボーとしている時間が多かったので、あまり覚えていないけど……


「ニアは私のことになると、周りが見えなくなる……というようなことを言われました」


 ニアが顔を背けて小さく舌打ちする。


「チッ。あいつ、余計なことを」

「周りが見えなくなるって、どういうことですか?」

「そ、それはだな」


 焦ったようにニアが視線をさまよわす。そして、私が作ったガラス玉に目を止めた。


「で、弟子だからな! 弟子に教えることに集中して、周りが見えなくなるってことだ!」


 弟子……


 なんども聞いたその言葉に私の中でナニかがキレる。


「どうせ、私は不出来な弟子です!」


 気がつくと私は机を叩いて立ち上がっていた。珍しくニアが驚いた顔をしている。


 私は慌てて空になったコップを持った。


「ごはん作ってきます」


 なぜ怒鳴ったりしたのか分からない。とにかく恥ずかしい私は逃げるように工房から出ていった。



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