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10 林檎はさておき映画へ その2

 なんやかんやで一時間はあっという間に過ぎ、いざ映画ーー



 純粋な高校生達の恋愛映画が始まった。

 何でも、小説で爆発的ヒットを飛ばした物らしく、実写でなくアニメ版だとか。



 ちなみに、小説でもライトノベルし読むことのない俺は何も知らない。

 純文学は苦手なのだ。



「どんな話なんだ?」

「それは見てからの、お楽しみにしたらどうですか……?」

「確かに、それもそうだな」



 見てからのお楽しみーーか。

 俺はため息を吐いて、入る前に買ったポップコーンを摘む。



 純粋な恋愛なんて、見ていて楽しいものなのか。

 俺みたいならオタクに部類される人間は、ラブコメと言った何処か詰めの甘く、それでもってギャグセンスの溢れている、ヒロインが何だかみんな不思議ちゃん系ばかりに慣れている。



 純文学は、泣ける恋愛が多いと聞く。

 だから読む気にならず、敬遠してきた。

 見るのは良いが、果たして内容は面白いか、ただ泣けるだけかーー



 だからこそ、内容を見て楽しむべきなのだろう。

 未央ちゃんが一緒に見たいというのだから、それなりにラブコメ要素も入っていることを願いながら、宣伝が終わりやっと本編へ入った。




 ♡



 一時間位見て、何となくオチは掴めた。

 男子生徒Aが主人公、女子生徒Bがヒロイン。

 男子生徒Aに恋する女子生徒Bの親友女子生徒Cが猛烈アタックをするありきたりな展開は、見ていて面白みに欠ける。



 そこに突然現れる、上級生の男子生徒D。

 男子生徒Dは、女子生徒Cを好きで、片想いされているだけの男子生徒Aに強い敵対心を抱いている。



 まあ、つまりは男子生徒Aと女子生徒Bがくっつき、その後なんやかんやあって男子生徒Dと女子生徒Cがつっつく。

 うん、あるあるだな。



 電○文庫からでる『とら○ラ!』的展開は特殊だったし。

 あれはあれで面白くて、泣けたし。

 そうはならないらしい。



 あれは誰が全員が最終的に主人公に恋して、最後はメインヒロインとくっつくが、サブヒロインは全員大人びた考えで涙を呑んで祝福する。

 その後、サブ主人公とも言える眼鏡君と誰かがくっつくことはなかった。



 あれこそ、泣ける恋愛ーー泣けるラブコメ。

 他にも『青春○タ野○シリーズ』とか、あれも泣けた。

 だからこれはラブコメを交えた、ありきたりな恋愛に感動シーンを混ぜただけだ。



 純文学も落ちるところまで落ちたな。

 どうせなら、太宰治の『人間失格』くらいまで、内容と人間性自体が落ちるところまで落ちているほうが、面白みがある。



 と、突然女子生徒Cが意識を失って倒れた。

 文化祭のシーンで倒れるのはあるにはある。



 そしてシーンは病院へーー



『……残念ですが、悪性リンパ腫が大きく手を付けられません。手術をしても、動脈に絡みつき、どう切除しようにも、動脈を傷つけてしまうかと。抗生物質で経過を見るしか……ですが、やはり医師から見て抗生物質でどうにかなるほどの物ではありません。悪性リンパ腫がこれほど大きくなってから本性を見せるパターンは極稀です。残念ですが、もってあと一ヶ月が限界でしょう……』



 突然の医師が下す余命宣告。

 そんな馬鹿なーーと、思ったが、ラブコメの設定の方が馬鹿馬鹿しい物が多いから何とも言えない。



 ーーてか突っ込めない。



「死ぬんだな」

「……死に、ますね。この子は」

「だよな」



 暗い……本当に暗い。

 もうここで泣いている人とか居るし。



『な、なんとかしろよ! お前が何とかしねーと死ぬだろうがああああ!』



 ああ、突然キレて医師に八つ当たりするパターンか。



『やめてください〇〇先輩!!』

『離せっ!! お前は知らねーだろ、こいつがどれだけお前のこと好きだったかなんて!』



 あるあるの暴露パターン。

 だが、何故か心にグッとくる物がある。

 もし、如月が『私がステラよ』なんて、暴露してそれが本当だったらーー寒気がする。



 展開や、重みが全く違うのだがーー如月がそもそもステラさんな訳がないのだが、もしそんなことがあってみろ……俺は発狂して投身自殺をはかるだろう。



 暴露TPOが大事であり、お決まりではあるが、これは完璧なタイミングでの暴露と言える。

 なるほどーー

 見るものの心をグッと掴む要所を、所々に入れてきていて、見ていて飽きない。



『何でもお前が……気づかないんだよ』



 それは無理があるだろ……と、心の中で突っ込んでしまう。



「なるほどな」

「泣けますね……」

「あ、ああ……うん」



 全く涙腺が刺激すらされていないのだが、話をここは合わせておく。



 そこからは、暗い展開で話は進んでいく。

 女子生徒Bは女子生徒Cの病室へ毎日通い、男子生徒Dは学校を早退してまで付きっきりの看病。

 祖父一人に育てられてきた女子生徒Cは、寝たきりで動けない現在の祖父に病院へ来てもらうことはできず、男子生徒Dだけが心の拠り所になっていく。



 シーンの移動が多い中、やはり所々で心をグッと掴まれる。

 もう既に、隣では未央ちゃんが号泣している。



 俺は持ってきたティッシュで、さり気なく涙を拭いてやりながら、コップコーンをお供に次の展開を想像して見進める。



 そして二時間が過ぎた頃ーー



 女子生徒Cが亡くなってしまう。

 これもお決まりーーではない。

 何で死んだ、奇跡の回復とか、神のゴッドハンドによる手術で完全復活とか、そんなオチじゃないのか。



 裏をかかれ、度肝抜かれる展開に、更に未央ちゃんが涙腺を崩壊をさせとうとう耐えきれなくなったのか、俺の腕を抱きしめ顔を埋めてしまう。



 これは純粋で清らかな心の持ち主である子が見たら、泣いてもおかしくない。

 未央ちゃんの当たり前とも思える姿に、またまた唯一まともであると思うこととなった。



 そして映画は最終局面へ。

 先輩の卒業式に、女子生徒Bは女子生徒Cの遺影を持って参加していた。



 卒業式が終わり、友達からの誘いを断った男子生徒Dは二人と合流するとお墓へと来ている。

 男子生徒Dは、卒業したと墓に告げると、ポツリと雨が降り出す。



 まるで女子生徒Cが、先輩の卒業を泣いて祝うように。

 そして男子生徒Dはその場にしゃがみ込み、号泣する。



 やばいーー俺も涙出てきたぞこれ。



『先輩、帰りますか』

『お、俺はここにまだ居る。あいつと、少し話しをしたいんだ……』



 先輩はそう言うと、動くことはなかった。

 そしてその帰り道。

 雨が止み、二人は空を見上げて悲し気な表情を見せる。



『止んだね……』

『うん』

『……〇〇。私、今日は……帰りたくない』

『……そうか。うち、来るか?』

『うん……ありがとう。今一人になると私……多分、辛くて涙が止まらなくなる』



 分かるーー俺も涙が止まらなくなりそうだから、涙腺に十メートルくらいの壁立てたところだし。



 二人は男子生徒Aの家に帰り、そして結果的に女子生徒Bは男子生徒Aを抱きしめて泣いてしまう。

 それも数分だったのか、次のシーンでは鼻を啜る程度にまで落ち着いていた。



 そしてそこで、意味は理解できないが何故か二人はキスをする。

 これは原作でしか、二人の心境は語られていないだろうし、読めってことだな。

 一人で勝手に理解して、ポップコーンを一つ未央ちゃんの口に放り込む。



「……泣けるな、これ」

「……は、はぁぁい……」



「「……」」



 それだけ会話をして、俺達は黙り込んでしまう。

 キスーーで、プリクラを思い出してしまったのだ。



 見つめ合い、そして互いに急速な体温上昇を感じて恥ずかしくなる。



「……てああ! 映画終わったああ!!」



 どれだけの時間見つめ合っていたのか、もう分からない。

 気づいたらエンディングが流れてしまっていた。



 お、恐ろしい……。



 プリクラ一つで、こうも映画のラストを見逃すとは、寝ていて映画を見逃したのとは意味が違う。

 恥ずかしいだけで終わる、何とも言えない映画となった。



 ♡



 映画のラストは、結局男子生徒Aと女子生徒Bがくっつき、大学生になった男子生徒Dは心に決めた人がいるからと断り続けるのだとか。



 結果、一番格好良い奴で終わったのは男子生徒Dだった訳だ。

 何とも言えないが、良い話だったことは事実だから認めようーー



 あれは、ラブコメ風感動純愛劇だと。



「で、プリクラとってーーこれは何?」

「いやこれはーーな?」

「な、何も……何も何も、本当に何もないから林檎、如月さん!」

「「ーーんなわけあるかああああ!!」」



 映画は感動で泣いたが、帰宅後は言い訳のしようがなく困り果てて泣いてしまいそうだ。



「和希っ!! そこに正座しなさい!!」

「……してるけど」

「それが正座かああああ!!」



 如月の言う正座とは果たして?



「てか一つだけ言っておく。尾行するんじゃねえよ、お前ら」

「……な、何のことかしらあ〜?」



 如月は顔を逸してとぼけやがる。

 腹立つを通り越して、殴りたくなる。



「ーー林檎。お前のサングラス、似合ってなかったぞ」

「……ううっ! さ、サングラスくらい文句言わないでよ」

「おーい如月、認めたぞ? こいつ認めたぞー?」

「ば、馬鹿! 何してるのよ…………あっ。か、勘違いしないでよねっ!!」

「勘違いも糞もあるか。尾行していた事実が取れただけで十分だーーさあ、死ぬ覚悟はあるかテメェらああああ!!」



 と、まあーー



 映画の後の、家での俺の暴走でしたと。



 ちなみに、映画の前を振り返ってみると悲りメンタルに来る出来事があった。

 チケットを切って貰おうと、スタッフに渡したのだが、俺だけ無視され、後ろから列が押し寄せてきたので結果最後尾になってしまった。



 モブの中のモブの、悲しい回想。



 結果今日は、楽しめたのでーー良い息抜きとなった。

 それ即ち、また明日から地獄が待っているのでもある。

なんやかんやで、気づいたら600ポイントももう目の前に!?

面白いと思っていただけましたら、是非評価をしていただけると嬉しいです!





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