桜花の魂
桜花組に戻った俺は、七代目に事の顛末を語った。
終始、不機嫌な顔をして聞いていたレンだったが、七代目は時折、嬉しそうな表情を浮かべていた。
「……親父。木嶋がやった事は組にとって、あまりに危険な行為です。憲兵団に喧嘩を売るなど、桜花組を潰す口実を国の上層部に与えたようなものです……組として木嶋に処罰を与えるべきでは?」
レンは俺を睨み付けながら七代目に進言をした。
「……処罰?一体何の話だ?むしろ、良くやったと賛辞を送りたいぐらいだ。木嶋よ……そうでなくちゃあいけねぇ。初代様の後継ぎが弱者を見捨てて帰ってきたんじゃ、ガックリくるところだ」
やはり……クロの所から薬を取ってこさせるのは口実だったようだ。
俺に、この国の現状を見せ……そして、俺がどういった行動をとるのかを見定めるために。
「……これは俺を試す試験だった。そういう事でしょうか?」
「まぁ、そういう事だ。お前が大蛇の力を持っている事は、レンとの試合で見せてもらったが、初代の後継者としての相応しい魂を持っているかは、試合では分からねぇからな」
……魂?人間としての性根と言うやつか。
クロからは俺が「余計な事」をしたと罵られ、レンからは桜花組を危険に晒したなどと、踏んだり蹴ったりなのだが……。
黙って話を聞いていたレンは、語気を強めて七代目に問い詰めた。
「親父っ!憲兵団の件はどうするんですっ!?チンタラしていたら、すぐにでも奴らは……」
「レンっ!オメェは少し黙っていろ!木嶋が喧嘩ふっかけたのは、どのみち執行部隊の奴等に処分された愚図だ。俺達に火の粉はかからねぇ……くだらねぇ心配をするな!」
レンは七代目に叱咤されると、俺を睨みつけて座り込んだ。
どうやら、俺は組の厄介者として嫌われてしまったようだな。
彼女が組の若頭という立場である以上、仕方がない事ではあるが……。
「すまねぇな、木嶋。コイツは人一倍、組に対する気持ちが強いもんでよ」
「いえ……厄介事を持ち込んだのは俺です。以後、桜花組にご迷惑をかけないように立ち振舞いには気をつけます」
俺は七代目に深く御辞儀をした。
国である以上、法律や条例……さらに独特の地元ルール等はあるに違いない。人種なども俺の世界とは違い、多岐にわたる。
あまり軽率な行動をしてはいけない、と言うことだ。
「おいおい……勘違いするんじゃねぇよ。俺はこの国の法律に縛られたオマエなんか見たくねぇ。組に迷惑かけて上等……そういう木嶋 龍を見たいんだぜ?」
「……なっ!?親父っ!何を言って……」
驚いて七代目に詰め寄るレンだったが、当の七代目は笑いながら話を続けた。
「初代様もそうだったと聞いている。国が決めた法律なんぞ守りやしねぇ……自分の中で決めた法律を守っていたそうだ。だからこそ国の中で変革を起こす事が出来た。これは既存のルールに縛られちまってる俺達じゃ出来ねぇ話だ」
「で、ですが……それでは組の規律というものが……」
「固い事言ってんじゃねぇよ。そんなに木嶋の行動が気になるなら一緒に住めばいい。そうだ……それがいい」
………は?
…………レンと一緒に住めと?
呆然としていたレンが顔を真っ赤にしながら叫んだ。
「な、な……なんで木嶋とっ!そ、そんな事出来るわけがっ!な……何を考えているんですかっ!親父っ!」
俺も七代目が何を考えているか分からない。あまりに突拍子もない提案で返答出来ずにいた。
依頼を成功させた報酬として、桜花組から住居を譲ってもらう事にはなっていたが、その家にレンと一緒に住めと?
たしかに、国の事や「この世界」に精通しているレンがいれば、生活には困らなそうではあるが……桜花組として色々と大丈夫なのだろうか?
七代目は俺達の様子をみながら、笑顔を浮かべていた。




