2.親友の顔が見られない
「今日もいいか?」
いつものように、タオが店を訪れた。
作業をしていたレオは、返事をするために顔を上げる。
「いいよ。今日はどんな感じに……」
そこまで言って、言葉が止まった。
タオと目が合った瞬間、胸がぎゅっと締めつけられた。
どくん、と心臓が跳ねる。
その音が、自分の耳にまで響いている気がした。
頬が急に熱くなる。
「……レオ?」
タオが不思議そうにこちらを見ている。
いつもと同じ顔だ。いつもと同じ声だ。
それなのに、どうしてこんなに落ち着かないのだろう。
「……っ」
レオは思わず俯いた。
「大丈夫か?」
タオが近づき、肩に手を置く。
その瞬間、レオの肩がびくりと跳ねた。
自分でも驚くほど大きな反応だった。
タオも目を見開いている。
「ご、ごめん! 何でもない!」
レオは慌てて顔を上げ、近くにあった服を手に取った。
「ほら、服選ぼう! 今日はこれなんかどうだ?」
「……おい、それは俺には派手すぎるだろ」
「えっ、そうか? いや、でも意外と似合うかも!」
「レオ」
「ちょっと待って、別のも持ってくる!」
普段なら、タオに似合う服を選ぶのは得意なはずだった。
それなのに、今日はどうにも調子が出ない。
タオの顔を見るたびに心臓が跳ねるし、声をかけられるだけで頭が真っ白になる。
結局、いつもより時間をかけて服を選び終えた。
タオは最後まで不思議そうな顔をしていたが、深く追及することはなかった。
タオが帰ったあと。
レオは作業台に手をつき、ゆっくりと息を吐いた。
「……なんなんだよ、今の」
胸に手を当てる。
心臓はまだ、いつもより速く動いていた。
タオとは長い付き合いだ。今までだって、何度も顔を合わせてきた。肩に触れられることだって珍しくない。
それなのに、今日に限ってどうして。
レオは手首の腕輪を見つめた。
……まさか。
頭に浮かんだ考えを、慌てて打ち消す。
いやいや、そんなわけないだろ。
けれど、それ以外に思い当たる理由もなかった。
それからというもの、タオと会うたびに同じことが起きた。
何気ない会話をしているだけなのに、顔が熱くなる。
飲み物を手渡すとき、指先が触れただけで胸が騒ぐ。
タオと視線があうだけで、どうしていいかわからなくなってしまう。
そんなレオの変化に気づいているのか、タオも以前よりレオの顔を見つめることが増えた。
けれど、何も聞いてはこなかった。
レオとしても、どう説明すればいいのかわからないのだ。
自分でも理解できないのだから、仕方がない。




