わずかながらの邂逅
クロの店に戻った俺は、これまでの経緯を話した。
憲兵達から暴行を受けた人間達は、借りを返した俺の行為に喜びの表情を浮かべていたが、店の奥で椅子に座りながら煙草を吸っていたクロの表情は険しいものだった。
「フン……バカな野郎だ。執行部隊が国のゴミを排除するのをワザワザ止めやがって。執行部隊が処刑するのは、どうしようもない悪党だけだ。テメーはカッコつけたつもりだろうが、はっきり言って余計な事をしたんだよ」
「だろうな……そう言われるとは思っていた」
あの黒騎士は命乞いをした憲兵を追放処分にするとは言っていたが、その後に処分された憲兵が自棄になって犯罪行為に走る可能性はある。
やはり、俺の行為は間違っていたかもしれないな……
「とはいえだ……コイツらが受けた屈辱を晴らしてくれた事は評価してやる」
クロは錠剤が入った瓶を机の上に置いた。
「七代目の……野郎の症状は分かっている。こいつで少しは痛みが緩和するだろう……だが、勘違いするなよ。俺は桜花組を認めたわけじゃねぇからな。この薬はコイツらからの謝礼と思え」
クロの言う「ボルク」とは七代目の事のようだ。
以前、クロは桜花組とは親しい仲だったとレンから聞いたが……依頼された薬は七代目が使う薬なのか……つまり、七代目は病魔に冒されている?
俺は薬が入った瓶を受けとると、桜花組から渡された薬の代金を払おうとした。
「俺は桜花の汚れた金なんぞ受けとる気はねぇ……とっとと持って帰りやがれっ!」
クロは背中を向けて言い放った。
「……ありがとう」
俺は一言、礼を言ってクロの店を出た。
店の外にはレンが腕組みをしながら待っていた。
レンは俺の姿を確認すると大急ぎに駆け寄ってきた。
「木嶋っ!憲兵団と揉めたってのは本当なのかっ!?なんでそんな事になるんだっ!お前、自分が一体なにをやったのか分かって……」
レンの言葉を遮るように、俺は薬の入った瓶を手渡した。
「自分のやった事を正当化するわけじゃないが、俺の行為の謝礼として薬は貰えた。詳しい経緯は組に帰ってから話す」
レンが問いただすのも無理はない。桜花組は国の下部組織……つまり憲兵団には逆らえない身分。
客分の身とはいえ、桜花組が国の上層部に噛み付いたようなものだ……それなりの罰が課せられてもおかしくはない。
クロからすれば、そのように権力に逆らえない桜花組の「態度」に苛立っているのかもしれないが。
「分かった……七代目には、お前から説明しろ。アタシも同席させてもらう。これでも若頭を任されている身だ……アンタが何をやったのか、把握してないといけない立場なんでねっ!」
レンは苛立った顔をしながら桜花組への帰路につく……俺もその後についていった。
ーークロの店にてーー
「……クロさん。あの若い衆は何者なんですかね?」
「さてな……雰囲気と目つきで堅気の人間じゃねぇのは分かったが、桜花の腑抜けではなさそうだ。憲兵団に喧嘩を売る度胸と筋金入りの甘さは、伝え聞く「初代 桜花宗次郎」のようではあるがな」
「はぁ……桜花宗次郎ですか」
「だが……妙なのは、アイツの体内から感じとれた禍禍しい氣だ。あんなものは今まで見た事も感じた事もねぇ…………俺の師が言われていた「大蛇」と呼ばれる氣と類似しているが…………まさかな」




