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11 星座占いと月野瀬入鹿

2日空いての更新になり、申し訳ありません。

ですが、新キャラぶち込みます!漫画並みの早さで!

『ーー今日も星座占い行きましょうか!』



 月曜日の朝一に、星座占いとはーー



 嫌な結果になることが目に見えている。

 俺は素早くリモコンを取るが、同時に半居候中の如月が手首を掴んできて、馬鹿力で手を痺れさせてくる。



「何がしたいんだ」

「ーー朝ドラでしょ? 何? 朝からアニメーション目指す主人公のドラマに涙?」

「……古いな。あれはこないだ終わっている」



 馬鹿にするように笑うと、如月は頬を膨らませる。

 自分が知らなかっただけのことで、ふてくされるとこちらとしては良い気味だ。



 ーー馬鹿め、朝ドラは一話から見ることに意味があるんだよ……星座占いのように週五日リセットされないんだよ。




「どうせ、水瓶座の方は今日は無視されるでしょうとか言って、毎日無視されてるっての、こちとら空気まで言ってるっての」

「そこまで自分を蔑んめるなんて……」

「可哀想な子を見る目で俺を哀れむな!!」



 自分を蔑んでみると、放送事故レベルの顔で心配されてしまう。

 ちなみに、ここで林檎で食ってかかってくるのがお決まりだが、今日は朝からおとももち(友達をふざけて言ってみる)とモーニングを食べに行った。



 登校前からモーニングとは、我が妹はませている。

 まるで名古屋のお年寄りだ。



「……てか、俺達もモーニング行とか言ってみるか? 突然だけど」

「良いけど……もう、朝食べたのに?」

「明日だよ。明日の朝、林檎を連れてモーニング」

「林檎ちゃん連れて行くと、あれこれ付いてくるじゃない」



 未央ちゃんと先輩をオプション扱いするな、あの二人はあの二人でちゃんとキャラ立ちしているだから。



「そう、まるで某ハンバーガー屋の玩具の様に」

「結果オプションじゃねーか!」

「それより星座占い始まってる。私はーーやった!! 十一位から二位までに入ってない!」



 如月はテレビに目を移すと、立ち上がって満面の笑みを浮かべる。

 本当に入っていないーーが、それは俺も同じだ。



「……俺も入ってないか」

「勝負!」

「何の博打だよ。一位になんて、一度としてなったことねーぞ俺……」



 まあ、時々しか見ないからーーな。



 如月にそう言いつつ、実は一位かもしれないと期待に胸を膨らませている。

 特に星座占いが当たることはないから、ちょっとした気分の問題なのだが、それでも一位を今日が人生初の星座占い一位になるかもしれないと思うと期待せずにはいられない。



 素直に言って、一位になって多少は縁起良く学校へ行きたいと思っている。



 だが、如月は自分が一位になると根拠のない確信を持って「和樹が負けたらジュース一本ね!」とか言ってくる。



 ーーならばお前が負けたら昼飯を奢ってもらおうか?



『残念……十二位のいて座の人。今日は好意を寄せている人が目の前で女の子と話しているかも。ラッキーアイテムはハートのストラップ!』



「……昼飯奢れ……負け犬が」

「ぐうううう!! ふ、ふんっ!! 星座占いなんて……気になんてしていないんだからっ!!」



 後付で設定を更にややこしくするな。

 お前の生まれた時から今日までのキャラ設定は、馬鹿で表情豊か程度で良いと言うのに。

 そこに謎のツンキャラを足しては、神様も困ったものだろう。



『今日のラッキー星座の一位はーー水瓶座のあなた。運命の人に巡り会えるかも!? ラッキーアイテムは赤色のヘアピンです』



 赤色のヘアピンと聞き、俺はリモコンから手を離す。

 信じている訳ではないが、しかし、たまには星座占いと嘘くさい物に乗ってみるのも悪くない。



「如月様、今日ゲームセンターで帰りに好きな物を三つ取りますので……なので……赤色のヘアピン、貸してくれませんかね?」



 早速俺は胡麻をすって、馬鹿な如月と非等価交換でヘアピンをゲットした。



 ♡



 赤色のヘアピンで、長い前髪を横に流して留めてみたものの、教室では誰一人違和感を抱く者はいない。

 それはそうだーー

 俺は所詮ーー背景だからだ。



 違和感が仕事を放棄したのではなく、違和感の仕事ぶりが無視されている。

 ある意味で、認識の違和感が仕事を完璧にこなし過大評価を受けている教室内において、朝から人の顔見るなり吹き出しそうになる馬鹿が横にいる。



 ーー何だこいつ、一回しめたほうがいいか?



 俺自身は似合っていると思うのだが……如月から見れば良いネタなのだろうと思いながら四時限目のチャイムでスマホを取り出す。



 と、そこに同じクラスの女子が寄ってくる。

 如月が転校初日に仲良くなった友達だ。

 苗字しか分からない。

 確か……月野瀬で間違いない。



「ーー沙苗、ご飯食べよー」

「良いよー」



 さっきまで笑いを堪えていた如月は一瞬で切り替え、笑みを浮かべて月野瀬(?)に返事する。



「えーと……沙苗がいつも喋ってる……名も無き子も食べよ一緒に」

「誰が名も無き子だ、誰が。家なき子じゃねーんだぞ? 同情するならマジで金をくれ」

「いや、それおもっきし家なき子」



 月野瀬(?)に突っ込まれる。



「……まあ、食べるけど」

「そうこなくちゃ! にしても、沙苗が喋っているところを見てなかったら、私はあんたの存在に気づかず卒業してた」

「それさーー卒業アルバムを見て、心霊写真! とか一年後に騒ぐやつだろ」

「次の日に騒いでるね!」

「……いっそ心霊でいたほうが俺の気楽じゃないか?」



 月野瀬(?)と、如月の席を囲んで昼飯を食べ始める。

 如月は、俺と月野瀬(?)が自分よりも噛み合った話を続けることに頬を膨らませる。



 頬を膨らませるくらいなら、最初から話を筋を読み取って噛み合うように話をしてくれ。

 いつも噛み合わず、林檎とも喧嘩をするわ俺に殴りかかってくるわで、正直心身共に極限状態にある。



「それで、名前なんて言うの?」

「茅野和樹ーーそっちは?」

「私は月野瀬入鹿つきのせいるか。今日からよろしく!」



 また一人、モブ史上最強の俺を認識する者が現れた。

 RPG方式なら、もうそろそろ裏切り者の登場だ。

 現実に裏切り者も癖者も居ないけど。



「ねえ、クリケロ? って、やってる?」

「俺か? やってるけど」

「私もやってーー」

「和樹い! 教えてよ、私全然分からないんだ始めたばっかで」

「……まあ、別に良いけど」



 ゲームは協力が必須。

 一人で強くなっても、ソロプレイがメインになってつまらない。

 だから周りを育て、周りに育てられ、仲間で強くなってマルチプレイをする。



 ゲームの醍醐味はやはり、仲良しプレイ。



 月野瀬にお願いされ、断る理由はない。

 如月なら即答する。



 ーー断ると。




 日頃の行いを悔い改めてから、俺の元へ来いと突き放すつもりだ。

 だが今回は、月野瀬だ。

 悪いやつではなさそうな上に、愛想が良い。



 未央ちゃんの次くらいに、仲良くできる気がするのでこの気に親睦を深めておくのも悪くない。



「で、何が分からないんだ?」

「全部だけど?」

「……」



 俺の口が横一文となる。

 如月は箸を落とし、月野瀬はニコニコスマイルで首を傾げる。



「と、とりあえず……動かきから教えるか」



 昼飯のため一度仕舞ったスマホを、再度取り出す。

 すると、何故か月野瀬は席を立ち俺の膝の上に座ってきた。



 座れる身長ーーなのだ、こいつは。



 高校生ながら、身長は150程度で少し痩せ型だ。

 すっぽりと収まるコンパクトサイズで、こっちが本物の妹だと錯覚をしてしまうほどに安定感がある。



 肩までの短い茶髪を揺らし、スマホを取り出して「教えて」と上目遣いで言われ、俺はぎこちない手の動きで月野瀬の両手に自分の両手を重ねた。



「で! どうしたら動くの?」

「ゲーム音痴か? ……まずは移動スティックに指を乗せて滑らせてみろ」



 多分如月の誘いか話を聞いて、何となくで始めたゲームだと思うのだがーーにしても、チュートリアルを飛ばしたように、全く移動すらままなっていない。



「……むう!」

「……? なんだよ」

「ずるい!」

「はあ? ああ、月野瀬をお前の膝に乗せたいのか? なら後にしろ」




 更に更に膨れる如月。

 俺は適当なことを言って、ゲームの基礎を教えに戻る。



 考えてみると、朝の星座占いーーあれ、合っているのかもしれない。

 運命の人ではないと思うが、新しく話せる女子が現れた。



 女子に偏っているのが些か疑問点だが、それでもモブ史上最強と自分で付けた悲しき称号が、外れようとしている現実に喜びを感じる。



 赤色のヘアピン……今日のラッキーアイテム。



 下手な神頼みより効果を発揮している。

 俺は毎朝星座占いを見ることにしようと決める。



「次は?」

「ああ。えーとなーー」

「もう! 私も入れてよ!」



「「……幼稚園は東に一キロだけど?」」



 等々沸点に足したのか、如月は勢い良く立ち上がる。

 鬼ごっこに入れてもらえない幼稚園児が如く、沸点に達して言うことはそれかと、俺と月野瀬は呆れて幼稚園の場所を距離と方角で教えてあげる。



 すると、如月は「行ってくる!!」と叫び、クラスメイトから廊下にいる他クラスの奴らまで、纏めて視線を集めながら、とてもミュージカルチックな地団駄を踏んで教室を出ていった。



「次はーーモンスターがいるから攻撃だ」



 ♡



 ある程度教え、そろそろ昼休みが終わると俺と月野瀬は昼食を再開する。

 あれから如月は帰ってきていない。



 帰ってきても、何処に行っていたかなど聞かないが、少々心配だ。

 無関係な人に迷惑をかけていないかどうかーー



「ーーただいま!」

「おかえり」

「買ってきた!!」

「……何を?」



 帰ってきた如月は、右手に小さな袋を持っている。

 そして、何やら走って買ってきたらしい。

 息切れが半端じゃない。



「ラッキーアイテム!」

「お前のラッキーアイテムって……なんだった?」

「星座占い? 朝のはハートのストラップだったけど……あー、忘れてた!」



 月野瀬は如月に「ごめんごめん!」と苦笑しながら謝る。

 意味は分からないが、何か二人の中であったらしい。



 ちなみに俺は今朝の星座占いで、如月のいて座の内容を何一つ覚えていない。

 だって、水瓶座が一位だった衝撃が大きくて……。



「で、どこまで買いに行ったんだ?」

「ーー泉森神社!」

 


 やはりこいつはーー生粋の馬鹿だったようだ。



 タクシーを使ったとは思うけど、ストラップ一つに誰が徒歩30分もかかる有名な神社まで行くんだ。

 頭がおかしいのか、考えることができないのか。



 ショッピングモールのビ○バンで買ってこいよ、そんなの。



「で、だから?」



「私を膝に座らせてっ!!」



「ーー断るっ!!!!」



 ゲーム以外にも、こいつには断ることばかりのようだ。

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