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大蛇  作者: ひろぽんすけmarkⅡ
18/19

長い1日


七代目が譲ってくれる住居は貧民街の辺りにあるらしい……クロの店から、それほど離れていないそうだ。


俺はレンと共に桜花組の屋敷から出た。


辺りは、すっかり日が暮れている。


ボンヤリと光る様々な色合いの街灯が、幻想的な夜の街を演出していた。


「質問なんだが……あの街灯は魔法の力で光っているのか?」


「魔法?……お前、火虫も知らないのか?」


レンが言うには、街灯の中には「火虫」と呼ばれる虫を入れているそうだ。

日中は活動はせず、日が暮れて薄暗くなると、体から淡い光を放って活動する特殊な虫らしい。

その特異な体質から外敵も多く、わずかな餌で何十年と生きられる事から、火虫にとっても街灯の中は安全な住居となっている、との事だ。


レンは呆れた顔をしていたが、俺は続けて「この世界」の種族について質問をした。


この世界には人間族・獣人族・甲殻族……そして、ファンタジー映画とかで出てくるエルフ族とドワーフ族が暮らしているそうだ。


桜花組の七代目は獣人族に該当するらしい……見た目はカエルそのものではあるが……


その獣人族は、この世界に広く分布しており、多種族との交流も盛んで、人間族についで個体数が多いらしい。


続いて甲殻族だが、獣人族ほど数は多くなく、非常に好戦的な性格で他種族との交流は好まない。


見た目はトカゲやカニのような姿をしている、との事だ。


なかには傭兵として世界各地の戦場を渡り歩いている者もいるとか……


そしてエルフ族とドワーフ族……彼等は非常に個体数が少なく、俺が森で出会った「ロス爺」を除けば、レンも見かけた事がないと言う。


彼等は長寿であり、積極的に自分達の子孫を残そうという気がないのだそうだ。


とはいえ、身体能力と魔力は他種族とは比較にならない程すぐれており「たった1人で、とある国の軍隊を壊滅した女性のエルフもいる」と言うから驚きだ。


「凄まじいな……1人で軍隊を倒すとは」


「言い伝えによると、その方は初代 桜花 宗次郎様の友人の1人である「天鳳翼てんほうよく 翔月しょうげつ様だ。大の喧嘩好きで初代様とは喧嘩仲間だったそうだ」


「喧嘩仲間か……だが、長寿のエルフ族であれば、もしかしたら今でも生きているんじゃないのか?」


「さあな……ご存命とは思うが、どうにも勝手気ままに行動される御方らしいからな。探すとしたら骨が折れるぞ」


天鳳翼 翔月か……もし生きていて出会えたら、桜花宗次郎の事や大蛇の力の事を詳しく聞けそうだな。


「おっと…着いたぞ。ここがお前……いや、アタシ達の住居だ」


目の前には2階建ての日本家屋があった。

中々に立派な建物だが……かなり年代物だ。


「……すきま風が入ってきそうな古い建物だな。いや、贅沢を言うつもりはないが」


「オイっ!あまり失礼な事を言うな!これは初代様が住んでおられた由緒正しき屋敷だぞ!」


初代が住んでいた屋敷か……築何年とか考えたくもないな。


いぶかしんで家の中に入ってみたが、予想外に小綺麗な事に驚いた。

おそらく、定期的に桜花組の者達が掃除や修繕を行っていたのだろう……すぐにでも住める状態だった。


だが、居間に敷いてあった布団を見るなり、レンは怒りを爆発させていた。


「あんのクソ馬鹿どもがぁーーっ!何考えてやがるっ!」


大きな布団に枕は2つ……そして枕元にはムードを盛り上げんばかりの小さな灯篭があった。


「何か……大きな勘違いをしているようだな」


枕元には煙草のような物も添えられていて、誰かが書いたメモ書きが残されていた。


ーー事が終わった後の一服は紳士、淑女のたしなみそうろうーー


「なにが、たしなみそうろうだコラァーーっ!!!」


メモ書きをビリビリに破いたレンは、桜花組に忘れ物を取りに行く、と言って出ていった。


あの調子なら朝まで帰ってくる気配は無さそうだ。


家の中には、風呂の準備は完了している事と朝食が台所に置いてある、とのメモ書きも残されていた。


俺は風呂に入り、用意してあった浴衣に着替えると、すぐさま布団に入った。


信じられない程の睡魔が襲ってくる……。


今日ほど濃厚な1日を過ごした事はない。


明日は城下町で情報を集めるとしよう……。


目を閉じると俺は意識を失った。


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